表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/103

その51.久方ぶりの戦い・馬鹿VS馬鹿

「……っ!」

 男の息を飲む声。


「へ、ぇ!?」

 ようやく状況に気付いた百合果さん。


 その百合果さんの後ろの男をアタシは思いっきり睨んだ。


 ま、間に合った!!


 今の状況は、百合果さんを挟む様に伸ばした男の両手、その百合果さんと男の腕の間に、ギリギリのスペースでアタシの腕が入る空間があった。

  

 まるで百合果さんを囲むように男の腕とアタシの腕があった。

 それでも締めつけようとする男の腕をアタシは必死に力で抑える。

 アタシの腕が震える程の力だ、自分で言うのも変だけど大した力ね!

 ギリギリと百合果さんを挟んだまま均衡状態が続いた。


 この馬鹿力、体でハッキリと覚えているこの感じ。


「何……バカな事してんのよ……!」


 歯を食いしばりながら男を思いっきり睨む。

 百合果さんを挟んで大声を張り上げる。



「バッカ兄貴ィィィ!!」



 そこに居たのはまがいもなくアタシの兄貴だった。

 っというかアタシ以上の力を持っているのは多分この男ぐらいだ。


「え、ええ!?」

 アタシの言葉に驚いた声を挙げたのは百合果さん。

 この状況に驚いたのか、もっと他の別の事なのかは解らないけれど。

 声を挙げても百合果さんは振り向こうとはしない。

 俯いてワナワナと震えている。

 可哀そうに……こんな大男に襲われたらそりゃ怖いですよね。


「……クソ、ヴァカ! サクめぇぇぇ……」


 目の前に居る百合果さんが何かを小さく零した。

 声が小さすぎて聞こえないけれど、きっと怖がっているんだろう……と勝手に解釈。


 瞬間的に思いっきり力を加え、兄貴の腕を跳ね上げる。

 その間に出来た空間を逃さない。

 一気に百合果さんの腕を引っ張り、その場から脱出した。


 守るように後ろに百合果さんを引っ張り込んだ。 


 ダランと下ろした太い腕に顔を伏せている馬鹿兄貴。

 いつもと何か雰囲気が違う。

 


 そこに立ちずさむ兄貴を思いっきり睨みつける。

「何のつもりよ馬鹿兄貴!」


 アタシの言葉に呼応するかのように兄貴は顔を挙げた。

 鋭い目つきに一瞬気圧される。

「縁……邪魔すンな」

 脅すように低い声がアタシに向けられる。


「悪いけどその頼みは聞けないわよ!」

 脅しに脅しを返す様に思いっきり睨みつける。


「ッチ、黙って渡す気がネーんなら力づくで頂くまでだ」

 吐き捨てるかのような舌打ちに、兄貴らしからぬ言い方に少し違和感を覚えるも、慌ててアタシは構えた。

 それ程の迫力を兄貴から感じた。

 いつもの兄貴なら数秒あったら潰せる、しかし、今の兄貴はいつもと違う……。

 

 一体何が……イヤ。何があろうと百合果さんはアタシが守る。


「やるならサッサと来なさいよ馬鹿兄貴! 誰に向かって言った発言か後悔させてあげるわよ!!」

 そう言って人差し指でクイクイっと挑発して見せる。

 

「後悔すンのはテメーだオラ! 愛の力を見せてやる!!」

 何かとても臭いセリフを吐いた兄貴に若干寒気を覚えながらも身構える。

 戦う前に後ろの百合果さんをチラッと視線を向けた。 大丈夫だろうか、兄貴みたいな男に迫られて怖がっていないだろう……。


 ……。


 ……何やら凄い顔をしていた。

 ドン引きなんて言うものではない。

 引き攣った表情に、目が死んだように輝きを失っている。

 一体何に関してそこまで追い込まれたのかは解らないけれど……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