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魔王とアン -まったりゆったり世界征服-  作者: しるどら(47AgDragon)
第1章 まったりの目覚め

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026 : 悪魔の教室


 街で盛大にやらかすため、クェルも伴って朝からスラムである。

 スラムは街の中でも山がちなところで、まあ端的に言って荷物の上げ下ろしなどを考えても利便性としてはいろいろ向いていない。

 なお、荷物持ちはクェルである。幼女に荷物持ちをさせる大の魔族(おとな)二人。


 高台だけに景色だけはよいのであるが、景色だけでご飯は食えぬ。

 平地のよい所はすべて豊かな者達に持って行かれていたりするし、金がないと街を追い出される。そんな貧しい者たちが、家をどんどん継ぎ足していって無秩序に増えた結果であるのが容易に見て取れる。

 だいたい、子供のおもちゃを散らかしたままにして、片付けないまま積み重ねていくとこうなる感じであるな。よくも悪くも雑多で危なっかしさ満載である。


 きっと出稼ぎがそのまま住み着いたり、食い詰め者が居付いたり、夢破れたものが逃げこんだりしておるのである。それがいつしか常態化して世代を重ねるとこうなるのであろう。

 ある意味では街の発展の影に隠れた歴史でもあり、もしかするとスラムなしにはここまで栄えなかったかもしれない。もしかすると、影の立役者である可能性もある。


 まあその功罪は考え方次第なのであるが、なんにせよ住民の立場で考えれば、貧乏であるがゆえに余裕が無いし、生活にまったり分が足りなければ考えるどころではなくなるのだ。

 必然的に、頭のなかは暮らすことだけで一杯であるので、選択肢がない。

 スラムでは、とにかく日々の生活を守るだけであっぷあっぷなのだ。


 そんな場所に我ら見目麗しい女グループである。

 どう見ても明らかに浮いているので、いいカモとかエサが来たという感じに思われているかもだが。

 でもむしろ、いろいろとかっ攫っていくのはこっちである気もしなくはないので、持ちつ持たれつかもしれない。

 まあ、やることをやるだけなのだ。


 まず、アンが事前に見つくろっておいた、改装してもよさそうな広めの空き家を勝手に拝借し整理する。ついでに適当に机や椅子っぽいものを作って教室にする。

 まばらに見物人が集まってくるが、構わず続け、共有スペースとして使えそうな広場とともに確保。その上でとりあえず炊き出しの準備を始めると、ぞろぞろ人が集まってくる。


 人、獣人、エルフ、混血。いつでもどこでも好奇心いっぱいの子供、物珍しさで集まるおっさんおばさん、ちょっと人に言えなさそうな素性ぽい者、近所のじーさんばーさんなどなど。

