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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
30日補足

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505/531

30日補足3【悪役企画】

振り返り中です。

 

 早束 まなぎは弄んだ女、木曽 撫子をいつの間にか気に入り、彼女の想い人である従兄弟の木曽 海斗を忘れさせようとした。しかし彼女は記憶の改竄を恐れ、咲く(しに)場所を求めて『真実』を口にすることで、死を選んだ。手を下したのは奇しくも彼女の海斗いとしいひとを殺した田中と言う男だった。

 まなぎは海斗の『形見』である赤いトカゲの指輪に触れる。

 撫子が欲しがったのは形見の指輪で、手に入れる為にまなぎに従い、超えてはいけない壁を超えた。そして弱みを握られ、退路を無くした彼女は彼の言いなりとなり……果ては大切な人の名前さえ思い出せなくなった彼女の手に、最後までソレが戻る事はなかった。

 撫子の遺体は誰の手も届かぬよう、白き髪と海色の瞳を持つ笛の少年レディフィルドのルーンで葬送され、肉体の一片、魂の欠片さえもその場に残さず、魂のあるべき所に送られた。

 それ故、まなぎは手下の田中が吐いた虚偽報告を信じ、看取った少年フィルが彼女を殺したと信じている。

 復讐を思い、静かに燃えるまなぎの目を見た宵乃宮は足を組み替えると、ふっと笑った。

「白巫女は『次代の巫女』を生産させる時間は生かしておきます。生きて連れて来られればですが。全てを私のモノにするわけではなく、四肢は折を見て協力者達に振り分けられます。で、貴方は『頭』が欲しくなりましたか?」

「……ええ、『意思こころ』が頭に支配されているというなら、私が欲するのはそれですね。苦痛を理解し、痛みを感受する精神部分を下さい」

 二人は今までは利害が一致した時や、時間が空いた時に協力し合うだけの仲だった。繋がりが頻回だったため、まなぎを宵乃宮の片腕と認識する者もいたが、二人の間では同盟を結んでいるだけでしかなかった。今回も丁度うろなという町にまなぎは自分の『先輩』を訪問する際、その空き時間に宵乃宮の手伝いをする程度で、報酬は金や情報であり、巫女の身体などではなかった。

 しかしまなぎが何気なく応援に行かせた女、撫子が『殺されて』しまった。優秀な彼女が命を落とすなど彼の思考になかった事。

 青天の霹靂、それは彼の記憶操作に『歪み』が生じ、彼女が正気に戻った為に起こった。歪みは戯れに少年が落とした何気ないキスによって橋がかかった為だった。撫子は正気に戻った一瞬、まなぎの偏愛に気付き、これ以上自分を上書きされたくないと抵抗し、命を落とした。

 彼女が死を選んだ原因は自分の愛を押し付けたせいだとは考えないまなぎは、復讐を誓っていた。

 まなぎは撫子を『殺した』少年、フィルをうろな町の海辺の周辺で見かける事は出来たが、彼の経歴や過去をどうやっても追えなかった。

 ただ少年と刀守の男、賀川は『友』だと、浜辺で戯れていた事などは周辺への聞き込みで知れた。それからフィル自身がこの国で関わっている海の家や浜辺のホテルに彼の『大切な者』がいるとわかった。しかし情報に何らかの操作が加わっており、あの区域の特殊性からまなぎは『その子』を奪うのは断念した。それは巫女……ユキを奪えば、必ず少年は現れるとまなぎは確信していたからでもある。

 フィル自身の大切な者を直接奪うより、賀川ともの『大切』を奪い踏みにじった時の方が、友情ゴッコに現をぬかすような輩には効果的だと考えてもいたから。

 巫女と賀川が絶望や死にありながら、フィルの大切な者がそこに居て、彼に幸せそうに笑いかける……幸せであれば幸せであるほど、失い、犠牲にした影は暗く濃く、少年を苛む……まなぎはそんな暗い算段をしていた。

 彼の表情でその辺りを察した宵乃宮は人の悪い笑みを浮かべて言う。

「わかっていますよ、まなぎ。巫女の身体はデータを取りたい者、他に髪や爪、血液など……生きている間に採取出来る物は、もうある程度の先約が居ますから、完全に貴方のモノとしてお譲りは出来ません。最後はこの刀で人柱として、力を絞りますので、貴方の手で殺す事も叶いません。ともかく色々に捨てる所はないのですが。今まで彼女の『意志くるしみ』を欲しがった者はいませんから、大丈夫ですよ」

 かちゃりと宵乃宮は携えた黒鞘の刀を鳴らす。

「本当はアキの巫女からあの娘は意志を持つ前に攫う予定が叶わなかったので、今回は産道を通したばかりの娘が欲しいのですよ、ある魂の箱としてね。それが終われば、まぁ生殖機能、極端な話、卵巣さえあれば代理母に托卵させられますから。彼女の胴体と頭は人柱として使う以外、次代を生む為の卵子の保存庫に過ぎません。白巫女自身の心が、最後の瞬間に悲しみにさえ満ちていれば特に問題はないんですよ。貴方への報酬は、捕獲した彼女を人柱にするまでの期間、彼女に絶望を与え続け、悲しみに満たす役……それでいいですか?」

