命をかけて指名を果たすJK。
「うっそ、でしょ……!?」
私の足は膝から下が無くなっていて、太ももが青龍の顎先をスカっと通り抜ける。
幸いな事にギョロリとした眼球に私の膝から噴き出した血が飛び込んだらしく一瞬怯み、力が緩んだので飛びのく形で顎から逃れる。
でも、でもでもでも、これは失策だった。
だって私の片足は無くなっていて、この状態から素早く動く事はもう出来そうにない。
それどころか攻撃をかわせるかどうか……。
切断された手首と膝が熱い。
焼けるように、というより今まさに焼かれた鉄板に押し付けてるみたいな痛みが広がる。
よく分からない蒸気までもわもわ出てる気がして気分が悪い。
血液を流し過ぎたかもしれない。
力を入れると血の噴き出しは少し緩和された。
もう、逃げられない。
お願いアーニャ。後は頼んだよ。
だから、最後の一撃だけでも……!
少しでもダメージを負わせて時間を稼いで見せる……!
その時。
「待たせたなお嬢! 下がれ!」
アーニャが何かしようとしてる。私、頑張ったよ。褒めてくれるかな?
でももう、下がる余裕も無いんだよ。
「アーニャ、私ごとやって。もう動けないから、ごめん」
私は出来る限りの笑顔でアーニャに現状を伝えた。
「……分かった。後は任せろ」
良かった。ちゃんと……伝わった。
私はこの勝負に勝つ為ならアーニャに殺される事くらいどうって事ない。
「ネクロ! いけるな?」
『あったりきよーっ!! 本日も絶交超DAZEEEE!!』
青龍がアーニャの方をぎょろりと睨んだので私は片足だけでぴょんぴょん跳ねながら青龍を煽る。
「アーニャと戦いたいなら私を殺してからにしなよ」
青龍はぷいっと私を無視してアーニャを睨み続けた。
「おい、こっちだって言ってんだろばーか! 青龍のチキン野郎! 私から逃げるな!」
おっ、成功したみたいで、ゆっくりと青龍がこっちへ向き直る。
私は片足だけで地面を蹴り、その顎を押し付けるように両手で挟み込んだ。
奴は振り落とそうと私の身体を振り回した。
アーニャ、今だよ!!
『行くぜ行くぜ行くぜーっ! 第三百二十四ページの二行目から四行目、そして五百八十一ページの二十三行目から五百八十二ページ六行目までに記された魔法を……』
「全て発動!」
これ以上は無理だ。ついに私は力負けして上空へ飛ばされ、落下し……お腹の部分をにバクっと噛みつかれてしまった。
ぐりぐりと牙が腹に食い込んで内臓がぶちぶち貫かれて行く感覚。
身体に力が入らない。痛いって感覚ももう無くなってきた。
そして、私ごと青龍の身体を巨大なガラス玉のような物が包み込み、その中にアーニャの武器、ナイフが無数に浮遊して、それら一つ一つから、どんな表現も足りない程の七色の光。
次の瞬間私の意識は消し飛んだ。
最後にアーニャの声だけがうっすら聞こえた気がする。
優しく呟くような、囁くような声。
「属性複合合成魔法……ドロメア」
次回青龍戦決着!!






