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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
2014年1月1日夕方~二日朝

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悪夢中です13(ユキと黒雪)

また更新が開いてしまいました。

もう七年前なのね、現在2014年一月二日夜が明ける前。


ユキは黒雪姫の下に…

ユキ視点です。

 

『白みこさま。いま、どこかにいってた?』

「あ、ああ。ええ……まぁ」

 水羽さんの所から戻って来た私は、黒雪ちゃんの前でパソコンの画面を見せられたその位置に寸部違わず立っていました。彼女は痩せているから、なお大きく見える瞳を瞬かせます。

 私が夢を旅した時間は、たぶん黒雪ちゃんにとって数秒にしかたっていないのではないでしょうか? けど服装は水羽さんと一緒に着ていた着物のままでした。黒雪ちゃんと初めに合った時は夜着だったから、いつの間にそれに変わったのか私にはわかりませんけれど。その変化で黒雪ちゃんは私がココとは別の場所に居たのを察したのかもしれません。

 しかし長いなーって思います、この夢。正直、頭が混乱しているので、普通に現実へ帰りたいのですけど。

『ほんとうの神さまみたい、きれ……』

 オレンジがかった輝きを放つ着物をキラキラとした視線で眺めている横、彼女の見せてくれていた画面に再び目線が行きましたが、今回は意識が引き込まれる事はありませんでした。けれど映っていた人物にくぎ付けになりました。

 そこに映ったのは、二人の男性。

 私はその人達を知っているハズですが、どちらも他人のように表情が違っているのです。

 一人はうろな文具店の篠生さん……ではなく、彼によく似た人。似ているけれど顔に焼け跡がある彼の名は、宵乃宮さん。私を欲しいと思っている人、長く巫女達の力を自分のほしいままにしてきた人。そして『いざなぎ』さんを起こした人、らしいです。彼は黒に近い赤い刀をツイと出し、もう一人の剣戟をさらりと受け流しては、刀を容赦なく振っています。

 もう一人は宵乃宮サンの刀の切っ先が掠めて血がこぼれているのに、漆黒の瞳を煌めかせて立ち回っている人。

「っ……賀川さん!?」

 一つずつは浅い傷ですが、痛くないわけはないでしょう。それなのに顔を歪める事もなく、何も感じていない表情で果敢に飛び込んでいくのが怖いのです。その瞳の感じが、そして体に透けている刀が刺さっているのが見えて、どうやっても私を刺してきたあの夢の中の彼が再来しているようでした。

 傷つく事も厭わず、いえ、戦う事を平然と受け入れている空虚な目つきが、いつもの彼とは全くの別人です。私はいろんな人やモノに色を感じますが、彼から色を見た事が余りありません。この頃見たのはピアノを穏やかに弾いている時に僅かに感じたくらいで。それもどんな色かわからないくらい微妙な変化でした。

 けれど今の彼は濃い色を靡かせています。濃い、と言いましたが、それは色というには不確かな圧縮された空気。とても透明。そこでやっと彼がいつも纏うのは微量すぎて見えず、見えてもとっても見えにくい『透明』が彼の持つ色だという事を知りました。

 でもいつもなら見えないそれが塊としてある事が、彼の状態が普通でない事を示しています。

 私が行って何が出来るわけでもないでしょうが、行かなければと思います。けれどその方法がないまま、画面を見ていた私に黒雪ちゃんが聞いてきます。

『このおにいちゃん、いそーろう様?』

『いそーろう?』

 黒雪ちゃんが指しているのが賀川さんの事だとは察しがつきますが、何故『いそーろう』などと呼ぶのでしょう。意味が分からなくって、それでも賀川さんから目が離せません。

「いそうろーう……ああ、もしかして『いそうろう』?」

 水羽さん、賀川さんを『いそうろう』って呼ぶから。どこかでそれを聞いていたのかもしれません。水羽さんが直で彼女の所には行きそうにない気はしますけど。

 そう言えば水羽さんが『いそうろう』って呼んだのは、彼女と本当に初めてハッキリと言葉を交わしたあの日。

 ベル姉様がいたあの夏の日。

 後ろで冴さんが黒い靄の塊みたいになって、『闇御津羽くらみづはの結界』を破ろうとしていたのですけれど。

 で、そんな中、キスしたい相手、なんて話になったのですよ……その、あのですね……そんな相手は彼氏となった賀川あきさんしかいないけど、前の時も、そして今も……でも、でも、そういうのは何だか私にはちょっと恥ずかしい話で。その話の中で自然と水羽さんは『いそうろう』と賀川さんの事、そう呼んでいたのです。

