再度振り返りです【ユキ】
ユキ目線で。
お正月少し前から。
二日の明け方前の感じです。
先月末は、クリスマスにお墓参り、イロイロありました。
何かこの所、振り返ってばっかりですが、何かと忘れていそうなので。まぁ、そう言う感じです。
で、ですね。
イルミネーション見た後に、宵乃宮さんがやってきたのには凄くびっくりしました。篠生さんそっくりすぎて。顔に火傷のような跡があるし、回りの色も違うので、べつのヒトだとはわかるのですが、賀川さんはわからなかったみたい。刀を振り回すので、凄く危ない人だなって思います。私の事、娘って呼ぶし。
だいたい本物の刀を振り回すって、時代劇のようで現実味がないだけに、それ刺さったら人は死ぬのですよって言いたくなります。
あの時に振り回した柊がスパッと切れていて、後から危ないなぁって思ったのですが、賀川さんに何もなくってよかったのです。
お墓参りでは葉子さんが攫われたり、その後に高馬さんもひどく疲れている影だけが帰って来たりしていました。高馬さん、うろなに戻っていなくて、その分はカトリーヌ様が守りを固めていてくれるらしくて、神父服の人をチラチラとお庭に見ます。に、さん……えっと、カトリーヌ様を合わせて五人ほど交代で。
そうそう、それから薔薇色の妖精さんが来たのですよ。昔の巫女様の伝言? みたいなのを持ってきてくれて、そのお陰かいつも以上に『色』が見えるようになりました。だから神父様達は服の見た目は変わらないのですが、皆の纏う色が違うので、遠目でも見分けがはっきりつくのですよ。妖精のイルさんは賀川さんとお知り合いなのだそうですけど、何だか間柄が不思議でした。
それから八雲先生、足を怪我したそうです。寿々樹さんは料理を手伝ったりしてました。何も言わないのですが、きっと私に関連しているのではないかと思います、……その足の怪我。
更に一緒に来ていたアリスさんの目は賀川さんを追っていて、ちょっと微妙な気持ちになりました。
そんな中、今日は元旦。
朝は手袋ちゃんたちが来てくれて、美味しいアイスを食べ、存分に手袋ちゃんを抱っこして楽しみました。色々あってもみんな笑って年を越せた事に感謝してます。
とっても幸せなのです。
けれど。
現状を見ると、私がうろなに居たいって思うのはとってもわがままなんだって思います。みんなを振り回しているって。
更にタカおじさまや賀川さんの倒れる幻影を見て憂鬱になります。話をした方がイイのかな? って思いながらも、タカおじさまに止められます。自分が気を付ければいいって、それはそうかもしれませんが。
「誰かに言っておいた方がイイでしょうか」
賀川さんが倒れるのも見えましたし。
そんな事を考えている間にもタカおじさまはまた修理に呼ばれて外出して行きましたよ。
私は手袋ちゃんを見送ってから、みんなで食事をするスペースに行くと、賀川さんがじーっと机の上に置いた小さなチップを眺めていました。
「どうかしたのです? 賀川さ……アキさ、ん」
「ああ、雪姫」
賀川さんの事、アキさんって呼ぶのはまだ慣れなくって照れます。何とか言葉を繋いで何事か聞きます。
「それは?」
「ああ、ヤツにもらったんだ」
「え?」
「うん、あいつ。……は」
「……赤薔薇の妖精さん?」
「いや、アレは妖精じゃないんだけど。ヤツは……」
結構前からの知り合いのように見えるのですが、何故か名前が出てこない様子。会った時にも『また忘れたの』って、普通に言われてましたよね。だから私が答えてあげます。
「イルさん、でしたよね」
「ああ、そう、イル。何でか知らないけど奴の名前は……すぐ忘れるんだ」
恥しそうに口元に握った拳を当てて、自分自身に苦笑しています。きっと忘れるには理由があるんだって思います。私にはどうしてだかわかりませんが。意識してみると人と人を結ぶ糸みたいなのが見えるようになっていて、その一本が二人を関わらせている事は間違いなくって。
そうみると賀川さんと私の間にも確かに見えるのです。でも賀川さんと彼を結ぶ糸とは色が違います。彼らを結ぶ糸はイルさんの髪と目の色と同じ、薔薇色。軽やかな絹糸。とても細いけど強く結び合っています。
良い人生を歩めば、賀川さんの最期を看取る人だから。
けれど賀川さんと私を結ぶのは糸と言うより、鎖? 重い鈍色に凍てつき、傷ついた鎖。
……あんまり見ていると賀川さんが怪訝そうにこちらを見返してきました。私を思いやってくれるその気配に、若干、鎖は光ったかに見えます。あったかい、何かの湯気みたいな幸せ。
「疲れてる? 雪姫。今日は軍手くんと楽しそうにしていたけど」
「手袋ちゃんと寝てましたから、大丈夫です。今夜は長めに作業が出来そうなくらい、元気です。で、どうしたのですか?」
机からチップを取ってから、
「うん。内容、見なきゃいけないんだけど、何だか嫌な感じがして」
別に嫌な感じはしないんですが、重い。確かに見るには一瞬躊躇する感じです。
「じゃあ一緒に見ます?」
私がそう聞くと、賀川さんは顔を顰めてから、目を逸らします。
「ヤツが持ってきた物だから……俺だけで見るよ。ああ、心配しないで、雪姫」
今からお風呂に入って寝る前に見るよって言って賀川さんは行ってしまいます。
視えた幻影の件、話せなかったです。
少なめですがちゃんとご飯食べて、私もお風呂に入って。今日はけっこう元気なので、絵を描きます。図案をクロッキー帳に落とし込みながら、図鑑を見たり、パソコンで調べものもしたりしました。絵具も出して、結構遅くなってきたなって思った時、懐かしい声がした気がしました。
「お、お母さん???」
立ち上がってその声を辿りたかったのですが、襲ってきたのは急激な眠気でした。お母さんといた時、こういうことよくあったなぁって思いながら、カーディガンを脱いで、電気を消します。床に倒れそうになるくらい眠いので、何とかベッドに辿り付いて、パソコンの電源下げ忘れたまま眠りに落ちて行きます。
「賀川さん、見られたでしょうか……」
そう考えながら黒軍手君を握った所で布団に包まる間もなく眠りに落ちたのでした。
llllllllllllll
『URONA・あ・らかると』(とにあ様)
http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/
手袋ちゃん(隆維君、涼維君)
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』(小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
赤薔薇の妖精さん
『以下1名:悪役キャラ提供企画より』
『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。
問題があればお知らせください。
次回は既に更新していた話【第502部分 悪夢中です】(賀川)を編集。
投稿します。
時系列の問題です。
ご了承ください。




