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39・そう言えば今までなかったのが不思議なくらいだ

 蒸気船は順調に開発が進んでいる。スクリューの開発が難しいらしいが、2枚羽でダメなら3枚でバランスとれば?と言ったら、苦笑された。


「資村さま、バランスを取るのは2枚でも3枚でも変わりありません。3枚にすればより抵抗も大きくなりますので、機関出力の強化も同時に必要となり、工作精度もさらに上げる必要が出てきます」


 と言われた。そうだったのか・・・・・・



 最近は俺の知識はほぼ使えなくなっている。雷汞を使った雷管の開発が出来、ボルトアクション銃を作り、元込め砲や信管の開発にも成功した。

 蒸気船も出来たし蒸気機関車の開発も行われている。チートな連中が周りにいたから本当に何でも出来たわけだ。が、電気はそうも行かないらしいが、まあ、そもそも、俺が電気系をさして知らないのが大きい。磁石自体、自然に強力なものがある訳ではなく、どうにかして作るらしいが、知らん。磁石鉱とかいうのがどっかで産出するのかと思ってたが、そうではないことにショックを覚えた。その辺は、東本土に任せよう。



 さて、玄も攻めてこないし、どうやらキタンと玄も停戦したらしい。ようやく世の中は平和になった。



「全く平和にはなっとらんぞ?玄がキタンと停戦したのは戦力を再編するためじゃ。屋島攻めで船を失い、森を避けて沿岸部から攻撃しようとした当初の作戦が頓挫したじゃろ。そして、まともに数を当てたはずの侵攻では父の戦術にまんまと嵌り、各地で各個撃破。玄が得意の騎馬戦術も森の中では罠へ誘導されるだけの愚策でしかないからの」


 そう、ウルプの父、ヤッテーンマキッ将軍のモッティ戦法に玄の騎馬隊は完全に翻弄されたらしい。数で押して効果のある騎馬突撃を細い森の道で行ってもまるで意味はなく。細く伸び切った隊列を自由の利かない側面からなぶり殺しにされ、広場に出たと思ったら退路を断たれて袋叩き。高速移動が仇となって補給が追い付かずに餓死という事も起きたそうだから悲惨だ。


「そこで、一旦退く事にしただけじゃ。が、あくまで一旦。どうせ周辺から兵をかき集めて数にものを言わせてやって来るのは間違いない。そこでじゃが、銃だけでなく、大砲も父に渡すことは出来んか?」


 というのだ。


「大砲と言っても、あまり大きなものでは森の中では使えない。小型のモノなら良いが、棒火矢ではダメなのか?」


 今現在、大砲と言うと大きなものが主体で、要塞や艦船への搭載を主としている。いくらか元込め砲を車輪付きにして砲兵も編成してはいるが、大掛かりなので、森で運用するのは難しいと思う。


 それに対して棒火矢は今では迫撃砲として発展しており、射程数百メートルの擲弾筒モドキと数キロになる迫撃砲が存在する。


「それでは馬は狙えんじゃろ。鉄砲で一人を狙うんじゃなく、指揮官の陣それそのものを狙う。それにの、場合によっては川を下ってくることも考えられるんじゃが、舟を棒火矢で狙うんは無理と思わんか?」


 なるほど、ごもっとも。ならば、あまり大きな砲ではなく可搬性に優れた小型砲・・・・・・


「あるな、蒸気船に備えられた砲なら使えるかもしれん」


 そう、あれだ、蒸気船に備え付けられていた40ミリクラスの小型砲があった。アレならば陸上で使えるかもしれん。


 そこで、弦能に頼んでアレの一門を試射場へと運んでもらった。


「資村さま、これは蒸気船の備砲として考案されたもので、口径は40ミリの軽砲でございます。台座に備え付け、わずか二人で操作可能なため蒸気船への装備としては最適にございます」


 等々と説明をしてもらった。


「ならば、陸上でも使えて、持ち運び式にも出来よう?」


 そう、俺が問うと否定された。


「いえ、それは難しいかと。砲自体は軽量ですが、反動を考えるとかなりしっかりした台座を備えなければならず、移動となれば馬を何頭も用意する必要があろうと思われます」


 というのだ。あれ?


 実際、実物は砲身長が1メートル程度、重量は80キロ程度なのだが、砲を固定する台座は数百キロに上るものだそうだ。


「これ、駐退器はないのか?」


 という俺の問いに対し、弦能は頭にはてなマークを浮かべた。


「それはどのようなモノでしょうか?」


 というので、砲の周囲にバネや液体や気体式のシリンダーを設けて砲の反動を吸収する装置だと言ったら驚いていた。


「その様なものがあれば船への設置もより簡便になりますし、陸上でも簡単に扱えるやもしれません。いや、より大きな砲に適用すれば・・・・・・」


 と、何やら言っていた。


 そういえば、これまで駐退器の話をしたことなかったっけ?


 まあ、前世において駐退器が使われ出したのは1840年代と言われ、本格的な採用は1897年にフランスで開発されたM1897野砲からだったか。

 日露戦争の映像などで大砲が発砲と共に坂を駆け上がるモノを幾度も見たが、当時の野砲とはああいうもので、照準を発砲ごとに行う必要があったという。それを改善し、連続射撃を可能にしたのがM1897野砲だったわけだ。


 そうか、この世界にはまだなかったのか・・・・・・



 そして、意外にも早く完成した。と言うか、砲からすべてを新たに作り直されたといった方が良い。


 「翔と図って開発いたしました。口径は同じ40ミリですが、駐退器の性能を生かすため弱装薬とし、砲弾速度も低下しておりますが、重量は50キロ程度に抑えてあります。これでしたら数人で持ち運びも可能です」


 そう言って見せられたのは、四方に足を延ばした十一年式歩兵砲の様な代物だったが、砲本体の下にはバネとシリンダー、まるで車やバイクのショックアブソーバーみたいなものが取り付けられていた。


 実際に試射が行われると、なるほど、確かに砲が後退して反動を吸収している。


「これで射程は約1キロほどございます。蒸気船の備砲の半分になっては居りますが、陸上で使う場合は問題はないかと」


 と、弦能がいう。確かに、使えると思う。そして、銃による狙撃と変わらないことが出来るという事で、狙撃砲と命名されることとなった。後は、いかにしてキタンへ売り込むのかという事になるだろうか・・・・・・


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