お正月です(ユキ:水羽)
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うとうとと。
ユキが眠ってますが、彼女目線で
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それから……
こたつに入って皆と話したり、手袋ちゃん抱っこたりしていたら、いつの間にかうとうとしていました。
うとうと
うと……
私は手袋ちゃんを抱いたまま、くったりと寝てしまったのです。
あったか、モフモフは幸せなのです。その柔ぁらかさには勝てないのです。
りゅーい君達は起こさない様に手袋ちゃんを置いて、いつの間にか帰ってしまったのですが。私の意識は目覚めないまま、手袋ちゃんを抱っこしたまま、ふわふわと家の中を歩いて行きます。
「ユキ? どこに行くんだ? 外に出るなら誰かに言って……」
「みぃーつけた!」
お正月早々、急な修理に駆り出されていたタカおじ様が戻って来ていて、私に気付いて声をかけます。振り返る『私』が、彼女であると気付き、
「水羽さん……かよ、こないだも飯食ってたろ?」
「よーこのごはん、おいしいから。刀守の女はりょうり、じょーずなの。きょうはがんばって食べてたけど、みこだけにしょくじさせてると、もうヒンケツになりかねない量しかたべられてないの、わかってる?」
「そんなに悪いの、か」
「いまのみこにはしゅくふくがないし、きょういくもないから。なつの堕天使のかごももうキレたみたいだし」
「夏の? ああ、ベル嬢ちゃんか……んで、教育ってぇのは?」
「みたいものをみて、みたくないモノはみない。ひつようなものをうけいれ、うけいれたくないものを、うけいれない……とかね。わたしはみこのなかで、ずっとねむってるの。そのあいだ、むいしき、むちつじょ、むさべつに、いろんなものをみこはかんじてみてる。サイゲンなく、ずーぅっと」
「だから疲れ切って、夕方には具合が悪くなんのか?」
「そ。わたしはかみだからそれがふつー。でもみこは人間、だからこそのしゅくふく」
だけど『しゅくふく』なんて言い方は人間がつけたんだけどねぇと言っている水羽さんに、
「じゃあ、水羽さんが出て行ったらユキは治るって事か?」
「きょういくがないみこなんて、すぐにエジキになるけど? ね」
水羽さんは笑っていましたが、私は夏に何かが入ってきて酷い事をしたのを思い出して、少し気分が悪くなりました。彼女がいないとまたあんな事になるなら、居て貰わないと困ります。
「みこはいてほしいっていってくれてるからぁ~みこがとしをとったり、じだいへうつったり、他にはね~……みこがけがれないかぎりは。わたしもでていかないし。ああ、それにしてもきょうの御土産おいしかったぁ」
くすくすと笑うその姿を見て、私の前では決してした事がないほど、タカおじ様は眉間に皺を寄せて、
「ユキは、そうやっていつかお前さんになって……居なくなっちまうのか?」
きょとり、赤い瞳が三度ゆっくり瞬きます。
「みこは、にんげん。わたしはかみ。べつべつであって、それでいてひとつ。ただ、神のしたコトが、にんげんの法にふれると、追われるのはわたしじゃなく、みこねぇ」
「病院で……ベッドを真っ二つにして、ガラスを割ったのはおめぇってコトだよな」
「そんなコトもあったかなぁ? キタナイ手でしんせいな神酒をみこにそそぐから。おかげでみこに入れちゃったりしたけど~」
「……おめぇがユキの為にならないって感じたら、どうやっても追い出すからな」
「どうやっても? どうやって?」
「っ……どうやっても、だ」
また彼女は笑って、くるりと踊る様にタカおじ様に近寄り、
「たかやり、いっておくわぁ。みこのじんせいを左右するようなケツダン、みこのいしきがあるなら、ゆだねるくらいするわよ? 今までそうやってきたから。みらいをえらぶのはみこ、よ。そうえらぶように、クニに……いえ宵乃宮にしくまされていることは多かったけれど」
「水羽さんの力を使って何か大きなコトがあった時、その決断はユキのモノだって事か」
「他のモノに、そのイシをうばわれていないなら。あ! たまぁにいそうろうとちゅーしたり、イタズラはしてあげるけど」
「おめぇ~」
水羽さんはおどけたように近くの柱に身を寄せます。
「たかやり。ちゅーくらいイイじゃない? みこに合ってるの、いそうろうって。まじわるコトでみこは力がもらえるし。いずれふたりは『こどもを作る仲』になるんでしょ? しゅくふくがぶじすめば、だけど。こどもが今デキても、はぐくむ力はナイわ」
「ま、ま、まだユキは十七だぞ、いずれであって今じゃねぇ」
