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15・フラグが立ったので対策を考えたが厳しいかもしれない

 使節一行が退出したのち、武将に残ってもらい、通貫と弦能を呼んでもらった。


「・・・さて、以上のようなことになったわけだが、玄は何時頃攻めてくると思う?」


 俺はまず、武将に今後の見通しについて聞いてみた。


「そうですね。春には間違いなく知られている事と思います。キタンにとっては自分達への攻勢が緩むことも念頭に、今回の話を提案してきているでしょうから。そうなると・・・」


 何とも頭が痛くなる話だった。


 まず、玄の皇帝の耳に入るのが遅くとも初夏、どうせすぐさま諸へと屋島侵攻軍の編成命令が下るだろうから、諸で軍船を建造する期間が概ね半年程度、軍を整えて屋島へとやってくるのが、早ければ年末辺りだろうという。1年以内に戦争か。


「それで、準備はできるのか?」


 ここが重要だ。これまで外敵への備えなんてそんな気を払っているとも思えないが・・・


「はい、準備は出来ていないというのが正直なところです。今現在、資村さま考案の新銃弾への切り替えが終わったばかりで、部隊は既存の編成です。元込め式銃をこれから導入しようという段階ですので、冬までにどのくらい生産可能か、そこが重要になってまいります」


 と、武将は通貫へと話を投げた。

 

 俺も通貫を見る。


「新式銃は年末にようやく完成したばかりです。生産についてもようやく始まったばかりで、夏に生産体制が確立できるかどうかといった段階です」


 それは何とも悲観すべき状況だった。


 ここで何をやるべきか。非常に迷うのだが、あれもこれもとできるとは思えない。思い付きで戦争やるようなどっかの無責任国家みたいなことはしたくないしな。


 どこの国って、日本だよ。1944年にようやく戦時体制が整ったとか、さすがにバカだろ。


 しかもだ。生産体制は出来たが、徴兵で工員が居ないから女子挺身隊を放り込んで効率下げるとかいう無計画なやり方してんだぜ?

 欧米じゃあ、通信や兵站部門にだって女性を配置して人員確保してたのに、儒教に毒されてそれを引きずってるもんだから、娼館か民間系の業務にしか女性が居なかった。当然、戦前に女性が働いてる工場なんてのは昔から女性がやってた軽工業系だよ。重工業にはいない訳だ。

 男を兵隊として戦場に送るならば、工場で女性を受け入れて、戦前から生産基盤を整えてればいいのに、そんな考えには至らない。なんとも「日本らしい」やり方をやっていた。


 おっと、そんな愚痴を言ってる場合ではない。


「で、弦能、蒸気機関の方はどうなんだ?」


 まだ蒸気機関車までは完成していないし、鉄道なんて未だ夢の話だ。どうにか船に載せることが出来れば儲けものだろうが、冬までに蒸気船艦隊が出来るとは思えない。


「はい、現在、排水用だけでなく工業動力用の量産が開始された段階で、馬に代わる動力車や船に載せる機機械の研究を行っている段階です」


 残念だが、船に載る段階にはないらしい。


「ならば、動力研究を行っている鍛冶師を銃の製造にあたらせることは可能か?」


 弦能は何やら得心している様だった。


「可能です。いえ、それどころか、銃の製造を何倍にも加速させる方法を提案させていただきます」


 そう言って、鍛冶師一人が一丁を一から作っている今の体制を変えて分業制にするという。


 何の事はない。今既に、蒸気機関という構成部品が多く、一人が一貫して作り出すことが難しいモノを担っているから自然と出てくる発想だった。

 蒸気機関は一定寸法で部品を作り、個々の鍛冶師がパーツ毎に作り出した部品を最後に組み立てていくことで完成させている。


「しかし、火可殿、部品ごとに違う鍛冶師が作り出していては、組み立てにいらぬ手間がかかりはしないか?」


 通貫がもっともな疑問を口にする。


 それはそうだ。部品寸法が大ざっおぱであれば、その部品を組み立てる際に修正していかなければならない。現代のプラモの様に、そこにあるパーツを組み立ててしまえば完成する訳ではない。部品ごとの寸法や形にズレがあるので、それを削って修正しながら組み立てていく、非常に手間な作業が待っているので、それならば、一人の職人による一貫生産であっても、結局時間に大きな差が無い。


「これまではそうだったでしょう。しかし、久邊殿、蒸気機関の製造にあたって、容認できる寸法のズレを決め、各部品をその寸法内に収まるように作ることで、大幅な修正作業無しで組み立てることを可能にしております。銃にもその寸法を設定し、その範囲に収まるように部品を製造することで、時間を無駄にすることなくより多く生産することは可能になりましょう」


 どこまで量産性が上がるか分からないが、すぐさま通貫に対し、弦能と意見をすり合わせて実行するように指示を出した。


「通貫、この際だ、性能自体はこれまでの先込め式と変わらぬ程度で良い。下手に飛距離が伸びても、結局大勢の中で少数だけその様なものがあっても戦いには大きく寄与出来ないだろう?一丁でも多く元込め式を備えた兵を増やせるように頼む」


 早ければ冬にはやって来るという侵攻軍への備えを急ぐ必要がある。


 ただ、武将による説明で嬉しい誤算があることも分かった。


 現在兵装転換中という事で、「備えが無い」状態だが、屋島の軍備という点で見ると、玄が諸へ侵攻してきた時点で長崎の鼻には砦が築かれ、一定の防衛力は整っているんだという。



 それから二週間で通貫と弦能の話し合いはまとまったという。


「資村さま、新型銃を多少、再設計することになりますが、量産の目途が立ちそうです。冬までに5千丁程度は兵へと納入可能な見込みです」


 武将によると、これまでの鉄砲隊はそのまま鉄砲隊として扱い、新型銃は槍隊の改編に回すらしい。確かにその方が無駄が無いと思う。



 フラグがたってしまったので全力でやるしかない。


 ただ、こういう時って色々と新しい事が出てくるんだよな。ほら、平時なら10年くらいかかることが戦時だと僅かな期間で実現されてしまうみたいな。


「資村さま、施条を簡単に施せる機械を考案したのですが」


 忙しく新しい工作機械の開発を行っていた翔が突然、そんな報告を持ってきた。


 しかし、今更ライフル銃へと設計変更する訳にもいかんだろう。今のところ、熟練工によって銃身の銃口部分に半回転程度のライフリングを切ることを前提に生産体制が立ち上がろうとしている。


「翔、考案した事は褒めるが、すぐに作るのは待ってもらえないか」


 生産体制が混乱するのは困るので、翔には自重してもらうことになりそうだ。


「いえ、まずは現在の銃身加工に適した機械として設計しました。当然、いつでも全面施条が可能になりますが、現在の情勢をみて、その様に判断しております」


 そう言うので、試作の許可を出した。


 それから半月もする頃には、施条の効率が良くなることで納入可能な銃が数百丁は増えるかもしれないという報告が舞い込んできた。


 これで何とか間に合えばよいのだが。


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