青黒いおっさんと死闘を繰り広げるJK。
「お嬢、こんな事頼みたくなかったんだが……」
なんとなくアーニャの口調で分かる。
苦虫と激甘虫と激すっぱ虫を同時に噛み潰したみたいな顔してるんだもん。
「アーニャ、大丈夫だから私に任せて」
そう言って出来る限りの満面の笑みを返す。
「……わかった。あいつを七分……いや、五分足止めしてくれ」
「おっけ」
それ以上は聞かない。
アーニャが足止めしてくれって言うなら足止めするだけだし、私が足止めだけでいいって事はアーニャがどうにかしてくれるって事だ。
それなら、五分さえ持ちこたえる事さえできれば私の身体がどうなったっていい。
私のスロウ一回の継続発動時間はそんなに長くない。
別に長くする事は出来る。ただ、ゆっくりの世界の中で一分以上経つといろいろ身体にガタがくるんだよね。
だからあまりやりたくはないんだけど……今の青龍は常にスロウ発動させておかないとどうにもならない。
だってこれでも見えないくらいなんだもん。どんなスピードしてんだよ……。
とにかくアーニャに近づけさせるわけにはいかないからやり方を考えないと。
理性あるうちなら挑発も効くだろうけど……いや、逆か?
本能で動く相手にこそ挑発が効くのかもしれない。
「おいこら可変式青黒おっさん! お前の相手は私だげふっ!!」
せめて言い終わるまで待ってよね!!
煽った瞬間にあの尖った頭が私の腹に突っ込んできた。
アーニャの魔法のおかげでダメージは最小限で済んだけれど痛いもんは痛い。
ついでに言うなら勢いヤバすぎて一発くらうとリングの端から端まで高速回転しながらふっとぶ。
それがスロウで見えてる訳で、これはちょっとした恐怖ですよ。
なんとかスロウで自分が転がる先を見据え、足が地面に近くなった時に思い切り地を蹴り軌道を変える。
リングを破壊しながら転がっていたので瓦礫が宙を舞い、それの死角になるように飛び上がった。
ついでに瓦礫の一つを掴んで思い切り青龍に投げつける。
それに気付いた青龍が回避行動を取るけれど、私はその避けた先に回りこんでひょろひょろの足に思い切りローキック入れてやった。
ベキっと音がして片足の関節が三つくらい増えた。さすがに力が入りにくくなったらしいので修復される前に追撃。
変な方に曲がった足を執拗に攻めると、青龍も痛いらしく「ぐぎゃるごがっ」とか完全に獣の声をあげた。
私はその足先を掴むと力任せに捻り上げて捻じれたそこへ蹴りを入れ足を途中からもぎ取る。
よし、行ける!
このままたたみかけ……
「ゴヴァァァッ!!」
急にその場で青龍が旋回し、羽根みたいな部分で顔面を張り倒されそうになったので思わず腕で庇ったら……。
私の、左手の手首から先が無くなった。
青黒いおっさんが野生にかえってしまった。
今いるのは青黒くて本能に正直なおっさんです。字面的に犯罪臭。






