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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
30日補足

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30日補足4【悪役企画】

ひそひそと……

 

 まなぎは宵乃宮との話を終えると、チラと宵乃宮の側に立つ薫を見やりながら部屋を出た。彼は大股で目的地まで歩き始める。すると、どこからともなく長身に白いスーツを纏った男が現れた。ひょろりと揺れるピンク色の髪。

「どうでしたか?」

 ピンクのキリンと賀川が呼ぶ、薄気味悪い男。この男は殆どの『魔力を持つ者達』にとって、強烈すぎる花の香りを纏っている。香水の原液より濃いそれは臭気として知覚され、その者の行動力を奪ってしまう程だった。普通の人間にその匂いは嗅げないが、見ただけで気持ち悪いという印象を持たせる不気味な男。

 それ故、まなぎは彼を会議の場には連れて行かない。

 ちなみにまなぎは人を強制的に従わせる魔力を持っているが、田中の匂いは効力がなかった。それ故に彼を使役する事も、側に置く事も出来るのだった。

「概ね、予想通りだ。鴉古谷は今日の作戦中に教授が処分する。後、近々、言音を使って宵乃宮が動く。その際、偽巫女を連れて行くそうだ。で、紗々樹は?」

「黒雪の調整室に籠っていますよ」

「しばらくは復旧に時間がかかるな、黒雪は。田中、お前は適当に偽巫女を三十ほど選んで、儀式の部屋に連れて行くまでの用意を。その前にキャンパス代わりにしても構わん」

 田中はちろりと舌先を見せながら、本人的には優雅に頭を下げた。

「御意……」

 まなぎと田中はエレベーターで移動し、その先にある扉にカードと暗証番号を使って入っていく。網膜認証などいくつかの鍵で施錠された扉をいくつか抜けると、モニターが複数並んだ部屋があり、その画面の向こうでは少女達が各部屋で思い思い時間を過ごしていた。

 ノートに何かを書いている子がいれば、隣で何人かとトランプに興じている者もいる。くすくすと笑いながら囁き合っている者もいた。

 いずれも一つが六人から十人程度で構成された居室は、病室のようにベッドが並んでいて白く無機質だった。しかし娯楽として玩具や身だしなみの小物などが床頭台に乗せられ、チラチラと彩りも見られた。

 背の高さや年はまちまちだったが、着せられた飾り気のない服は皆一様で、黒い髪を長く伸ばしている。その顔立ちは似たり寄ったりで、全員が姉妹、同じ血を継いでいる事を想像させる作りだった。

 宵乃宮が『偽巫女』と呼び馴らしているこの生き物は、巫女の力を再現させようと作った複製人形クローン

 良く出来た者は『偽巫女』の中でも『黒雪姫』などと名前や番号が付けられるが、彼女達はソレに値しない『出来損ない』。

 ぱちん、と、慣れた手つきで田中は電源を上げる。それは彼女達の居室に繋がるマイク。

「選別の時間ですよぉ……」

 突然降ってきた田中の言葉に彼女達はスピーカーを見上げた。彼女らにはほとんど教育は行われておらず、選別と言う言葉の意味が分かる者は少なかった。それでも籠る意味にその顔が強張り、色を無くす。この部屋から出る事は何らかの形で死を意味すると、誰にも教わらずとも『巫女』の片鱗であるからか、いくつかになるとその事実を知ってしまう。

 悲鳴が起こる前に、まなぎがそっと田中の側に寄り、

「ここで不要な抵抗や騒乱、また自殺など試みた場合、同室の住人は全員まとめてその場で処分です。貴女達は家畜。喰われるのが運命さだめ。それでも少しでも長く生きたいなら己の運命に従いなさい。それが自分の為であり、皆の為です。田中、後は任せる」

 まなぎはマイクを切り、静かに命じるとその場を離れる。田中が仕事に入る事に気付いた数人が駆け付け、まなぎとすれ違いに部屋に入っていく。

 偽巫女達は難しい文言の意味は分からずとも今までの『結果』を誰彼となく伝えあって、雰囲気で察するのか、田中達に捕まえられるとその指示に従っている者が多かった。彼女らは田中の匂いを感じてはない様子だ。

 田中がうち一人を選ぶとテーブルの上に腹這いにさせて、複数人で囲って押さえつけた。田中は下着ごと着ていた服をナイフでさらりと切り割き、その背を空気に晒す。先割れた舌でその背をチロチロと舐めそうなほど近寄る。