「あら、前みこはもう現みこをうんでたわ? あいしあってる者との『間』にこどもができたほうがいいでしょ? それはすてきで、じゅんすいなこと。獣ならともかく、あいしあわない者どうしのまじわりはキライよ……それはそれはひどい声でなくの……まるで呪詛のように。けがれたと感じたみこには居られない」
タカおじ様は眉を寄せて、
「ユキには祝福ってぇやつを必ず受けさせる。必ず、だ」
その時、タカおじ様が血で真っ赤に染まっているのが見えたのです。
零れる赤。
血の色……怖い程の……死の香り。
おかっぱの少女が笑うのです。
『たかちゃん。……わたしと、いこう』
と。
「ただ、水羽さんよ。ユキは……誰の子なんだ?」
「…………コレはみこ。ほんものの神子。きょうかいでは『きせき』っていうんだって」
するり、手袋ちゃんを抱いていた手の力が抜けます。手袋ちゃんはわかっていたかのように、すたんっと、床に降りました。
「ユキはこれからどうなるんだ?」
「たかやり。よゆうね。あなたはアナタのしんぱいすべき事があるんじゃない?」
「こないだは人がいたから聞けなかったが、やっぱりウチのアレが絡んでるのか」
「あんなとくちょうあるモノが、なにもかんけいなく別のものである方がふしぎじゃなぁい?」
私の瞳に光が当たり、赤く、赤く輝きます。
「『そうらん』を、みた事があるからこそ、前田のアトトリは秋姫の『玉』をふしぎとはおもわず、かのじょと兄の言うままに、つちみかどにたのんで『しゅうえん』をつくった……『そうし』と共に、ひとつに……」
「そうすればどうなる」
「『それを祀れば、神は永久にこの地の平穏を約束す……巫女はその象徴となり安寧を得る……人間同士のみこや御神体の奪い合いは関与する所ではないが……』」
へたん、っと廊下に座った冷たさで私はハッとしたのです。水羽さんとタカおじ様の会話は何となく聞こえていました。けど、急に眠りから覚めたようにボンヤリとしています。
「タカおじ様? その……お、おはようございますっ」
タカおじ様はその言葉を聞いて、眉を寄せた顔を綻ばせ、
「ユキ、おめぇは……今は夕方だぞ」
「あ、そうですよね。でも、その、おはようございますって感じで……」
「ははははっおめぇは……お前ぇはそれでイイ。そのままでいろよ、ユキ。今な、ちいっと水羽さんと話してたんだがよ……どうも難しくて要領を得ねぇな……風邪ひくぞ、ユキ」
手袋ちゃんが膝の上に乗ってきます。それを抱えると、タカおじ様は私を救い上げるように立たせてくれるのです。
「おめぇには祝福ってぇのを受けさせて、元気にしてやっから」
その時、またタカおじ様が血で真っ赤に染まっているのが見えたのです。
拡がる赤。
命の色……怖い程の……死の香り。
おかっぱの少女が笑うのです。
『たかちゃん。……わたし、いいこ?』
と。
さっきよりもより鮮明に。
「っ! ユキ? どうした? 何か見えるのか、おい」
「な、何でもない、です」
むやみに見たモノを語ってはいけないと思いました。伏せようとする私にタカおじ様はとても優しい眼差しを向け、
「どうした、言ってみろ? ユキ。何を聞いても驚きゃしねぇから」
「で、も……」
「あんまりよくねぇ内容みたいだな? そうやって心に溜めるのはよくねぇよ。言ってみな、オレはお前ぇの……親父なんだからよ?」
私は嬉しいような、けれど躊躇いながら言葉を選んで、
「……私が祝福を受けるというコトは、その、タカおじ様が傷つく事に繋がるって。そんな気がして」
するとタカおじ様は、急にガハハっと大きな声で笑って、
「予言ってか? 大丈夫だ、ユキ。何も心配なんかするんじゃねぇ。きっとうまく行く」
「でも、皆に言って色々……その……」
「言うんじゃねぇよ、そんなコトは。オレが気ぃつけりゃいい話だ。何、気にするなって。それより、ほれ、その前ぇにアキヒメさんを葬ってやらなきゃなんねぇな……」
抱っこしていた手袋ちゃんは私の掌を嘗め、体を摺り寄せて。まるで私を安心させようとしてくれているようでした。
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URONA・あ・らかると(とにあ様)
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隆維君、涼維君、手袋ちゃん
『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)
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ベル姉様お名前
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