 ユキを捕らえた折には無理矢理に子供を産ませた上、手足を切り取り、文字通り『バラ売り』にするという人権も存在も無視した所業を行うと何の苦もなく口にする。ソコに更なる苦痛と蹂躙を宵乃宮は約束し、彼は頷いた。

「……ええ。ただ後一つだけはっきりさせたい事があります」

 まなぎは淀んだ意志に染まる視線で宵乃宮を見やる。

「私は今までは宵乃宮様が最終的に『何を目的としているか』と言うのを聞いていないのです。それは一時的、短期の協力関係であったからです。しかしそれなりの長期、貴方に加担するなら一度確認しておきたいのですが。あの刀守の男を殺し、巫女を人柱にして力と直系の巫女を手に入れたいという所までは理解しました。ただ手に入れた『力』で何をするのです?」

 宵乃宮が欲するのは自分の我が儘を通すための『巫女』という、道具であり部品パーツ。人柱として切り殺し、絞り上げた力は目的を達する為の階段ステップ

 宵乃宮が薫に目線を走らせた。彼女は意図を察して照明を落とし、用意し始める。それを目の端で収めながら、宵乃宮はまなぎに質問を投げる。

「まなぎは雨とはどうやって降るか、ご存知ですか?」

「雨? 水が水蒸気となり、上空で氷となってその重さで降って来る……」

「そうです。宵乃宮の巫女はその個々によって、治癒や先見、過去見などを持っていますが。何より基本的に共通してできる事は『降雨』です。水神くらみずはに愛された巫女……昔は今以上に水は貴重でしたから。雨乞いが出来る事は我が宵乃宮の巫女である者の条件と言えるでしょう」

 宵乃宮がそこまで言った所で薫は映像を白い壁に大きく映し出す。空を流れる飛行物体を映しており、激しく光り輝いていた。それがどこかへ落ちて行く。

「コレは今年の二月半ばに行ったデモンストレーションです。日本でもちょっとしたニュースになったのですけれどもね」

「流星?」

「ええ。隕石ですよ。この刀で集めた巫女の力は、ただ大量の雨を降らせるだけではなく、『隕石』を降らせる事が可能です。あくまでもデモですから、今回、被害が出ない場所に落としましたが」

 落ちて行く光を見つめるまなぎを見やりながら、宵乃宮は刀を撫でた。

「まだ良質な巫女が揃っていた二十世紀初め、彼女達の力を軍事利用する計画が立ちましてね。巫女達から絞った『降雨』の力で、適当な隕石を凍らせ、地球に引き寄せ、それを某国に落としたのです」

「それでどうなったのです?」

「残念ながら途中、空中でバーストしてしまった上、狙いより反れてしまって。狙った首都ではなく、人里外れた場所に落ちてしまいました。けれど破壊力は五メガトンと記録されています。あれが狙い通りに落ちていたら、大戦の行方は変わっていたでしょうね……」

 一メガトンはTNT火薬、百万トンの爆発力に相当……その五倍……と、数字で言ってもわかりにくいが、五メガトンの『爆弾』が落ちた場所は間違いなく『壊滅』する。跡形もなく。これが日本の首都、他の主要都市に幾つか降れば、地形は変わり、その国の壊滅は間違いなかった。

「……大戦中に『二度目』は行われなかったのですか?」

 宵乃宮は不快そうに鼻を鳴らした。

「あの時点でかき集めれば、同規模の爆発を何度かは行えていた筈。だが奴らは大局を見誤り、己の親族や保身の為と、細かく私の力を切り売りさせた。それでも『国の為』と巫女を使い切るほどに務めた私を、奴らは終戦と共に切り捨てたのだ!」

 いつも整えている言葉が徐々に激しく乱れた。

「許さん。決してな。この国をこの世から消してやる。まだあの時の生き残りが居る内に。白巫女の力は強大だ。前以上の巨大流星を落とし、この国を消滅させてやる!」

 そこまで言い切ったところで、身を乗り出して激しくなっている事に気付いたのだろう。宵乃宮は息を吸い込むと、座席に深く腰掛け直して言葉を正し、

「白巫女の力は大きいですからね。この国を潰しても、まだ力は余ります。それも祝福の力が手に入れば、この場所に新たな地を一から築く事も出来ます。今回の流星デモンストレーションを見て、いくつかのオファーがあってですね。この国が無くなっても行先には困らない。ココにいる者の殆どは今のこの土地(日本)にはこだわっていないですから。貴方の会社も外資。この国が沈んだ所で、そこまで影響はないでしょう」

 落ち着きを取り戻した宵乃宮が手を差し伸べる。

「新しい『星』を築く、その力を我が手に……」

「私もこの地に未練はありません」

 まなぎは立ち上がって近付くと、静かにその手を握った。


いずれこの30日裏側は30日終了辺りに移動させるかもしれません




キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)


http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/


レディフィルドくん




『以下4名:悪役キャラ提供企画より』


『早束 まなぎ』


『松葉 薫(長女)』

とにあ様より


『田中』

さーしぇ様より


『木曽 撫子』

YL様より


お借りいたしました。


問題があればお知らせください。

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