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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
2014年1月1日夕方~二日朝

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悪夢中です8(ユキ)

少し時間を戻して。ユキです。

lllllllllllll

 今日は元旦、ああ、きっと十二時は過ぎて居るから二日でしょうか?

 その時刻、私は賀川さんの夢の中にお母さんが来て、色々大変な事になっているなんて全く考えていませんでした。


 昨日は元旦。

 手袋ちゃん達が来てくれて、楽しかったし、お土産のジェラートは美味しかったのです。その後少し寝ぼけている間に、水羽さんがタカおじさまと話していましたよ。

 その時に見たくない赤いイメージがタカおじさまに重なって、すごく怖くて。タカおじさまは自分が注意するから、気にしない様にって言ってくれたのですけれど。

 このままでいいのでしょうか……って、誰に相談すればいいでしょうかね? 賀川さんに相談ししそびれてしまいましたし、だいたいこういう変わった体験の類って相談するならカトリーヌ様でしょうか。高馬さんは今いないし……

『白のみこさまあ!』

 あれ? って私は思いました。

 あの後は疲れながらもお風呂を済ませ、絵を描いて……たぶん私はイモムシさんのようにお布団で丸まって寝ているはずです。虫さんは嫌いなのですが、毎日夜になるとそんな感じの日が多いのです。夏に具合が悪くなって、でもベル姉様のおかげで凄くよくなっていたのに。また日々、何かが欠けて行くように疲れが纏わりついてきます。

 前は夜、朝方まで絵を描く時間に充てていたのですけれど今は眠るのが早いのです。……っていうか、いえいえい、思い返してみると、今日は布団に包まる間もなく倒れた気もします。そう、お母さんの声を聴いた気がしたのです、確か『皆に眠りを……安らかな朝を迎えるまでの一時を……』って。そしたら眠くなって……

 と、とにかく、サボっているんじゃないんですけれど、今晩に限らず全体的に作業が遅れ気味で、色々と納品が難しくなっているのですよ。困りますね。

 二月に何があっても大丈夫なように、ある限りのお仕事は全部急ぎたいのです。いつぞやの副賞の展示会に関する納品も迫っていますよ。

 それに……やっぱり仕事中は森に帰りたいです。町も悪くはないけれど、私は森の方がいいのです。お母さんが戻ってこないってわかっても、あそこで待っていたいのです。でも自由にいつでも行き来するわけにもいかなくって。それでもたぶん今月は多めに森へ帰れると思います。うろな文具の篠生さん……かぐつちさまって言った方がいいのでしょうか? うーん、とりあえず森へ帰ってもいいっていうお話してくれていたので、きっと大丈夫なのです。

 で、それらの話はとりあえず置いて、私は裾野のタカおじさまのお家の離れにもらったお部屋にいるハズなのに。

『白の……みこさま?』

「あの。所で、ここはどこでしょう?」 

 目の前には黒髪の少女が居て、その手には大きなクマのぬいぐるみ。起き上がるベッドに車輪を付けたような、大きな車いすに座っていて、膝にはコートがかけてあります。彼女に似合う可愛い服じゃなくって、渋いおじさま達が好みそうな……イメージ的にぎょぎょのおじさまよりバッタのおじさまの……って言うか、コレ、バッタのおじさまの『けはい』? 何で彼女が持っているんでしょうって思いましたが、質問する前に彼女の言葉が紡がれました。

『白みこさまのおようふく、かわいい』

「ありがと……じゃなくって。あの、ですね。貴女は、誰ですか? それにココは?」

 彼女と私は真っ暗で灯りのない部屋にいるのですが。私は車いすに座る彼女の白いワンピースを、そして彼女は私のレースがたっぷりあしらわれた夜着を、お互いハッキリ視認できています。彼女の前には車椅子に備え付けのタブレット端末がありますよ。

『私はくろゆき02。アキのみこさまの『いでんし』に白みこさまの『いんし』をいただいています。ココは白みこさまのユメのなか』

「夢? 黒雪……ちゃんは、私の事、知ってるのですか?」

『わたしはカコ見、ゆめみの偽巫女。『ゆめでかこ』をみるの。あ、ちょっとだけ未来も。だからいろいろ……白みこさまも『過去見』や『未来視』できるでしょ? おあいしたかったの。それに『ゆめわたり』や『いやし』も『おろし』も……いろんなコトができるんじゃないかって、おもうけ……ど……あれ? ちがう? かなぁ?』

