踏み出すJK。
いくらマスターとはいえ、突然瞬間移動じみた動きで背後からぶん殴られたら死ぬんじゃないだろうか?
しかもゆゆはなんの掛け声もかけず、叫びもせずに無言でマスターの頭上からバールを振り下ろした。
「おいどうしたー? ハム子はもうちょっと左右に動きながらでも命中率あげられるように努力しろ。あとカナはそんな便利な能力があるのに攻撃がワンパターンだぞ。もっとイマジネーション働かせろ! あ? 邪魔。 おいイル! お前にくれてやった才能全然使いこなせてないじゃないか! やる気あんのかコラ!」
「……どうだった?」
「どうもこうもないよどうなってるの!? 私ちょっと自信無くしそうなんだけど」
そういってゆゆはぺたんと地面に座り込んで天を仰ぐ。
「はしたないって。パンツ見えてるよ?」
「いいよパンツくらい見られても減らないし」
そうか。なるほどなるほど。この子は見ても大丈夫な子っと。
といっても私はナビ子としてこの子が服ビリビリに破かれて裸体になって四肢を食いちぎられはらわた引きずり出される所も見てる訳だからなんだか複雑ではあるんだけれど。
「ねぇ、なんでダメだったんだと思う?」
ゆゆは確かに音もなくマスターに攻撃を仕掛けた筈だ。
なのに、彼女は他の連中を指導しながら、ゆゆの方を見る事なくバールをバシッと掴んで、「邪魔」と一言呟きゆゆをこっちに放り投げてきた。そしてそのまま何事も無かったかのように訓練を続けている。
「もしかしたら自分の周囲で何が起きてるのかとかを感知できるセンサーみたいなのかも」
「なるほどー。さすが元ナビ子! じゃあさ、今度は二人がかりで行ってみない?」
二人がかり……それも面白いかもしれない。
マスターの限界っていうのも見て見たいし、一発殴ってみたい気持ちはある。
「作戦はどうしようか? 多分それぞれが同時に仕掛けるくらいじゃ同じ事になるだけだよ」
マスターの力がどういった物なのかきちんと把握する必要がある。
でも正直言って他の人達の攻撃がほとんど彼女の所まで届いてないから考察する余地もないんだよなぁ……。
さっきのゆゆの攻撃だけで穴を推察とするなら……。
「ゆゆ、試してみたい事があるんだけどいい?」
「何かいい方法があるの?」
「通用するかどうかを確認したいんだ。これでマスターの力の種類が分かるかもしれないから」
「おっけー。とにかく一回やってみよう。なんか楽しくなってきた!」
ゆゆはダンジョン攻略してから完全に攻撃性が増している。
彼女に必要な事がこれだったのか、それともこれが本来の彼女なのか……。
どちらにしてもちゃんと見てないといつ何をしでかすかわかったもんじゃないや。
「ほら、いくよ!」
とにかくまずは私達も一歩踏み出さないとね。
ハム子、カナの成長、イルに与えられた才能、そしてアーニャが得た新たな戦い方、キャロのさらなる攻撃特化などなど、神様達に通用するかどうか。
別に人類の存亡もかかってない利己的で壮大な戦いが始まる……!(笑)






