表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
2014年1月1日夕方~二日朝

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

526/531

悪夢中です 17 (水羽)

目覚めた神の足元に。

lllllllllllllll

 地面から生えた黒い結晶に捉えられた白髪の少女。その足元でのたうつように黒髪の少女が苦しんでいる。口から吐く血の量は多く、彼女の飲んだ量とは比べ物にならなかった。

 黒髪の少女『黒雪姫』は『巫女』の何某からつくられた。かつてそのままに『つくりもの』などと言われていたが、近年は『偽巫女』と内々に呼び馴らされている。

 それを見下げたのは、ユキの中で普段は惰眠を貪っている水神、水羽と名乗る意識体だった。

 神が依代とする『巫女』から作られた『人工の巫女つくりもの』は昔から居た。

 宵乃宮は長い事、巫女の体を研究している。神と交信し、紙により近づきたい……その為の人柱として少しでもイイ者を生み出したいという『巫女』の繁殖が形を変えていった、一つの経路だ。

 実験では人間を巫女の血で育てたり、昔はまだ数の居た妖怪やなにかと練り合わせたりした。その過程で出来た何かが、この夏の頃に恨み辛みと色々とが結びついて騒ぎを起こしかけたのを、二人の『堕天使』と『猫夜叉』が消し飛ばしたのは知る者だけが認知している真実。

 その中、衰退した魔術や呪術より、近年の科学の発達で生まれたクローンはかなりの精度で『巫女』を作る事に成功していた。

 しかし『巫女』の力に近しきモノは出来ても完全再現は出来ていない。そんな事が出来るわけではないのだと知っていて、欠片でも求める『えご』の結晶が『偽巫女』。

 黒雪姫と呼ばれる幼女は『偽巫女』ではなく、本当の巫女になりたいと望み、その血を含んだ。

 けれど彼女はわかっていない、力とは無暗に使えば何かしらの歪みが出る。例えばユキが人を癒そうと水羽に縋れば、容赦なく命を削っての作業になる。

 黒雪姫の筋肉が育っていない事や、短絡的な思考は育てられ方にも起因するかもしれないが、それだけが原因ではない。黒雪姫は成長を削って夢を見ている……子供という見た目と相反する魂の劣化。それに気付いている大人は、彼女を含む偽巫女には伝えない。家畜に『明日、お前は出荷されるのだ』と告げないように。

 己を知らず、教えられもせず、ただどうして、どうして、と、血を吐きながら目の前の地面によろけ倒れているソレが、白髪の少女の中身かみに疑問を投げる。

『私がふつうにうまれていないから? 人間じゃないから? どうしてぇ? 私にこたえて出てきてくれたなら、おねがい、わたしを巫女に……』

『うーん。ちがうんだよねぇ』

 平素の白髪の少女から零れる事はない、冷たく放たれる声。

 巫女ではないが、黒雪姫も人間ではある。遺伝子的に。人間が作った人間、これからの時代は人間に限らずそう言う生き物も増えるだろうし、それはそれで時代の流れだからかまわない、と、『水羽』は考えて、言葉少なにそう言った。

 だいたい水羽は黒雪姫がしゃぶった逆の手に、ユキが夢の中でも意識して握り締めていた『黒軍手君』の首に巻いた布の中の『ネジ』に血がかかった事により、『まぁ、なんとなく』現れたのだ。黒雪姫の声に応えたわけではないのだ。

 まぁ、出てきてみれば依り代のユキは黒雪姫の攻撃で串刺し状態なのだが……あぁ、警戒心のない白巫女の事、おおよそ何の警戒もなく刺されたのだろうとアタりを付けた水羽は、足元を見下ろして事実を告げてやる。

『あなたは巫女じゃないから。それだけよ』

 黒髪の少女『黒雪姫』がずっと痛めつけられ、尊厳はなく、宵乃宮で生まれ育ったのだと知っている。なんとかしてやりたいとおもわなくはない、けれども神にも決まりはある。何にでも手を出せばそれは神の意志せかいであって、人間は奴隷となり下がる。

 宵乃宮が人ならざるものであっても、水羽よりも彼は人間寄りにいる。人間がしたことなのだ、人間がどうにかするしかない。

 手が出せるのは『巫女』が望み、水羽が『許容きまぐれ』とした時だ。神はやたらと『奇跡』などおこさない。人間が、動物が、空が、海が……そこにあって生きられる事自体が『奇跡』だと水羽かみは思う。