「その、よく……わかりません」

 嬉しそうに勢い込んで話す彼女の言葉がよくわからなくて首を傾げたので、彼女の言葉の勢いが止まります。首を傾げて返してきた顔が、その黒髪を白に、そして瞳を赤くすれば私の子供の頃によく似ているのです。いえ、お母さんに似ているのかな? ともかくこんなに痩せてはいなかったけれど。

 その手足は細く、自力で立って歩くのはとってもきついのではないかと思います。でも彼女の目に宿るのは好奇心、私に対する関心と喜びで、とっても無邪気ですよ。でも私はそれに答えられる言葉が少なくって。黙ってしまった私に対して、戸惑ったようにしながらも、声をかけてくれます。

『と、とにかくアキのみこさまがきょおは一緒にいてあげてって……ことねちゃんは行くのをさいしょハンタイしたけど、こうやってキョウリョクしてくれて』

「ことねちゃん?」

『えっと、ことねちゃんのお歌はべつのヒトの夢につなげてくれるの。わたしだけでは『ゆめわたり』は、じゆうにはできなくって』

「で、アキの巫女様って、お母さんの事ですよね」

 彼女が頷きます。

「その、私のお母さん……たぶん、死んでしまってるんですけど」

『アキのみこさまは白みこさまとおんなじ『ほんとう』のみこさまですから。すこぉしだけ、キモチをのこしてたんじゃないかって……それで、こないだ『きょうの日』を宮様につたえてほしいって。わたしは白みこさまとその日にあうようにって』

「え? お母さんに! 私も会いたいです! 会えますか?」

 彼女は目の前の端末に触れると、すうっと明るくなりました。

『それは……わたしだけじゃムリなの。わたしはみたことのある『かことみらいの残像』なら、なんどもあくせすすれば、はっきりユメとして見ることはできるけど。決まった、だれかの夢にあくせすするのは、ことねちゃんがいないとムリなの』

 ごめんなさいっと言うと、さらさらと黒雪ちゃんの黒髪が揺れます。

 こうやって私の所に来れたのは、『ことねちゃん』って子のお陰で、それはお母さんの指示である事はわかりました。けど、宮様って、誰でしょう? あ、宵乃宮サン? あの篠生さんに似たヒト……疑問を口にする前に、黒雪ちゃんの口が言葉を紡ぎます。

『で、でもね! みたことある、むかしのコトならユメ、けっこう見られるの! アキのみこさまのむかしもあるよ。ほらみて』

 彼女の反応で自分が随分と沈んだ顔をしているのに気付きました。ああ、ちいさい子に心配をかけちゃいけないって思って顔を上げた時、彼女が持つ端末の画面に意識が吸い込まれていきます。



 それは過去。らしいのです。



 蝋燭の明かりだけが揺れるだけの暗い部屋。優しく透かれる髪が、何故か黒色で、目の前の鏡に映る私は幼稚園くらいの姿で戸惑いました。布団に座って髪を触られているのはとても心地がイイのですが、どことなく落ち着かない気分……なのは、私自身の心持ちではないような気がします。

「おかぁさま。ようねぇ様に会いたぃ? きょおも会わないって……それはわたちのせぃかなぁ?」

「そうではありませんよ、アキ様……葉子アレは私に似て頑固者だから」

 私の意志ではなく、鏡の私は勝手に動いて拙い言葉で尋ねます。すると後ろで髪を透いていた人が『私』をお母さんの(アキ)で呼びました。

 ああ、私、今、たぶん昔の『お母さん』になっています。黒雪ちゃんが見せてくれる過去に入り込んでしまったのだって、何となくわかります。

 この頃、私、夢をよく見ます。

 私の『夢』が、ただの夢ではなく人の過去や未来であるとわかったのは、この頃。賀川さんの小さい頃やいくつもある未来を視たから。あの時は上から眺めている感じでしたが、黒雪ちゃんが見せてくれているからか、今はお母さんの体中に入っている感じで見られていますよ。不思議な事ですが、本当にそうなのです。

 私は今、お母さんの『昔』を、過去を見ているのです。きっと、たぶん。黒雪ちゃんもそんな事、言っていたし。

「あと、おおねぇさまの赤ちゃんは……おんなの子で、つぎはおとこの子だと思ぅ……」

「アキ様……この屋敷ではあの二人の話はできるだけされません様」

「あ、ご、めんなしゃぃ」

 黒雪ちゃんよりももっと幼いお母さんは、私の知るお母さんじゃないけれど、体から発する色は私が覚えている同じ色だから、きっと間違いありません。

「その、おかぁさま、どうしてこんなふくを着るのぉ?」

「それはただ、宮様の趣味というか……夜は……その、とりあえず誰が来ても大丈夫な感じのこの服が良いのですよ。アキ様はお嫌いかもしれませんけど」

「ううん。すずしくて、ふわふわで、かあいい。それにこの時間は、おかぁさまがいてくれるじかんだから、きらいじゃなぃの。でも、その、宮様、きょおもくるの? こわい、から、……や、なの。たくさんのみこねぇさまをころしたのが、視えるの……こわいの、いつかいつか……たべられちゃう」

