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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月30日

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487/531

符合中です(赤薔薇の妖精)

llllllllll

連続で出すつもりが一日あきました~

ユキ視点です。

lllllllllll






 賀川さんの昔の知人であり、カトリーヌ様の顔見知りでもあった薔薇の妖精さんのようなイルさん。彼は近寄ってきた時に、音ではなく何か違う方法で私に喋りかけてきました。それは白王さんが喋ってきた時と同じ方法でしょう。

『白うさぎさんは月姫の因子を宿した……白巫女さんだよね☆ 約束通りに伝言、持ってきたよ』

 月姫……彼のその言葉を聞いた途端に溢れて、視界を埋める光、聴覚に零れる声。

『ねぇ維留、時に縛られぬ、異郷の地の者よ。いつか私の欠片を持っている者にあったら伝えて。運命は自分で紡ぐもの、と』

 月姫さんの一言で紐解かれる過去。



 ずっとずっと昔にいた月姫さん……会った事のない大祖母様よりもずっと前、それは私と同じ白髪に赤い瞳をした女性で、それ以前から長く続く巫女の中でも際立って力を持っていたのです。

 その力による進言により土地を見守っていたものの、戦が深まって行った事。水が渇き、土地が痩せ……全ての責任を押し付けられて皆に穢され、愛する者を目の前で失いながらも、平和を願ってその身を滝に投じ……神がその願いを聞いた事で、死後に巫女としての立場は復権出来ました。

 しかし残りし一族は宵乃宮に支配され、人柱への道を歩んだのを……



『神を諌めるために作られた『創始の刀』、神との約束を破り諍いを巻き起こした『争乱の刀』、総てを収める『終焉の刀』。我が力を継ぎし巫女の元にて全ては一つになるでしょう。その時……』



「あれは……」

 教会で歌う少女だった頃のお母さん。

 身を守ろうとするのに、誰かの手で傷つけられる小さな賀川さん。

 他にも赤ん坊の私を抱えて森の家を出て行くお母さんの姿や、カトリーヌ様が私を見て微笑みながら血を流しているのやら……色々見えて。

 最後に襲うように脳裏を埋めたのは……二つの『風景』でした。

 現実に意識が戻った私に一番に視界へ入ったのは、ニコリと笑った薔薇の妖精のようなイルさん。イルさんはとっても長く生きているんだって、そう理解できました。私は咄嗟にイルさんに、

『か、賀川さんの事をよろしくお願いします』

 って、言って、カトリーヌ様と家に戻ります。

 そして私は母屋ではなく、離れの部屋に飛び込みました。

「ユキ君?」

 背後からカトリーヌ様の声がかかります。

「これ、イルさんと……たぶん賀川さんです」

 私は自分が描いた絵を見つめて呟きます。

 絵に描いたのはイルさんと同じ髪色をした少年に、車椅子の老人。

「とても遠い、未来……」

「……これが」

「はい。イルさんはカトリーヌ様以上に年を負わないようです」

 私はその絵に触れて呟きます。

「とても不確定ですが、これは未来。大きく二つあるうちの一つです」

「もう一つは?」

「それは……賀川さんが…………」

 これが未来とわかったと同時に、篠生さんに似た青年の腕の中で崩れ、真っ赤な血の海に沈む賀川さんの姿も感じました。

 どちらが本物の未来はまだ確定していないけれど。

 賀川さんの未来は大きく二つ。『若いうちに殺されて亡くなる』か、『長くを生き、最後はイルさんに車椅子を押されながら安らかに亡くなる』か……返事はしなかったけれど、カトリーヌ様には残りの一つは不吉な内容であった事はわかったのでしょう。

「……大丈夫ぅ?」

「はい、さっきはちょっと驚きましたけれど。今までは夢だって思っていたけれど、アレは未来だって。でも未来を見るなんて、普通じゃないですよね。本当は。けど見えるんです、わかるんです。本当に、です」

「うん、僕は自分がまぁ、ねぇ~信じるけれど。でもあんまり人前で言う事じゃない、と、いうのはわかるよねぇ? ユキ君」

 自分でも不思議ですが、呼吸をするように過去や未来を感じるのは普通であると思えるのです。でも賀川さんが前に戸惑って風呂場に入ってくるほど驚いていた事があったから、カトリーヌ様の言う事はよくわかるのです。

