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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
30日補足

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30日補足6【悪役企画】

具体的には書いていませんが、下なお話になっていますので、お嫌いな方はお気をつけください。

 ココは一流企業と称される外資系会社ゴールドメンクラウドの持ち物して登記された建物の中。

 警備兵達が寝床として用意された一角を男は歩いて行く。通常の社員が知らぬそこの警備主任、それが彼の役職だった。警備程度の仕事であれば二人以上の雑魚寝部屋が普通だが、主任と言う役付であるこの男には一人部屋が割り当てられていた。

 彼の名は粟屋 浩一。

 彼は賀川と死体用の焼却炉で共に燃やされそうになった男だ。その後、堕天使リズの手で高所より突き落とされたが、柵に引っかかって、植え込みにうまく落ちたお陰で何とか生き延びた。その後、証言する者が居ないのを良い事に、有事の際に傷ついた仲間を助け誘導しただとか、倒壊する建物の中で逃げ道を作る為に消火活動に全力を尽くしただとか、口先だけの武勇伝を語った。

 それが上手い事まかり通って、主任となり、隊員補充や召致、他にも新人教育を任された。そのお陰で給金や待遇がよくなり、死にかけた事を忘れて、下の者に仕事を押し付けては美味しいトコだけを味わっている。

 一人用に与えられた部屋は広くもなくホテルのシングル程度ではあったが、今までの使い走り待遇とは雲泥の差だった。暗い室内に入ると今日はベッドメイクを頼んでいなかったので、多少散らかっていたが、小さな冷蔵庫には冷たいビールが冷えて彼を待っていた。

「さぁ……てと。今日はどれを見るかな……まずはやっぱ、駆け付け一本、撫子さんかなぁ」

 電気は付けず、ビールを片手にパソコンを立ち上げると靴と靴下を脱ぎ、風呂にお湯を張り始める。操作されたパソコンは動画を流し始める。

 そこにはスタイルの良い、髪がサラサラと美しい女性が映っていた。日本人形のように前髪はまっすぐ切られていたが、幼くは見えない。むしろ若い女性の艶やかさが漂う。彼女は薄暗い部屋でもよく映える赤いヒールを脱ぐ。紺のスーツに、嫌らしさも厚ぼったさもない絶妙な長さのタイトスカート、足が綺麗に見えるストッキング。

 彼女は慎ましやかで控えめな雰囲気を漂わせていたが、ゆっくりと服を脱ぎ、美しい裸体を晒した。彼女はベッドで待ち構えていた男に招かれると、近づいて行く。しかしベッドに体を預けようとした瞬間、その動きを止めた。

「撫子、全てを差し出すんだ。お前は誰のモノだ?」

「か? わたしは……そ、の……なぎ、まなぎ様のものです」

 一瞬考え込むような間があったが、とろりと蕩けるような甘い笑みで幸せそうに目の前の男の名を口にし、微笑む女の名は撫子だった。二人は体を重ねるのを、粟屋は食い入るように映像を眺める。

「惜しいなぁ……偉くなるのがちょっと前だったら抱けたかもしれないのになぁ。死んじまうなんて、もったいねぇ~死ぬ前にヤらせろっての」

 撫子は最後の頃には組織の中核となり、まなぎに子飼いとされた。しかしその前に娼婦のように男達に扱われる時期があった。その頃はまだ落ちこぼれの一警備兵だった粟屋に、一夜を楽しむ権利は回ってこなかった。

 娯楽が多いとは言えないこの建物内で、粟屋の楽しみは盗撮したビデオをひっそりと眺める事だ。女性は組織内に少なかったが、廊下や風呂場、トイレ、又その恋人がいる男の部屋へ警備を理由に侵入し、カメラを仕掛けた。通常監視用のカメラ撮影位置は把握しており、誰に見つかる事無くその作業を終えていた。なけなしの金で買ったカメラは普通の電波を使っていない、特殊な力でもそうそう見つけられない極上の品。