 幼いお母さんがそう言って震えると、『おかぁさま』と呼んでいた女性がぎゅっと抱きしめてくれました。

 ああ、お母さんがいつも私にしてくれたのと同じよう……

「もう少しだけ辛抱して下さい……きっと……」

 その時、誰かがこちらに向かってくる音が聞こえました。

「用意は済みましたか」

「……はい、これに。さぁ、ご挨拶を。アキ様」

「は、い。宮様、きてくださり、ありがとぅございましゅ」

 細い明りで照らされた男に人の顔は絵具とか筆とかを買っているお店の定員、篠生さんにそっくりでした。でも体から放つ色が違うから、彼が『宵乃宮』って人だってわかります。ああ、宮様って宵乃宮さんの事……今、顔にあるはずの火傷のような跡はなく、ただぞくりと心を冷やすような気配がして、お母さんが『怖い』と言っている理由がわかる気がしました。

 それも髪を梳いていた女性が立ちあがり、場を下がると、代わりに彼の腕へと抱き寄せられます。

「体はどうですか? 何か不自由はありませんか?」

「いいえ、みやさま」

「……アキの巫女は卵子を回収するだけではなく、できれば産駒にまでと思っているのですが。この頃の巫女は質も低く、更に体が弱く、長く持ちませんからねぇ」

 憂うように宵乃宮さんが言うと、側に居た女性がそっと告げます。

「少し前から考えていましたが……『祝福』の儀式をなさってはいかがでしょうか?」

「祝福? ですか?」

「はい、巫女は巫女ゆえに、いろんなモノに影響を受けやすく受け入れやすい半面、とても脆いのは承知でしょう。人の身にありながら神を宿し、自然と人間を取り持つ存在は貴重。故、巫女が生まれるとその誕生と長生を願って、自然と力の吹き溜まりのような場所が出来上がるのです。そこに連れて行けば、巫女の生存年数が格段に上がると、刀森の間には伝えられております。今でいう七五三の、三歳に行われていた『髪置の儀』は、巫女に対して行っていたソレが変化した物でしょう。巫女に行われていた祭儀の正式な名は残っていないのですが、キリスト教で言う『祝福』の方が言い得ているかと」

「ああ……どうせ『潰す』のだからと取りやめた祭儀『とりつぎ』ですね」

 思い当たる事があるのか、彼は頷きながら私、いえ、お母さんを更にきつく抱き寄せます。本当に僅かに、お母さんが『おかぁさま』と呼ぶ女性の色が揺らぎましたが、気付いたのは私だけだったようです。

「確かに巫女様達は女になり、気持ちが男に傾く年となれば子をもうけ、人柱にするだけ……それ故、長生は必要なく、失われた祭儀。しかしあの祭儀に使われる薬は『おろし』の力を高め、祝福は体を強くする効力が認められる、かと」

「で、それはすぐにできるのですか?」

「月のモノを迎えている方が効果が上がるようですが、早くしなければアキ様の体力が」

「では、早急に準備をするとイイですよ」

「了解いたしました……貴方の為に遂げましょう」

「…………それは本心ですか」

「この私を疑いますか。夫も子も、貴方の為に捨てた私を……」

 その時、視界が暗くなりました。それはお母さんが目を閉じたから。大人の二人はお母さんが寝たのだろうと思ったのか、声を潜ませながら会話を続けます。

「それはどこで?」

「水神様の源泉がある所、うろなと呼ばれる場所にある北の森です」

「あそこ、ですか」

「はい。その『祝福ぎしき』には祭儀の薬と、かぐつち様とくらみづは様の力が要ります。刀を……いえ、『玉』だけでもお貸し願えますか? 祭儀の場には刀森の女と巫女様のみしか近づかないのが習わしゆえ……」

 説明している声が遠くなり、次に目を開くととても明るい場所に居ました。



lllllllllllll

URONA・あ・らかると』(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

手袋ちゃん



『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


『黒雪姫』


『言音』


小藍様より


お借りいたしました。


問題があればお知らせください。

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