「はい」

 そう答えながらも、私は聞きたい事があるのです。

「あの、刀流さんとはどうなって、あんな事に」

「あんな事、って何かなぁ……何て言っても誤魔化せないね、いろいろ見えたの?」

「見えたんじゃなくって、あの時、私はそこに居合わせたんですよね? カトリーヌ様の血が額に落ちて、とても熱かったのを、思い出したのです」

「そ、っか」

 そう言って微かに笑います。

「あの頃、僕の同僚にね、一人の神父が居たんだよ。その名は鴉古谷……彼は公暗一課が送り込んでいた密偵。いや、当時一課は宵乃宮の資金を喰らっ……」

 その時、眩暈がして息苦しくなって、膝をついてしまいます。

「ユキ君!」

『何も驚く事はない、我が君よ。その巫女は目の粗いザル。祝福もなく、力が蓄えられぬ身。朝から外に出向き、食事もまともにせぬ上、力を行使するなら、失血死のように気が遠くなるのも道理』

「じゃぁ、補給を……」

『我が君!』

 姿は見えないけれど、白王さんのキッと制止を含んだ声が飛びます。

『我が君の力ではどんなに振り絞っても、その巫女には合わぬ』

「でも、ねぇ」

土御門こうまが居らぬ今、その手の敵に対応できるのは我が君だけ。神殿の薔薇も興味を持っておるにしても、あの者は気まぐれな小悪魔。アテにはなりますまい』

「アレはユキ君より賀川君に興味があるみたいだったよねぇ……」

『巫女のオモリはあの男の仕事』

 白王さん、カトリーヌ様とだと結構喋るんだなぁって思った時、

「雪姫、いる?」

 とんとんと扉が叩かれ、賀川さんの声が聞こえます。

 カトリーヌ様は私を抱えてベットまで連れると、先ほどの絵を裏返します。そして扉を開けると、頭に鳥を乗せた賀川さんが居ました。きょとりと首を傾げて、賀川さんを指差して振り返り、

「ねぇ、ユキ君。本っ当ぉに、この男でイイのぉ?」

「え?」

「こ、この男って……」

 私と賀川さんの反応を見て、ふぅっとため息をつき、

「さっき見回りをした時に、ついでに子馬君に連絡してるんだけど。繋いでくれないんだぁ。賀川君はユキ君が寝るまで側にいてあげて。疲れてるみたいだから。後から食べ物は運ぶよぉ」

 賀川さんが戸惑っているうちにカトリーヌ様に引っ張り込まれ、押し込まれました。頭の鳥さんは黒軍手君用の箱に飛んで行って、くるくると鳴いてソコを居場所と決めたみたい。

 賀川さんは椅子を引き寄せると、側に座って私の手を取ります。ああ、手を通して流れてくる熱量。無くなっていた何かが満たされていく感覚。今まで以上に何か色々、感じるようになっている自分が居ます。けれどそれが何の不思議もなく、私が月姫さんの血を引いた……つまり巫女であるからなのだと理由もなく飲み込めます。

 イルさんが時を超え、持ってきてくれた伝言は、私の中に前からあった何かを目覚めさせた……それがわかります。

「賀川さん……手が、あたたかくて、気持ちいいです」

「そう? 居れるだけ側にいるよ、雪姫。ねぇ……俺と二人と居る時はアキって呼んでくれる?」

「はい。あの賀……あ、アキさん、イルさんは?」

「帰って行ったよ。確か……神出鬼没っていうんだよなぁ。ああいうの。そう言えば、何だってヤツに『よろしくお願い』した?」

 私は後ろ向きになっている絵をちらりと見て、

「何でも……ないんです。そう言わなきゃかなって……あの妖精さんにはお世話になるのかなって、そう思っただけです」

 いつかあの絵のような穏やかに天へ旅立つ未来へ、賀川さんの命が繋がりますように。

 間違っても、篠生さんに似たあの男性に殺される未来が来ないように。

 未来は見られても、紡いでいくのは自分の手であり、足で……でも今、当座で出来るのは自分の体を休め、そうしながら彼の未来の無事を『祈る』事だけでした。


lllllllllllll


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』(小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

イルさん ドリーシャ(ラザ)


URONA・あ・らかると(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

るぅるぅの基本設定

(とにあ様宅るぅるぅとは別個体、風属性、白色成体(声のみ)です)


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

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