「っ、ぁぁ……海斗兄さ……」

「その名は言うな。忘れたはずだ、もう。さぁじわじわと消してあげよう。それでも抵抗するんだろう。撫子、その苦悩の色が美しい」

 手首を押さえつけ、無理矢理に自分を激しく押し付ける男に、撫子が耐えられなくなり一段と高い声を上げる。男を含んだまま気を失う女にまなぎは静かに囁く。

「正体のない(死んだ)男に、焼き焦がれるような想いは、君を壊してしまう。大丈夫だ、私が少しずつ全てを消してあげるから……もう少し、もう少しで楽になるから……」

 二人の睦言に粟屋はくぅ~っと悔しげに天井を見上げる。気を失って更に尚、この後もしたい放題に撫子を嬲るまなぎの様に、自分との差を感じていた。

 粟屋には一見合意に見えるこの繋がりが、まなぎの強制であり、撫子がそれを苦に死を選んだ事など知りはしなかった。いや、逆にそういう『設定』を知れば、よりイヤらしい目でその映像を眺めていたかもしれない。

「死んじまってもイイ女だなぁ~っかし、どこかにイイ女、転がってね~かなぁ、おい。お、奈保さん帰ってきてんのかよ、シャワー室っと……けっ、紫雨かよ。ちびィのには興味ねぇ~この頃は撮れ高、低ぃなぁ」

 仕事中に撮りためられていたビデオをざっと流し見ていると風呂にお湯を張り終わる。蛇口を閉めている時に、ボディシャンプーが切れているのを思い出し、粟屋は舌を打った。

「ま、お楽しみはまた後で。どれを今夜のオカズにすっかな~」

 ついでに箱ティッシュの中身が切れてはいない事を確認して、備品補充庫のある階へ向かう。廊下や階段を遠回りぎみに歩いて移動したのは、いくつか仕掛けてあるカメラが見つかったり不具合を起こしていないか確認するためだった。

 いくつか階段と廊下を抜けた所で、小さいが言い争うような声が聞こえた。

「んんん? アレは……」

 人目に付きにくい場所に居たのは、先ほどビデオに映っていた男まなぎ。そして宵乃宮付の世話担当である薫だった。

「離しなさい。一体私に何をしろと……さっきもどうしてっ、あんな布を……」

「君はもう私から逃れられない。何故なら『敵意』があるからだ」

「わ、私に何かしたら、宵乃宮様が黙ってないっ……」

「その忠誠心が、私への敵意となる」

 まなぎは人を操作する事を得意とし、中でも自分への『敵意』を示す者を操る事が出来る。それが強ければ強い程、それが容易だった。薫はまなぎの事を前々から良く思っていなかった。彼女はまなぎが撫子を弄び、操っているのを薄々知っていたからである。顔見知り程度の撫子を助けようと思った事はなかったが、薫は宵乃宮への忠誠が厚い為、こちらに被害がないか警戒していた。

 その警戒が『敵意』としてまなぎに向けられ、それを起点に彼は彼女の心を絡め取る。

「や、めなさい」

「諦めるといい。既に私と何度か寝てるのだが、ねぇ」

「なん……」

「その顔はイイな、私の撫子には及ばないが。女と言うのはそういうトコを穢すのが手っ取り早い。宵乃宮の側に居るキミを手に入れる事は色々と都合がいいかと思ってねぇ」

 びくりと体が跳ねた後、くったりと薫の力が抜け、まなぎに寄り添った。その後は薫の抵抗はなくなり、長い年月を共に過ごす恋人のように二人は歩き始める。それを粟屋は息を詰めて見送る。そしてその気配が消えた途端、自分の部屋まで素早く走った。自分がどうやってそこまで素早く移動できたかわからぬほど、俊敏に。

「は~は~は~……撫子さんが死んでそうも経たないっていうのに、よ。モテる男は違う、ってか?」

 まなぎの力までは良く知らない粟屋はそう嘯き、息を荒げながらパソコンのデータを検分する。

 撫子こいびとが死んで、すぐに相手が居るとは思わずにまなぎの部屋の映像はチェックしていなかったのだ。粟屋が見ていないうちに、薫がその部屋でシャワーを浴び、薫とまなぎが絡み合う場面が既にいくつも撮影されていた。側に置いて放置していたビールを喉に流し込む。

