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その10.恐怖の恐怖のダブルパンチ

「あ、ああ、亜里沙ちゃん? 僕に何のよう?」

 僕は戸惑いつつも要件を聞こうとした。

 ッパと見だが。

 とても可愛いらしい少女だ。 下手したら志保ちゃんと良い勝負かもしれない。



 ……知らない子だ。


 この学校内じゃ見た事無いし、まだ幼さの残る表情から一年生と認識。


 亜里沙ちゃんは僕の言葉の返答にも応えずニコニコと笑っている。

 僕はそれをつい訝しく見てしまっていた。

 普通の男ならこんな可愛い子に話しかけられれば有頂天になるだろうけど、今の僕にそんな余裕な考えは浮かばない。


 何故なら。


 この子からも変人の匂いがするからだ!

 僕は自分で思った事に、勝手にウンウンと頷く。

 今日一日でこんだけ妙な人間に絡まれるんだ、この子も変人だろう!



 そんな風に勝手に考えていると、少女は少しムッとした表情を作った。

「えー、変人とか酷く無いですかー?」


 何を言う、僕に話しかける時点で変人だ。

 そう、僕のような冴えない人間に態々話しかけたいなんて思う人間はそうそういない筈だ。

 つまり、この子は変人だ! 断定!


「ヒッドーイ!」

 そう言ってケラケラと少女は笑う。




 ………………あれ。




 ……ん? 待て待て待て待て。

 僕は今喋ったか? ていうか最初の『この子』と言ったのも口には出していない。


 き、気のせいだろうか?


「わー直ぐに気づくなんてスッゴーイ!」

 そう言って微笑む少女。

 僕の表情はみるみる強張る。

 自分のカンが大当たりでこの子が変人なのは確定だけど。

 


 この子……何モンだ?


 もし、そうなのでアレば、僕のカンが再び正しければ。


 変人は変人でも。



 タチが悪すぎる。



「……で、僕になんのよう」

 先程までのよそ様用の言い方は止めた。

 冷たく突き放した言い方、僕の中でこの少女は『変な子』から『危険な子』へ変わった。

 冷静に分析する様に、僕は少女を細く睨む。

 僕のそんな様子を見て、何が楽しいのか少女はケラケラと笑っていた。

 その可愛らしい笑みが、今度は不気味に思える。


「アリサはーえっとー?」

 業と伸ばし様な言い方。

 自分の事をアリサと呼ぶ様子は、妙にこの子には合っていた。

 まるで僕の反応を見て楽しんでいる様に人差し指を自分の唇に当てて考える素振りを見せる。


 多分、仕草だけで何にも考えていないのだろう。


「悪いけど、急いでんだけど」

 出来るだけ冷たく言った。

 そんな僕を見ても少女は不満そうな様子は見せない。

 僕は余裕を見せるように。

 フフン、と馬鹿にした様に笑ってみせる。

 ついでに心の中で毒を吐く。



『サッサと用件言えよ一年のガキ』



 亜里沙ちゃんの片眉が再び上がった。

 少女の顔から笑みが消えた。

 謎の少女は小さな声で、僕に聞こえるか聞こえないかでボソッと零した。



「アリサはガキじゃ無いもん」



 ……決まりだ。



 信じ難い……が。

 車よりも速い速度で走れる女の子を知っている僕としては今更信じる信じないも無い。

 怪力無双の女の子に何でも知ってる性悪女。

 僕の知ってる女の子じゃタチの悪い二人だけど……この子の方が多分タチが悪そうだ。

 僕の顔は見る見る強張り、頬が引きつる。


 ハ……ハハ……

 僕の周りはこんなのばっかか……。



『サイコメトラー』



 その言葉が僕の脳裏に浮かんだ。

 少女はニッコリとほほ笑む。


 もう心が読めるとかそういうのは良いとして、サッサと用件を言え。

 もう帰りたい……ほんっと。


「ねー先輩?」

 謎のエスパー(?)少女が口を開く。

 僕の心境を文字通り読んでくれたのか、多分用件を言ってくれるんだろう。


「なに」

 半ば諦めて僕は彼女の言葉に耳を傾ける。




「アリサはー」


 業とらしく一回溜めて、亜里沙ちゃんは男が見たらニヤけそうになる程の可愛らしい笑みを、しかし裏が在りそうな悪戯っぽさも含めて、笑顔を僕に向けた。





「へーじ先輩の事が好きなんですけどー♪」




 ……ん?


 …………ん!?


 僕の中で、血液や脳や心臓までも一瞬、固まった様な錯覚を覚えた。

 

「アハハー! 先輩の心の中グチャグチャー♪」

 僕の目まぐるしく回転する心の中を覗いている少女は屈託無く笑っていた。

 心の中は忙しいけど、体は完全に石の様に停止状態の僕。

 エスパー少女は人目を憚らず、突然僕の首に両手を回す。

 少女の綺麗な顔がグッと近くなった。

 小さくチロッと舌を出す仕草は僕を挑発している様で、何というか……エロい。

 未だ硬直状態の僕としては動けないわけなのだが……。

 エスパー少女は僕の耳元で、秘密話しをするように小さな声を零した。




「……でもー、こんな状況でー、アリサじゃ無くて別の女の事考えてるって最低ですよー?」


 な、なななななななな!?


 心の中を読まれるというのは中々厄介なわけで。

 僕は、アリサというこの女の子の他に、咄嗟に別の子の事を頭に浮かべていたのだ。


 そして。


 丁度素晴らしいタイミングで。


 脳裏に浮かんだその子が、廊下の奥の奥から。


 ッパと見で殺気が見える程のオーラを出しながら、すざまじい目力で僕をメチャクチャ睨んでいた。

 僕は自分自身でも顔が真っ青になったのが解ってしまう程に血の気が引いたのを感じた。


 その子の隣では。


 また別の意味でドス黒いオーラを放ちながら睨んでいるショートカットの別の少女も見えた。

 

 そして。

 そんな最悪な二人の少女の後ろで、頭を抱えている志保ちゃんが見えた。

 この二人がなんでこんなに怒り狂っているのかは知らないが。

 そして知りたくもないが。

  

 正に恐怖のダブルパンチに睨まれている僕としては泣きたくもなるわけで。

 その怒りや殺気をビシバシと僕に向けている事から、当然矛先も僕なわけだ。

 泣きたいを通り越して死にたい……。


 ……志保ちゃん、頭抱えてないで助けて。


 僕はこの中で唯一マトモな志保ちゃんに、涙目の視線で必死に助けを求めた。


 しかし。


 志保ちゃんは僕に同情の視線を向け、フルフルと首を横に振った。


 その後、志保ちゃんはソッと目を瞑ると、縦と横に手を動かし小さなジェスチャーを見せる。


 その意味合いは。


 アーメン。


 神様なんて糞食らえだドチキショウ……。

前回、亜里沙の名前が香織になっていた事を深くお詫び致します……

実は亜里沙の最初の名前は香織でした。

しかし、会長さんの名前が薫で、似た名前がいると被るなー、と急遽変更した次第です。

全て直したつもりでしたが見落としがあったようでした。

本当に申し訳ありませんでした!


感想で教えてくださった方、ありがとうございましたm(- -)m


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