気分上々JK。
氷の上って事で滑るかと警戒したけれど全然そんな事なくて、むしろ走っても大丈夫なくらいだった。
だったらなんで氷なんて……。
ギミックとしては滑って戦いにくいとかさ、そういう為の物なんじゃないの?
考えてもよく分からないからそのままにして先を急ぐ。
だけどちょっと考えても結論は出ない。
誰かここに来てきっちり説明してくれないかなぁ。
「……なぁ、なんだありゃあ……」
アーニャがそんなふうに言いたくなる気持ちも分る。
目の前に棒人間が現れた。
身長は二メートル以上あって、身体が全部太い棒で出来た人型のモンスターが立っていた。
弱そうだなぁなんて思いながら一度瞬きした瞬間、お嬢の「気を付けて!」という声が聞こえた。
目を開ける間もなく私はとんでもない衝撃を受けて意識が消し飛んだ。
ほんと何が起きたのか分かんなかった。
意識が戻った時、まだ私の腕が再生している途中だった。
どうやら私は棒人間の一撃で上半身消し飛んでたらしい。
今はもちゃがそりゃもう鬼の形相で棒人間と戦っていた。
私の傍らでカナがぼろぼろ涙を流している。
「あー、泣かないでよ。ほら、私は死なないからさ」
「これ、死なないって言わないです! 死んでも自動で生き返ってるだけですよ……!」
その言葉を聞いて、私がちょっと間違ってたと気付いた。
そうかそうか、私は死んでたのか。
死んでも勝手に生き返るだけで死ねない体じゃないんだ。
じゃあ死にたくなったら何回でも死ねるのでは?
あの命が終わる時の、あっ、これ終わったな……っていう感覚をいつでも何回でも味わえるって事だよね。
自殺したって蘇る。それは結構有りなのでは?
こんな些細な事でちょっとだけ気が楽になった。
殺して貰えないなら自分で死ねばいいんだ。
死にたくなったらいつでも死ねる。
そう考えるとかなり便利な身体だよね。
あぁ、もうちょっと生きていたかったな……なんて思う事もあるかもしれないし、死にたいなんて思った事を後悔する事もあるかもしれない。
蘇生薬を使わなければ人間死んだらそこでおしまい。
誰かに見つけてもらえなかったらそれでおしまい。
だけど私は違う。
いつでもどこでも死にたい時に死ねる。
こりゃあいいや。
私は元に戻った腕を何度か動かして、ちゃんと回復しきった事を確認し、棒人間の背後に移動してバールを思いっきり振り下ろす。
「ゆゆ!? もう少し休んでなきゃダメだよ!」
もちゃが私を心配する声が聞こえる。
アーニャが魔法を唱えようとしていたのを中断したのが見えた。
私を巻き込んじゃうからだろう。
でもそんなのはどうでもいい。
魔法を打ちたければ打ってくれて構わないし、私は今気分が良いのだ。
ちょっとした気付きで妙な方向に考えが進んでしまったゆゆはもう止まれません。