「かぁ~っ! こりゃあ、暫く楽しめそうだなぁ~そろそろ、お、来た来た……」

 粟屋の予感は当たっていた。彼が急いだのは、去った二人が今から『始める』のではないかと思ったからだ。録画もしてはいるが、生で見れると言うのは刺激的だった。

「おおおっ。ばっちり見えっなぁ……撫子さんより激し……うおっ」

 靴だけつっかけていた粟屋はソレを放り投げるようにして、ベッドに座るとティッシュをケースごと手繰り寄せる。眼は画面にくぎ付けで、背後など確認していなかった。

「すっごいねぇ? 楽しそうって思わない☆」

「ああ、俺も混じりたいトコだぜ」

「なら、こっちはこっちでヤろうよ☆」

「そりゃ…………ぇ?」

 興奮して、己と戯れていた粟屋は問いかけに自然に答えを返しかけ、気付く。長い雑居部屋生活を卒業して、この部屋は『一人』であるはずだという事実に。

 かけられたのは可愛らしい少年の声。画面の向こうで激しくもつれる声や音とは裏腹に、粟屋は後ろから首筋に突き付けられた切っ先に肝を冷やし、固まる。微かに回して得た視界に見えたのは薔薇色の髪をした年端もいかぬ『少年』だった。その手には鋭い切っ先が光る長槍が握られ、自分の首すじに触れていた。

「赤いトカゲの指輪っと……フィル君が探しているやつだよねぇ。それにしても面白いデータ持っているよね、キミ。で、この二人の名は?」

「か、薫……松葉 薫……と、まなぎ。早束 まなぎ……」

「じゃ、キミがさっき見ていた、こっちの映像の女は?」

「ななな、撫子。木曽 撫子……」

「ふぅん」

 粟屋は弱い者には強く、強い者には低頭平身で尽くしたように見せるタイプだ。薔薇色の少年は自分の身長の半分程度の『子供』で、至って軽い口調なのだから、普段なら喰ってかかっていたろう。しかし粟屋は切っ先が獰猛な獣の牙に見えて、何も言い返せない。ヘタに逆らえば殺される、と、本能的に関わってはならない人種だと察し、泣きそうな声で謝った。

「ごごごごごめんなさいっ。俺、ほ、本当は底辺の人間で、こんな組織なんて嫌なのに、ぬぬぬ抜けれなくて、その、もう悪い事は、もう……命だけは……」

「底辺の底辺だってコトは、パソコンの中身でわかるよ~☆ 大丈夫、命なんか要らないから。このビデオデータ全部と君の、で、許してあげる」

 そう言った後で、少年はにんやりと嗤い、

「ふふふ、三年、いや三年半ぶりかなぁ……たった三年半が長いなんて、久しぶりに感じたよ。天使の盾を辞めたのに、また厄介な連中と付き合ってるなんてね。ティらしいと言うか、巻き込まれ体質と言うか……まぁ、あの色気は僕だけの前にしとくとイイんだけど。とりあえずティに会いに行くなら手土産がいるからねぇ。あ、その前にウォーミングアップしなきゃ、ね☆」

「やややっやややっやや……なにするん……あああああああっ」

 この後、粟屋の身に何が起こったか、誰も知らない。彼はひっそりとこの組織を抜けたが、平和な人生を送る事はなかった。




 これは……この薔薇色の髪をした少年イルが、その映像を持って賀川の前を訪れ、ユキが彼を『薔薇の妖精さん』と呼ぶ、数時間前の出来事である。



キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

チェールーイーさん

レディフィルド君

llllllllll


『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

リズさん

llllllll


『以下4名:悪役キャラ提供企画より』


『粟屋浩一』

弥塚泉 様


『撫子』

YL様より


『まなぎ』

『松葉 薫(長女)』

とにあ様より



お借りいたしました。

問題があればお知らせください。


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