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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
2014年1月1日夕方~二日朝

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悪夢中です 18 (雪姫)

暫く更新していなかったので。

夢の中。黒雪の棘で磔にされた雪姫。

痛みから記憶が飛んだ彼女の中の水羽と入れ違う瞬間から。です。

雪姫目線。


lllllllllllllll

 急に地面から突き出した何かに体が捕らわれて、それから逃げるように、ぎゅっと目を瞑ったのです。

 襲ったのが痛みと気付いた一瞬後、我が身から血液が失われるのを感じ、呼吸が出来なくて、苦しくなって。

 痛い、痛い……

 なぜこんなに痛いのでしょうか?

 私はどこにいるのか、何をしていたのか、何も考えられないくらい余りにも痛いのです。それでも痛みから意識を無くすことはなく、けれども自分が立っているのか座っているのかもわからなくなって、それはきっととても長く『痛い』と言う言葉を頭の中でも口の中でも繰り返していた気がします。

『いたいよ、たすけてよ。いたいよ。どうして、わたし? にせみこだから? いたい、いたい……』

 あれ? って思いました。それは自分の声ではなく、誰かが同じように同じ言葉を羅列しているような気がして、意識がそちらに向きます。

 ああ、この声は黒雪ちゃんで、……私ではないです。いや、確かに私も痛いのですけれども……痛い? のでしょうか……黒雪ちゃんの言葉を聞いているうちに、どんどん違和感を感じました。『この痛み』は本当に私のモノ? なのでしょうか? だいたい、これ、夢ですよね? それにあの黒く尖ったモノ、アレは……

『もぉーひっぱられちゃあダメだっていったでしょー』

 頭のどこかで水羽さんの間延びした声がした気がしました。そう言えば、さっきそう言われましたね。では、私、今引っ張られているのでしょうか? と、思考が傾くと、体の中まで這いまわっていた痛みと不快な感覚が失せていきます。それに従って、黒雪ちゃんの声が消えて。

 このまま楽になれるって言うのはわかります。けれどこのまま黒雪ちゃんの声から離れてしまえば、きっと彼女は苦しいはず。聞いてあげないといけないって思って……

『どうして、どうして、わたしじゃないの』

 私がうっすらと開けた瞳の中、黒雪ちゃんはすぅっと幻のように消えていきました。彼女が乗っていた車椅子は一緒になくなってしまったのですが、いろんな欠片や血の跡がそこには残っていました。

『さて……っ、と』

 私の口から、私の意志ではない声が漏れました。ああ、水羽さんが私の中に降りているのを感じました。いつも居るようなのに、こちらの呼びかけにいつでも答えてくれるわけではない不思議なヒト。それなのにわざわざ夢に姿を見せてくれ、今だってきっと私を守ってくれたのでしょう。

 感謝を伝えたいけれども、水羽さんに権限を握られているせいか、体が串刺しになっているせいか、言葉は口に出来ませんでした。ただ、何とか黒軍手君を握っていた手を動かせただけ。

『そ……もがきなさい』

 その言葉の後、水羽さんが私に感覚を戻してくれたのを感じました。まるで水の中で呼吸を止めていたかのように、肺に空気が入ってくるのに噎せて、痛みが再度戻ってきます。

「っと……」

 憶測ですが、この痛みを与えている棘は、黒雪ちゃんのモノ。黒雪ちゃん自体が、持っていた、彼女が味わってきた痛みの、きっとほんの一部。どうにかしてあげたいと思うけれど、もう彼女もいないし、ココに張り付けられているわけにもいきません。このままだと、死んでしまうのは私。

「引っ張られちゃ、ダメ、なんですよね。ごめんなさい」

 何の力にもなれずに……そう思いながら言葉と息をゆっくり吐くと、棘と痛みはさらさらと消え、そして持ち上げられて浮いていた体は地面に落……って、地面がありませんよ?

 今まで、黒雪ちゃんがいたハズの場所に散らばっていた何かの部品も、汚れた床も、どこかの建物っぽい場所に居たハズなのに、それらが目の前で崩れて落ちてなくなっていました。だから、引力に従って、私の体も凄い勢いで落ちて行きます。

 嘘でしょ? って、あんまり驚いた時って、キャーって叫べない物なのですね。それにしてもこれ、死ぬって……怖いって、ああ、引っ張られちゃダメって、物理的な事だったのでしょうか?

 いえいえ、たぶん、ココは夢だからきっと。

「夢なので! きっと、と、飛べるんですよっ……って、あ、ホント、に?」

 自分で言いながら、びっくりしました。落ちて行くのは止まりませんが、そのスピードがゆっくりになりました。ほんの少し、この場所を理解したような気がします。ココは黒雪ちゃんの夢だから、彼女がいなくなった事で、保てなくなったのでしょう。そしてここは私の夢でもあるので、少しは融通が利くのだと思います。

 とりあえず下を見ます。

 暗い穴の中をそっと堕ちている感覚。空ではなく、閉鎖した空間。古い井戸に落ちて行くような、天が遠くなって、地の底に踏み込むそんな感じです。

 何か見えないかと目を見開いていましたが、ふとゆっくり瞬きをした後、暗い黒の空間に微かな茶色を見ました。丸く、薄いスポットライトを浴びたようにかすかに明るい底に、ふんわりと私は降り立ちました。

『ここにまた来らっしゃったとは……』

 そこに居たのは……暖炉の側に座る老年の女性。

「貴女は……」

 私は目を疑いました。

 何故なら、その光景は……私が昨年描いた絵、そのものの場所、そしてその人だったのですから。


lllllllllll


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


『黒雪姫』


小藍様より








お借りいたしました。




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