 特に気付きもせず、深く聞く事はないまま、『タカのおじさまの家に間借りしている』って意味で、賀川さんの事をそう呼んでいるのだと思いました。私はそう思いこんで、『それは賀川さんの事ですか?』って、聞き返した記憶はありません。

「どういう意味ですか?」

『……ともりでも、とくに神のかごがある人のコトを、そうよぶの』

 私が知らない事、彼女は知っているみたいです。賀川さんと篠生さんは仲良いですから、そう言う事なのかもしれません。そう理解した所で、黒雪ちゃんは逆に何も知らない私を怪訝に思ったのか微かに表情を暗くした気がします。

『ゆめわたりすると、いろいろとみれるよ』

「ゆめわたりってさっきの感じでしょうか?」

『うーん……わたしはいちどみた夢にならこうやって。ああ夢じゃなく、げんざいになってる……ココ、見て』

 戦う賀川さんと宵乃宮さんの向こう。暗がりに見えるのはタカおじさまの姿と……

「お母さん!」

 お母さんはタカおじさまの腕の中でぐったりしていました。暗い中でも戦目に見える大量の血とお母さんの色。色はとっても薄いけれど、長い間、側に居て、私の中心だった人。間違えるはずはなくて。

「行かないと。どうやったらいけるのでしょう?」

『さっきもいったけど、わたしは『自由』にわたれないの。それもどこにもいかないように、いっしょにいるようにアキのみこ様がいったから』

 彼女はお母さんが見られたら私が喜ぶと思って見せてくれたのでしょう。確かに会えないよりいいし、まさかこんな事になっているとは思っていなかったのでしょうけれども、お母さんはこの場を見せたくなかったのでは。

 そして水羽さん、『回避した未来』って言っていたけど、回避するのは簡単ではないハズ。

「未来の予想ゆめを反らすにはどんな方法があるか、黒雪ちゃんは知っていますか?」

『……えんざんはするとしても、とりあえず、うごく。かな? あと、そのうんめいをべつのひとが受ければはやいかな?』

 考えながらそう答え、ちらっと私を見ると、

『ねえ。白みこねえさまより、わたし……できるよね。それなのに、なんでわたしは『にせみこ』なのかな』

「え……わかりません。にせみこ、ですか?」

 にせみこ、という単語を漢字にするなら『偽巫女』でしょう。私やお母さんを『巫女』、分家筋を『刀守』と呼ぶ事は知っています。でも偽巫女って、文字通りに取ると、巫女に似ているという意味ですよね。私とどこが違うのかと言われたらわかりません、髪色や目の色なら普通は私の方がおかしいでしょう。お母さんも巫女と呼ばれているから、白髪や赤い瞳である事は巫女の条件ではないと思うのです。

 黒雪ちゃんは大きな目を少し細くしてから、大きく見開き、コトンと首を傾げます。可愛らしいとは思うのですが、いつの間にか表情が無くなっていました。魂のない人形を思わせるそれに、私は後ずさりました。

『ちすじ……かな』

 そう呟く彼女の目はドンヨリとして、何かに酔ったようでした。今までの無邪気さに私への切望や恨みにも似たドロドロした感情が溢れてきます。そのお陰で私の視界がとても悪くなりました。どうしていいのか迷っている私を見て、彼女が浮かべた笑いはとても怖くて。『豹変』とも言えるその変化に気付きながら、対応すべき行動を取る事が出来ません。

『ああ、そう、わたしたちはいろいろ混ぜられてるの。ほかのしりーずとか、あなたのはへんからつくられたの。だけどまだ、ほんものじゃないから、ほんものになったらおじいちゃまもきっと……あなたの血を入れたらどうかな?』

「それは……」

『ちょうだい。わたしに。いいよね?』

 ぴしぴしっと、何かが凝固する音が聞こえました。足元から何本もの黒い柱が突き出し、私は避ける間もなくそれに串刺しになり、余りの痛みと衝撃に再び視界が飛んだのでした。



lllllllllll




『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)




http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/




ベル姉様






『以下1名:悪役キャラ提供企画より』




『黒雪姫』




小藍様より




お借りいたしました。




問題があればお知らせください。

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