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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
7月16日

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そして十六日の朝

 









 今日は朝から少し驚きました。

「……す、すみません! 余所見していたもので……!」

 いつもながらフワフワ歩いていたら、家の廊下でおっきなお兄様とぶつかってしまいました。

 見かけた事のないこの一際大きなお兄様、お名前は伏見弥彦さん。いや、そう言えばお祭り会場で、すっごく食べていたの、このお兄様じゃないかなぁ?

 この家のお兄様方は皆大きいのですが、すごーーーーく格段に大きいです。タカおじ様の『仲間』である後剣と言うお名前のオジサマの紹介で、今日工務店で働くそうです。

 おっきくて逞しい人材が大好きなタカおじ様は嬉しそうです。特別笑うわけではないんですけれど、直感で気に入ったという顔をしています。



 それに付いて来ていたのが妹さんの葵さん。

 八重歯の可愛い方で、京都弁かなぁ……特徴ある発音でおしゃべりします。

 タカおじ様は説明を済ませると、機材を積んだトラックの助手席に弥彦お兄様を座らせて、現場へと向かっていきます。

 ふふ、よっぽど気に入ったみたい。タカおじ様が隣に座らせるのはお気に入りの職人さんと決まっているのです。

 葵お姉様は腕を引き千切れんばかりに手を振ってます。とっても元気のいい人だなぁ……お兄様が大好きなのでしょうね。



「で、姉さん……」

「ユキ、でいいですよ。葵お姉様」

「おねえさま? な、な、何かそれは照れるなぁ、雪はん」

 調子狂うわーっと続けながらも、嬉しそうに笑ってます。でも何げなく差し出した挨拶の握手で、葵お姉様の表情がすうっと変わります。

「雪はん、何モンや? やっぱり変わった気配をしてはるよって」

「何の事でしょうか……」

「なんやか近いねんて。ウチらの住んどった『場所』に」

「ばしょ?」

「昔な、うちは兄貴と京都におってん。雪はん、そこに近いねん。でも人に場所を感じるってけったいな話やな」

 自分で言っていて意味が解らない、そんな感じでまた笑い出すと家の中に入ります。

「そう言えば、何で「賀川さん」がいるんや? あれ、宅配の兄ちゃんやん? ココと掛け持ちなん?」

「いいえ、ちょっと具合が悪いので、ココに療養に来ている感じ……でしょうか?」



 タカおじ様の自宅に居ついた賀川さんは十四日の昼から目覚めると、タダ飯はよくないと、門番をしたり、出かけるお兄様の靴の整理をしたり、家の中を始終チョロチョロしてます。

 タカおじ様は「もっと休め」と言って怒ってますが、へらっと笑って「わかりました」と言うのに、その矢先には庭に水撒きしたり、洗濯物干したり。それでいて全てを任せられている葉子さんの気にいる程度なので、昨日の夜には、

「たった二日しか見ていないけれど、本当に人へ仕えるのに慣れている子だわ。ある意味犬みたい。たまーに言葉を知らなくって驚くけど、良い旦那様になるわね」

 そう言ってうれしそうに笑っていました。

 確かに賀川さんって、こより知らなかったし、七夕に呪い……そんな変な事を言うよね。

 ただ本当に具合は悪いみたいで、沢山の錠剤を食事毎に飲んでます。

 それにタカおじ様、他のお兄様や葉子さんには、全く普通に接しているのですが、賀川さんは私が近寄ると何だか余所余所しいのです。



「何してはりますのん?」

 家に戻ると賀川さんが食事用の広い部屋でパソコンをしていました。非番のお兄様の私物です。そのお兄様は賀川さんの手元を見て感心しています。

 そのタイピングは滑らかで、綺麗です。節が立って男の人らしい大きな手。

 どうやらメールを送っているようです。

「貸して下さりありがとうございました」

「賀川君、英語できるんだー俺はパソコンはゲームばっかり」

「英語は嫌いですよ。ゲームはあんまりやった事ないんで。何が一番面白いですか」

「それなら今から一緒に狩りに行こうか。スマホ側から俺アクセスするから。賀川君、キャラ作りなよ。基本無料だから」

「病院行くので、三十分だけしか時間がなくて。登録しておくので今度遊んで下さい」

「じゃ、登録だけ。余ってる装備あげるから、今晩でも奥の雑魚部屋においでー部屋の若いのは皆でやってるから」

 画面をゲームに切り替え、楽しそうにしています。葵お姉様も知っていたゲームらしくしばし笑談をして、その場を離れます。



 折角来たので、家のお手伝いをしたいと言う葵お姉様を連れて、葉子さんを探します。

「ウチには療養には見えへんわ。元気そうやん。まあええけど。アレ、雪はんの彼氏サンなん?」

「ち、違います。どう見たら、そう見えますか?」

 んーっと考える葵姉様の表情が可愛らしいです。

「そやな、雪はんにだけ何か冷たい感じなんよ。だからワザと人前では距離を取ってはるのかと……その割に雪はんの行動をしっかり目で追ってはるし。付きおうてへんのやっても、賀川さん気があるんやろな」

「良く……わからないです」

 そんな見方もあるんだと私は思いながら、葉子さんに葵お姉様を引き合わせます。お手伝いなんかいいのよって言う葉子さんに、そうは行かないと言う葵お姉様。葉子さんは葵お姉様と買い物に行く事にしていました。

 それを見送ると、イラストの仕事をこなしに部屋に戻りました。




この後、夕飯で、弥彦さんの大食いに驚愕する工務店の者共でした。笑


綺羅ケンイチ様 『うろなの雪の里』より、伏見弥彦&葵、兄妹様を十六話にリンクするようお借りいたしました。

後藤剣蔵さんのあだ名もちらっと。


もし問題がありましたらお知らせください。


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