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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
2014年1月1日

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お正月です(ユキ:来客中です)

lllllllllll

14年お正月!

やっとここまで…

ユキ視点です。

lllllllllllllll






 ゆきちゃーん、って、どこかで呼ぶ声がしたと思ったのです。だからふわふわと玄関口の方に行きます。工務店のお兄様達が何だか外で犬が鳴いてると出て行っています。

「あけましておめでとうございますー♪ 雪姫ねぇちゃんいますかー?」

 その中に紛れて聞こえてきた元気そうな声に、慌ててサンダルを引っ掛けながら出て行きます。

「ゆっきねぇちゃーん。あけおめーことよろーおみやげー」

「いらっしゃい。来てくれてうれしい、です。あけましておめでとうございます」

 来てくれたのは隆維りゅーい君です。旧水族館の小さい方の双子ちゃん。

 前に会ったのはお見舞いに行ったベッドの中だったから、こうやって戸外に立っているのを見るのは久しぶりな気がします。伸び盛りだからでしょうか、何だか大きくなった気もします。あ、涼維りょーい君も来ていますし、ワンちゃんの姿も見えますよ。

「隆維、初挨拶がソレってどうかと思う。あ。あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとうございます。鎮兄がおいしかったといってたジェラート店のジェラート詰め合わせです。溶けてないとイイナ」

 葉子さんはとっても和やかにりょーい君とりゅーい君の挨拶を受けています。りゅーい君が渡してくれる包みを笑いながら受け取っていますよ。

「寒い中暖かいところで食べる冷たいものは絶品だよねー」

 そう言うりゅーい君、ちょっと疲れているような気がしますが。葉子さんに渡したのとは別に持ってきた重そうな荷物は手にしたままです。

 皆でワイワイと家に上がると、彼はその荷物をそっとこたつの上に置いて、すす、っと押しだして私に結び目を指差します。

「あーけーてー」

 何でしょう?

 そう言えば『おみやげー』って言ってましたけれど。

 膝を付いて、そっと解くと、そこには!

「なーーー」

 ペロッと私の指を嘗め、膝に乗ってきたのは手袋ちゃんでした。猫ちゃんです、手袋を付けたかのように足が白い黒猫ちゃん、柔らかい毛を撫でるとひやりとした手触りがします。それもお腹が。

「てぶくろちゃん! え? おなか冷たいですよ?」

 手袋ちゃんと一緒に保冷ボックスが入っていたのです!

 私が何かを言う前に、

「てぶくろかわいそうじゃん!」

 りょーい君の声が上がります。

 二人が何か喋っている間も、手袋ちゃんは『撫でて』って言ってます。

「ん、なーーー♪」

 なのでナデナデなのです。『驚いてくれた? ユキちゃんだぁー撫でてもらうと、嬉しい』って。

「あれ? 手袋ちゃんの言葉が……はっきりわかる気が……オスの匂い? ここはお兄様方が多いから……え? 違うのですか?」

 私が首を傾げた時、りょーい君と話し終えたりゅーい君が私を呼びます。

「……雪姫ねぇちゃん」

「なぁに?」

「このジェラートね、スノープリンセスって言うんだって! ホントならお店に食べに行くほうがおいしいかなとも思ったんだけど、期間、限定だから。お持ち帰りしてみたんだー。雪姫ねぇちゃんの名前のジェラート」

 スノープリンセス……雪姫……

 それはリンゴの甘酸っぱい一番いい所を全部詰めたような美味しさでした。

 朝食も私にしては沢山食べていたのですが、ぺろりんと食べてしまいましたよ。

 いつかまたベル姉様がうろなに来たら一緒に行ってみたいです。あ、送ったら喜んでくれるでしょうか? 司先生も出産が終わって落ち着いたら食べに行けるでしょうか? でも乳製品だし、冷たいのはおっぱいの出が悪くなっちゃうかなぁ……なんて、こないだ先生のお部屋で見た育児本を思い出ます。他にもいろいろ考えながら、中に入っていた店名と電話番号が書いてある小さな紙を取っておきます。

 そんな事をしていたら家の電話が鳴ったのですよ。舞い込んだのは修理の依頼。タカおじ様がいそいそと用意を始めます。

「毎年の事ながら、正月早々ですね。おやっさん、俺が行きましょうか?」

「イイってコトよ。時間に重複が無きゃ、俺一人で回せる。それにまぁ客の方が困ってらぁな。今は全部電気で賄いやがる家が多いから、大元がやられると風呂も沸かせねぇは、鍵もかけれねぇは大変だ。暖房もねぇ寒い中待ってんだ、早く行かにゃ、な」

「どうしてもの時は声を……」

「ああ、ありがとな。他に何かあれば電話をくれや」

 そう言いながら、タカおじ様が出て行くのを葉子さんが追います。私もお見送りに手袋ちゃん抱っこしたままその背を追います。

「じゃ、葉子さん。出先からそのまま修理関係は出来るだけ俺が回ってくるかんな。若ぇのは元旦くれぇ、休ませてやりてぇのよ」

「わかりました、社長。この鞄にお弁当と。こっちには白湯を入れてますからね。後、くす……」

「わかってらぁな。葉子さんも無理すんじゃねぇ。後、ユキ、チビっちゃいお客さん達によろしくな」

 見送る葉子さんの声を遮りながら、タカおじ様はひらりと手を振って出かけて行きました。

「そう言えば葉子さんはタカおじ様を社長って呼んだり、タカさんって呼んだりしますよね」

「そうね。工務店関係の切り回しを頼まれる時には社長って呼ぶわね。普段はタカさん、ね。この頃、ユキさんを雪姫って呼び捨てしてるみたいね、賀川君。私達の前ではアレだけど。貴女は何て?」

「……アキさん、です」

「あら、それって……」

「お母さんの名前と一緒なんです……何だかその名を口にするのは恥ずかしいですけれど、お母さんが側に居る気がして……」

「その名を口にするのが辛いんじゃないとわかってちゃんと選んだのかはわからないけれど、貴女が温かくなるのなら、その名は正解なのでしょうね、きっと。ねこちゃん、貴方はユキさんが好き? 本当におとなしいのねぇ、何か食べる?」

 葉子さんは笑いながら、私に腕の中に居る手袋ちゃんの頭を撫でるのでした。

llllllllllllll


『URONA・あ・らかると』(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

隆維君、涼維君、手袋ちゃん


『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

ベル姉様お名前


"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

司先生お名前


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