 老若男女、年齢も種族もバラバラ。ちょっとした集会じみた感じの状態になる。


 そこで人だかりに向かっておもむろに演説。


「うむ、我は導師オルレアである、これからここに学校を作るのだぞ。学校では読み書きと、ささやかながら炊き出しをするのだ。よろしく」


 なにはともあれ、まずは炊き出しである。

 スラムで安全と信用を得られる最大の方法である。飯に手は出せない。

 次から来なくなってしまうとみんなが困るし、出来ることならたくさん来てもらいたいに決まっている。


 そのため基本的には食事を受ける代わりに講習を受けてもらうのであるが、自由参加である。

 炊き出しが終わってしまえば物好き以外誰も来ない。当然の結果である。それでも、順序を逆にして飯のために聞き流されるよりかは自主的なので、それで充分だと思う。

 だいたい、スラムではそんな、勉強などという一銭にもならない上にややこしくて時間を浪費するものにいつまでも付き合ってられないのだ。


 とはいえ、アンのような美女と我のような美少女、クェルのような愛らしい幼女がいるので、それだけでも人は集まるのであるが。

 特に子どもと若い男が多い。明らかにからかい半分や体目当てで来るものもいる。


「よぉ、脱いでくれるってなら俺ら喜んでお話聞くんだけどなァ?」


「そうそう、せっかくそんだけ色っぽいんだからちょっとぐらいはいいじゃないスか」


 などと素敵可愛い言葉が飛んできたりする。

 せっかくのありがたい提案であるので、文字通り実行してみよう。


「……うむ、アン」


「はいはい……さ、ぼうや? お姉さんの言うこと聞きましょうね?」


 そんな感じでヤジを飛ばした彼を、有無を言わせず強制的にパンツ一丁にひん剥いてみた。

 初めて授業を受けるという知的快楽のあまり、顔に青あざを作るくらい感動で半泣きであった。

 他の者もコレを見て、すっかりやる気になってくれたようである。

 いやはや、勉学というものにコレほど興味を持ってもらえると言うのは、教師冥利につきるというものであるな。


 ただ、おかげで妙な効果も生まれた。

 炊き出し教育ギャング団という新勢力に従う者が増える一方で、アンのお仕置き目当てという問題行動が散見されたのである。

 おかげで自ら騒ぎを起こして罰せられに来るということが起きたが、それはそれで「踏まれタイム」という名で授業の余興として大いに盛り上がることになった。


 教室のついでに若干の医療なども面倒を見た。

 もっとも、金をかけずに出来ることを軽く話す程度なのであるが、それでもだいぶ違うハズである。人づてに広まるだけでも効果があろう。

 この辺は錬金や魔術研究、人体知識の有無がだいぶ大きいのだ。

 まあ、物知り小娘ぐらいに思ってもらえればいい感じである。


 そうしたことをざっくり一ヶ月ぐらい続けてみた。

 もしかすると新手の宗教かなんかの慈善事業と思われておるかもだが、物好きだけでも興味があればなんとかなるものである。

 むしろ興味が無いよりそのほうがいいので、ある意味では厳選した者達とも言える。

 そういう意味では好スタートであった。


 結果からいうと、我には物を教える才能はあるのだが、徹底的に舐められるということが判明した。

 なぜなら、教えるとだいたい荒れるのである。我が。

 ネタを振られるとつい乗ってしまうのだ。なお、人気は高い。

 ウケはよいのであるが雑談ばかりで進まないので、だいたいアンに怒られるまでがひとセットである。


 その点、アンは適任だと言えた。丁寧かつ容赦無いし、それ自体に人気がある。

 特に我に容赦がない。


「はい。言うことを聞かないと今のオルレア様みたいになるので、ここしっかり丁寧にやってください」


「ぐむう、それはさすがに言いすぎだと思うのだぞ」


「言われるのが嫌ならちゃんと進めてください」


「はい」


 なお、我はお仕置きされた挙句に正座させられているので、こういうやり取りがあるとだいたい微笑ましく眺められる。

 スラムで怒られながら笑いのネタを振りまいておる魔王(げいにん)というのはどうなのだろうか。

 まったりの道はなかなか厳しいのである。


 そんなある日。


「おう。誰に断って人の家に勝手に居座ってんだよ」


 いかにもな格好にいかにもな態度で刃物をちらつかせるという、いかにもな連中。

 いわゆる地元のギャング団、専業チンピラの方々である。


 我ら炊き出し教育団に人が集まるようになってそこそこうまく行っておるので、文句をつけにきたのだ。

 まあ、ここで活動する以上は場所代を払えという話なのだ。ウチの傘下ですよアピールをしろということであるな。

 つまりは、地元の一員として認められたとも言える。めでたい。


「うむ、誰もおらぬ空き家なので堂々と居座っておるだけであるぞ」


 いつものようにアンに怒られながら正座で言ってもあまり説得力がないのであるが。

 でも、文字通り居座り感は出ていると思う。


「そうかよ。ならそのへんはカンベンしてやらなくもないから、相応の感謝の気持ちってやつがあるよな?」


「なるほど一理あるな。ではクェル。遊んでやってもよいぞ」


 ぱぁあと明るくなるクェル。

 いつも教室の後ろで物を積んだりして楽しそうに子供達と遊んでいるのだが、好き勝手してもよい、というのはまた別である。


 ギャングの前に出て行くと、ひょい、とおもむろに刃物をつまむ。


「ばっ、テメエなにしやが……!?」


 おどろくのもつかの間、今度は引くことも押すことも出来ない。

 クェルからすると、むしろ力入れていいことも少ないのでニコニコであるが。

 刃物をつまんで嬉しそうな幼女と挙動不審のギャング。

 すごく絵になる光景である。


「チッ、それはくれてやるよ。でも、タダじゃ済まさねえからな!」


 動揺を隠しつつも強がるギャング。

 もらえると言われるとさらに嬉しそうに微笑むクェル。


「……ありがと」


 うむ、やさしいお兄さんに遊んでもらってよかったのう。


 結局ギャング達はそのまま相応の感謝の気持ちを受け取って悔しそうに帰っていったが、あれだけ満面の笑みで本心から礼を言われると複雑であろうな……別に、縄張り意識が強いだけで本気で地元に危害を加えたいわけではないのだし。


 こういう所のギャングというのは、暴力的ではあるものの、もともと自警団みたいなものなのだ。まあゴロツキを兼ねているので多分に自分本位で利己的であるのだが。そのため衛兵などが立ち入るわけにも行かず、スラムをややこしくしている原因でもある。

 基本的に面子を重んじるという古風で奥ゆかしい方々なので、やられたらやり返すのが常である。そのため、抗争などが起こると往々にしてめんどくさい。

 そういう連中であることを考えると、近いうちに我らが帰ったあとに夜襲があるであろう。楽しみである。


 ……そして数日後。

 青い顔をして炊き出しを手伝うギャング達がそこに。

 自ら進んで地元のために奉仕活動とは、なかなか見上げた心がけである。


「おお、この間いろいろあったばかりだというのに助かるであるな」


「……悪魔が……ここを手伝えって……でないと殺すよりひどい目にあわせるって……」


「ん? なんのことかわからぬが、手伝ってくれるのは歓迎であるぞ」


 どう見ても泥棒よけの呪いを食らったのは明白である。みんないい若者たちであると思う。

 人が感動体験を通して心を入れ替える瞬間というのはいつも気持ちがよいものである。


 そんな様子を見ていたアンがこそっと聞いてくる。


「念のため聞いておきますが、なにやったんです?」


「後悔していることや悩んでいること、恐れていることをひたすら増幅した挙句、手伝うことで解決するよう逃げ道にしておいただけであるぞ」


「悪い人ですねえ」


「慈しみの心であるぞ」


 きっかけはなんでもよいのである。やってみたら結構よかったということも少なくないので、まずはやってみて考えればよい。やらずにうだうだと文句を言っておる状態が一番まずいのだ。

 ギャングなどで粋がっておるのも悪いとは言わぬが、それなら本物の護衛になってもよいのであるし、もしかしたらもっと違った道があるかもしれぬ。

 よいことも悪いことも、決めつけてしまわぬ心が大事なのだ。


えー、ありがたいことに、魔王とアン、書籍化が決定いたしました!

コレもひとえにみなさまの応援のおかげです、この場をお借りしてまずはお礼を


あとがきなのでお礼と報告のみで失礼しますが

詳しくは活動報告の方で書かせていただいております。


今後ともまったりお付き合いいただければ幸いです

改めてよろしくお願いします

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