自分の感情が分からないJK。
「ちなみにだけど、私の才能はもう一つ。単純明快なのがあって……それはなんて言うかあまり自分で言葉にしたくないっていうか」
「それは私でも分るよ。馬鹿力でしょ?」
「馬鹿力って言わないでっ!! 怪力だよ怪力! なんで余計酷い表現になってるの!?」
お嬢は顔を真っ赤にして必死に抗議してきた。
意外とそういう部分は乙女らしい。
「怪力かぁ……便利そうじゃない? あの亀も一発だったし。時間の流れをゆっくりにして相手が知覚できない状態で怪力でぶん殴るんでしょ? 完全に反則だよね」
「うう……怪力ってなんか嫌なんだよねぇ……。でも確かに便利は便利だよ。本当はアーニャみたいに魔法とか使いたかったんだけど」
「アーニャの魔法凄いよね」
「そうなの! めっちゃ凄くなっちゃってさーすっごくカッコイイんだよねーさっすがアーニャ! って感じでさぁ」
「まぁ、確かにカッコ良かったかな」
私をその魔法に巻き込んだりしなければ。
「アーニャはあげないからね?」
「いらないよ……」
「要らないとかアーニャに失礼でしょーがっ!」
「うわっ、この人めんどくさい人だ……」
その時、私の前にもちゃがさっと割って入り、両腕を広げて私を守ろうとした。
「ボクだってゆゆは誰にも渡さないから!」
うーん、それはすっごく嬉しいんだけどね。
「もちゃ、心配しなくても私は誰かの物になんてなったりしないよ」
「……そう、なの?」
もちゃは私に振り向いて、なんとも言えない顔をしてくる。
てっきり喜ぶかと思ったのになんだろうその顔……。
あっ、もしかして……この子私が誰かの物にならないって言ったから、自分の物にもならないとかそんなふうに思って凹んでるの?
その考えはどうやら図星だったらしく、もちゃが何か言いたそうにしてはえっと……その、あの……みたいにブツブツ言ってる。
こういう姿を見られるのは、彼女には悪いが嬉しい。
何せ楽しいし可愛い。
私はなんだかんだ言ってもちゃの事はかなり好きなんだろう。
それがどういう意味なのかっていう部分には答えを出していないけれどそれはそれでいいんじゃないかな。
私はこれを恋愛感情と断定できない。
だけどもちゃが必要とするなら出来る限り応えてあげたいし傍に居てあげたいし、寂しいならぎゅってしてあげたい。
だから私はずるい女なのだ。
何も言わずに、もちゃの気持ちを受け入れる言葉も拒絶の態度も無しでただ無言で優しく抱きしめた。
温かい感触が私の腕に伝わって、そのぼさぼさの髪の毛がくすぐったい。
いつかこの子が私を必要としなくなる日までには私の中で答えが出るといいな。
ゆゆはもちゃの事が好きですが、それがどういう好きなのか良く分かっておりません。
大切ではあるけど恋愛感情か分からない。そして、それがはっきりしないからこそまだ否定はしたくないんですよね。