「偽物でも乙女の柔肌は美しい。いやこの家畜場で育てられているからこそ。穢れも傷もなく、適温に育てられて。本当に素敵ですねぇ」

「っ……」

 いっそのこと舌で触れられた方が諦めもつくが、吐息がかかるだけで訪れない接触の瞬間が尚更に嫌悪を駆り立て、少女の表情を険しくさせる。ただ前にこの男に向かって、たった一言暴言を吐いた偽巫女が、そしてその部屋の者達が、どれだけ残忍な方法で殺されたか……それを知る故、少女は下手な声さえ上げられずただ唇を噛み締める。

「この手で天使にして差し上げます。どうせ死ぬにしても美しい方がいいでしょう? 綺麗に描いてあげますからね」

 少女の滑らかな肌にすぅっと彼の武骨なナイフが、驚くほど繊細に這う。痛みはないようだが粘着質な視線を浴びながら傷つけられていく事に少女は恐怖を覚え、それを振り払うようにぎゅっと目を閉じ、静かに涙を零す。薄皮一枚を田中は剥ぎ取っていくと、それに合わせて用意していた金や銀の箔を乗せて押していく。次第にそれは少女の背に畳まれた翼を描いて行った。

 田中の理解しがたい芸術の材料にされた偽巫女は悲鳴を飲み込む事しか出来なかった。それでも微かに上がる少女達の声を、まなぎは感慨もなく聞きながら扉を閉めて、網膜認証などを再び受けながら次々と扉を抜けて行く。

 そしてまなぎは静寂しかない真っ白な廊下を移動し、また別の部屋に入っていった。

「紗々樹、他の研究員は?」

「あら、早束。彼らには黒雪姫の見た座標の時間特定に当たらせてるわ。私もある程度落ち着いたら自分のラボに戻るつもり。で、あのジジと話は終わったの?」

 宵乃宮が居ないのを良い事に、紗々樹はそう言い放った。宵乃宮の見た目は二十歳半ばだが、何世紀にも渡って生きている。その体が遥か昔から同一の物を使っているかは定かではないし、面と向かって老人と呼ぶ者はいないが。

「宵乃宮の目的を確認して来ました。概ね、聞いていたモノと同じです」

「私の『T』を殺して、巫女は人柱に。でしょ? あのデモは見た? たぶんアレを落とす力を蓄える為に今まで動きを制限していたのね、あのジジ」

「この国を流星で沈めると明言していましたよ」

「白巫女を手に入れられれば、でしょう? 今はソコまで力はないんでしょうね。戦後から巫女やちょっと出来のいい偽巫女を切ってはため込んでたらしいわ。そこでやっとって辺りで秋姫って巫女に逃げられて、かぐつちまで奪われて、手痛い傷を負わされたり、TOKISADAの家電にネジまき散らされたのよ……今年のあのデモを行うの、結構、必死だったんじゃないかしら? どこかの国単位のバックアップを取るには必要な事だって、薫が進めた話に乗ったんでしょうけど」

 紗々樹は分析を交えながら、首を竦めた。

「戦後からの恨み……なんてもう何十年も経っているけど、長い時を生きるジジには一瞬でしょうし、私も時間が経ったからと言って、八雲ねぇさんが彼を診てくれなかったあの絶望を忘れやしないわ。私はこの国がどうなろうとイイのよ。寧ろ、それは清々するの。でも教授が京の辺りは残して欲しいと言っているけど」

「そうですか、教授らしいですね。で、どうですか? 黒雪は」

 紗々樹はベッドのように倒した車椅子上の黒雪姫にまた何かの薬品を流し込んでいた。バイタルは安定しているのか、バイザーが取られた黒雪姫の寝息は安らかだった。

「すぐには使えないと思うし、復帰しないでしょうね。けど、貴方から頼まれていた『時間』、こないだ黒雪が見てくれたわ」

 まなぎは紗々樹にデータを受け取った。

「そういえば、今度宵乃宮が動く日の用意、お手伝いしますから。偽巫女は田中に用意させてます」

「そう。じゃ、よろしく、早束」

「了解です。で、コレ、ココで見てもイイですか?」

「ええ。それは『6月24日』を過去見させ、彼女自身が動画化したものよ。音声は黒雪の話と、口に合わせて予測で付けたもの。宵乃宮には見せていないわ。彼は過去にあまり興味がないのよ」

 まなぎが開いたファイルには黒雪姫の作った3Ⅾ画像が入っており、そこにはパジャマ姿のユキが映っていた。



いずれこの30日裏側は30日終了辺りに移動させるかもしれません






『以下5名:悪役キャラ提供企画より』




『早束 まなぎ』

『松葉 薫(長女)』

とにあ様より




『田中』

さーしぇ様より


余波なごり教授』

アッキ様より


『鴉古谷』泉(姓を使用)

パッセロ様より


『黒雪姫』

『言音』

小藍様より


お借りいたしました。




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