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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月25日~1日まで

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子馬6(12月30日)

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目の前で自刃を選ばれた時

子馬目線です

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『いいかい? 高馬。お前の拳は強い。憎しみで力を使っちゃいけない。常に優しさを忘れない男になれよ? お前には鷹槍と同じ音になる『高』と言う字をもらったのは、アイツのように真っ直ぐで心高くあるようにだ。わかったな』

『うん! いちねんせいに、なるんだもん』



 最後の日、父さんにもらったその言葉が聞こえる気がした。

 目の前を塞ぐ土壁は、伯父悠馬の鉄壁を誇る土遁術。伯父貴の命令以外で内からも外からも壊す事などできない。だが俺は縛られた足を思い切り開いて鎖をぶち切り、比較的動きの良い左手を支えに右肩の脱臼と失った鎖骨の痛みをこらえて拳を固めた。

「死んだらダメだよ。やった事はちゃんと償わないといけないんだからっ」

 誰が作ったにせよ、壁を形作るのは一番の配下にある土、いつもはあんまり頼らない術ではあるけれど。壊せぬハズがない。そんな思いで踏み切って殴ると、爆音がして視界が開ける。中空で帯に首を引かれて地面に墜落しかけながらも、ナイフを自身の胸につきたてようとする鴉古谷が見えた。だが手を伸ばそうにも砕けた壁がまだ落ち切らず進行を邪魔する。

「お願いだ、頼む! 道を作ってくれ」

 それ故、先ほど死にそうになりながら契約したばかりの水の精に頼み、それらを水圧で中空分解させた。

「うおおおおおおおおっ!」

 残った土壁を砕きながら開けた道に突っ込む間にも、その胸に刺さりそうなナイフの切っ先。両手でがっちり握った柄に手を置く場所は見つけられなくて、その体を傷つけようとする刃の部分を握りこんで防御し、手首に手刀を落として緩ませ、無理矢理取り上げた。

 更に体格差にモノを言わせ、その腕を捻り上げて揺さぶる様に抵抗を奪って、鴉古谷を地面に押さえつける。

「確保ぉっ!」

 俺の言葉を聞いた伯父や二課の仲間が飛ぶようにやってきて、俺を押しのけるように鴉古谷に手錠をかけた。周りに倒れた一課の面々も同じく手錠に繋がれる。もともと俺の雷撃で無力化されていた上、鴉古谷が全ての責を負って死を選ぼうとしていたのを目にしたせいか、一課の抵抗は薄かった。

 舌を噛み切らない様に布を詰め込まれ、言葉を出せない鴉古谷だったが、曲がったバタフライナイフの刃を握って血を流している俺を見ると、

『……馬鹿だな、お前』

 っと、呆れるように心の声で囁いて来るのを聞いた。

『だって鴉古谷さん、優しいよね』

『馬鹿の上にアホもつくのか……』

『鴉古谷さんは確かに利権は持って行ってたけれど、皆が生きやすいようにしてたんだよね。法や決まりを破る、やり方は間違っていると俺は思うけれど』

『アマちゃんだな、規則に縛られては何も進まない』

『でも規則は規則、守らないとね。鴉古谷さん、死んじゃダメだよ……罪を償ってきて……』

 それを聞いた鴉古谷は吐き捨てるように鼻で笑ったが、

『だって息子さん待ってるよ? 彼は責任もって俺が預かるから安心して? 宵乃宮の好きにはさせないから』

 そう言うと目を見開いて、こちらを見ていた。だが、その時間は一瞬。

「さぁ、こい」

 っと、引き立てられて行った。その後、俺は怖い程、美しい二課の女達三人に囲まれる。

「高馬様、まず手を見せて下さい」

「きゃあ! そ、そ、その腹部の怪我は何日前っ? ふやけてるからねっ、それに鎖骨がないじゃんっ。何で普通に体が動くの? ね、当主様、か、感染症って意味わかりますっ?」

「どんなに丈夫だからって、死なないわけじゃないんだよっ。陣から出る前にとりあえず応急止血っ」

 俺からナイフが奪われ、腹や手などに止血用の包帯が巻かれていく。

「い、医療部の姐様達を煩わせるほどじゃないよ。い、痛い痛ぃっ!」

 もう、とりあえず大丈夫。そんな思いから気が抜けて座り込む。

「当主様が冷水による低体温症になってるよぉ、末梢がこのままだと危ない」

「ともかく外へ……誰か……」

 医療に長けた女達が騒ぐ中、ムズっと太い手が俺を両足を掴んだ。

「この程度で騒ぐな! ここでの応急処置はそのくらいでイイ。医療部は付いて来い。ちっ、全く……世話の焼ける。後始末は任せたぞ」

「はい!」

 複数の返事が部屋に響く。

 それに頷く彼は俺の伯父に当たる、前当主、悠馬だった。俺よりさらにガタイが良く、とっても強面だ。伯父貴は軽々と足を引っ張って俺を引き上げると、そのまま肩に担いで、水責め部屋から出た。昔と扱いが同じで、俺、ホントに荷物のようだ。周りが担架をと言っているが、そんなモノ聞きはしない。

「俺も後始末を手伝わないと……それと鴉古谷には息子がいるんだ、彼も確保して……」

「もう保護してある。お前は猿轡が必要か? 己の体がどうなっているか考えろ。引きずられないだけマシと思え」

「はい」

 怒気を含んだ声に俺は沈黙する。そう言えば……しぼんだ風船みたいに力が出ない。

 少し前まで、俺はこの人を『鬼』と思っていた。母や父への暴言はもちろん、凄かった。俺を鍛えると称して何度死にかけたか。低能呼ばわりされるのなんて当たり前。

 そのかわりに有言実行、故に一族配下の信頼は厚い。現二課長、土御門 悠馬。彼はまだ現役バリバリなのだ。

 一族の反対を押し切って母と結婚した俺の父は、この人の弟。沿わぬ人間との間に生まれた俺が憎いのだと、憎いなら何故引き取って手元に置いたのか、わからぬまま彼に鍛えられた。

 だがある日一言『よう、耐えた。尚一層の精進を』そう言って当主の座を俺に譲ってくれた人。

「どうしてココがわかったんですか?」

 外に出ると建物は暗い山中にあった。今は二課や一課の車に照らし出され、明るかった。だがどう見ても近辺は寂れていて、すぐに割れる場所とは思えなかった。



lllllllllllll

長かったので一度切ります。


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』

『鴉古谷 雫』パッセロ様より

以下1人は、雫の家族として創作

『鴉古谷 泉』(兄)


問題あればお知らせください


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今日はオフ会!

参加者様各所よろしくお願いいたします。

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