その8.新たな変態、有島(ありしま)安須樹(あずき)
ホームルームが終わった。
薫君は僕との言い合いの後、すぐに教室を出て行った。
ムム……ちょっと言い過ぎたかな?
これぐらいで罪悪感が出るくらいなんだから僕も甘くなったものだ。
「よー、へーじ言うじぇねーかよー」
前の席の奴が僕に振り向いてニッと笑った。
え、誰?
「おま……クラス違うくても2年も学年一緒なんだからせめて顔は覚えろよ」
訝しそうにしている僕を見て、前の席の男は少しショックを受けているらしい。
知らない物は知らないんだけど。
「アッハ! ソイツは有島安須樹って言ってねー? 中身変態の残念君だよー」
ミホが簡単に説明してくれた。
なんか妙に新しい人間が多いな……気のせいだろうか?
新しいクラスになったのだからソレが普通なのかもしれない。
「俺そんな風に言われてんの!?」
アズキは、何やらショックを受けた様子でズーンッと暗い影が掛かっている。
その様子を見て僕は少し安心する。
僕が出会う人間は大概変人なのだが、彼はマトモそうだ。
まぁ、男なんて基本中身変態なんだから大丈夫だろう、うん。
「ま、女の子にそこまで言われたら、ドキドキしてくるけどな……ゥヘ」
ちょ……もうちょっと期待させてよ。
アズキの残念な発言に僕は一気に落胆する。
「ね? 変態でしょ?」
そう言ってミホがアズキを指差しながら僕に笑いかける。
……確かに変態だ。 しかも自重という大切な物を無くした残念過ぎるタイプの変態だ。
頼むから僕に前言撤回させないでくれ、そして変態である事を誇りそうにしないでくれ……
「変態と言っても社会的にセーフな変態だ! ノータッチ! 見るのはタダ!」
「それ以前に人としてアウトだろ……」
僕の呆れた声に沢渡はムッとした目を向ける。
「ウルセー! 男に罵られても気持ち良くねーんだよ!」
頼むから普通の人を用意してくれ。
話しが進まないので勝手に話を元に戻す。
「で、何? あの暑苦しい会長さんにボロクソ言ったのは失敗だった? 同じクラスなんだから見た目だけでも仲良くしろって事?」
「いや、アイツ頭スゲー良いから授業免除されてんだよ、殆ど教室にはいねーからソコは安心しろよ」
「フーン、あんだけ言っといて授業には出ないのか」
そこは秩序とか良いのだろうか。
「アッハッハ! へーじだって本当は授業でなくて良いくせにー」
……何故知っている。
「っえ゛! お前ってそんな頭良いの!?」
アズキが勝手に驚いている。
え、僕そんな馬鹿に見らてたの!? そっちにビックリだ!
僕はテストは、普段は本気を出さない。
目立ちたくないから、という単純な理由だからだ。
「アッハッハ! 知ってる人は知ってるよん? ちなみにあの会長さんも多分気づいてるね~、自分よりもへーじの方が頭が良いってね?」
何で知っているのかは知らないけれど。
なるほど、あの会長のイメージからして相当の負けず嫌いと見た。
僕の事を毛嫌いしている意味が解ったよ。
「ま、気をつけろよへーじ、俺は前にアイツと同じクラスだったんだけどよ、嫌いな奴はことごとく学校辞めさせられてたぜ?」
そりゃ怖い。
何をしたのかは知らないが、注意は必要そうだ。
だが、人の友達を馬鹿にするような奴に媚びるつもりは無い。
「まァ……向かってくるなら正面から叩くまでだ」
「ふーん、望む所ってトコだねん?」
僕の言葉にアズキとミホはニヤッと笑い合う。
「やるときゃ手伝うゼ アイツには俺も煮え湯を飲まされてるんでな!」
「アッハッハ! 私も私も!!」
いや、性悪女と変態男は仕方が無いでしょ。
変態と性悪なら、高校に入ってからあの会長さんとは何度か衝突してそうだし……。
ニヤニヤと笑っている二人を見て、僕はある事に気づく。
何か……利用された気がする……。
今、クラスメートと談笑する僕は、まだ究極の不幸が始まるなんて事には気づいていない。
風紀委員の縁。
不良の「悠真」
生徒会長「薫君」
そして全く関係の無い一般人の僕。
この新たな物語に、この3人は深く関わっていく事になる。
正義と秩序と暴君の三竦みに。
僕が振り回されていくのだ。
こっからがスタートみたいなモンですww
まだ新キャラと重要キャラは出ます。
新キャラのアズキは……まァサクと被らない様に頑張りたいですww