 それに『巫女』が夢を渡ったり、人を癒したりするのは副産物。水羽の考える『巫女』は人でありながら神の声を聴き、その依代となって権現の橋渡しをし、人の世を揺蕩う時間の揺り籠となれる者だ。

 それでいえば、白巫女の母親、アキですら水羽にとっては本当の意味での『巫女』ではない。『巫女の血統』であるだけだ。彼女はぎりぎり水羽の声を聴いても、神を権現させた事も、その身に神を降ろしたこともなかった。

 とかく近年の『巫女』はそういうものだった。

 水も空気も汚れに汚れ、水羽もその身を委ねたいと思える巫女も、環境も整う事はなかった。人間といる事が多い兄のかぐつちに『ついでだから~』とついて行く事はあれど、その身を汚れた空気に晒してまで人前に姿を現したいと思う事も稀すぎる。

 水羽が目を細める。

 もし白巫女の意識があれば、黒雪姫をどうにかしてやりたいと思っただろう。気を失う程の痛みを与えた者の頼みであったとしても、真摯に訴えればきっとそうする。そう水羽には確信を持って言えた。

 巫女とはそういう生き物だから。

 その髪と似た真白の心の持ち主。それでも完全な白でない事を恥じて反省し、手を差し出す事の出来る者。人間と神の間にいる、その中間で揺れる使徒とも呼べる存在。純粋さ故に植物や風の声を聴き、虫を侍らせ、雨を自在に降らす事も出来る……ただ白巫女にそんな意志はない。回りが自然とやってしまう、そう言う者を惹きつける。その白くて柔らかい気配に忍び寄る者は善だけではなく、悪意を含んでいる者が多いのはいつの世も同じ。

 残念ながら、世界は巫女に優しくはない。

『ね、神さまなのでしょ? ねぇ白みこ様より、わたしにちからを……』

『わたしのみこは、今はユキのみよ。』

 黒雪の請願に応えたのは厳しい返答。

 偽巫女がどんなに巫女に寄せてきても、彼女は巫女ではない。

 蛾が蝶になる事も、スズメが鷹に変わる事もないように。

 それを不公平と言っても、もともと自然は甘くない。自らに与えられた中でもがくしかない。もがけるだけ、マシだろう、と水羽は思う事もある。

 恨みがましい目で白巫女ユキを見上げようとした黒雪姫は、その纏った『神気』に気圧され、顔を上げる事も叶わない。

『ど……して? 痛いよ、たすけてよぉ……』

『……これ以上はない。去りなさい』 

 黒雪姫はそれ以上を水羽に求める事を諦めたのか、ズルズルと体を引きずり、先ほどまで座っていた車椅子の方に寄っていく。立ち上がる事もできぬまま、震える手で椅子の上に置いた彼女には不釣り合いな紳士服を引き寄せる。その拍子にパソコンの一部が落ちて派手に砕けた。黒雪姫はそれに見向きもせず、柔らかくコロンと転がってきたぬいぐるみと服を縋るように抱きしめて身を丸めた。

『どうして、どうして、わたしじゃないの』

 そうして目の前の彼女はすぅっと幻のように消えた。車椅子も一緒に無くなったが、彼女が吐いた血痕と壊れたパソコンの一部がそこに残った事が、その存在が間違いなくここに在った事を示した。

『さて……っ、と』

 どうしたものか、と、水羽が思う。

 彼女が消えても、呪いのように白巫女を串刺した結晶は残っている。黒雪姫の想いは強いという事だろう。放置すればユキは死んでしまう。しかし水羽も貴重な『巫女』だからと肩入れする気はない。このままただ死ぬなら、それも『奇跡しぜん』の一部であろうから。

 その時、黒軍手君を握っていた手がピクリと動いたのを感じ、目線をやる。

『そ……もがきなさい』

 そう言ってゆっくりと目を閉じた。


lllllllllll




『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

ベル姉様

リズちゃん

そしてアラストール。(懐かし~)


うろな町 思議ノ石碑 (銀月 妃羅 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n4281br/

無白花ちゃん 斬無斗君 

(銀月 妃羅 様、退会されたようで、

お話が削除されていますがURLそのまま残します)



(以降、退会や作品消去になっている方の作品のお子様を使用する場合は

わかる限りでURLやキャラ名は書きますが、

確認のしようがないので間違っている事もあるかも知れません。

問題あればお知らせください)



『以下1名:悪役キャラ提供企画より』

『黒雪姫』

小藍様より




お借りいたしました。


問題があればお知らせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