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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月28日

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466/531

過去見中です

lllllllll

ユキが垣間見る過去。

lllllllll







 カトリーヌ様が頭を撫でて下さっている時、黒髪の、片手の年もいかない少女が歌を歌っているのが『見えた』のです。いつも人が色に見えたり、炎や水に感じたりするのですが、この所、夢や普通に生活している間によく『何か』をはっきり見ます。こないだも賀川さんの何かを見て、言った事で慌てさせてしまったような気もしますし、とりあえず口には出さず、それを見たのです。現実の時間にすれば三秒くらいなのですけれど。体感的にはそれなりに長い時間ぼーっと見ている感じがする不思議な隙間。



 そこは高く十字架が掲げられた部屋。たぶん礼拝室で、ココは教会だと思います。その下で歌う少女の漆黒の髪、清楚で飾り気のない白いワンピースが愛らしくて。綺麗な黒の瞳はまっすぐ、奏でる声は驚くほど澄んでいて、空気をきれいな水色に染めているように私には感じられました。

 その少し離れた場所に二人の人物が居ました。

 一人は微かに今よりも若く見えるカトリーヌ様と、どこかで見た事があるような気配がする女性でした。

「これまで歴代の者達が幾人かは逃がす事が出来ましたが、それらは単発で終わってきました。そこで一計を案じ、正式な祝福を遂げさせるという理由で、ご神体の『核』を借り、儀式終了の時に奪ってここまで……どうか、どうか…………我が巫女をお守りくださいませ」

「貴女はこれからどうするのです? 本当の家族がいるのではないですか」

「夫は裏切りを密告されて、下の子が腹の中に居るうちに……我が二人の娘は曲がってしまった刀森の規則に沿わぬよう……捨てました。表面上は宵乃宮への裏切り者である夫の血を継いだ子は要らないと…………それでも未練で会いに行ってしまうのですけれど。もう上の一人は行方も知れませんし、残った子も施設を出る歳。もしも宵乃宮が追いかけても足がつく事もないでしょう」

「そうですか。……貴女の子らにも神からの恵みがありますように」

「ありがとうございます。私は出来るだけ、残った刀森や巫女を逃がすために動きますので。これにて。我が巫女をよろしくお願いいたします」

 女性はすっと頭を下げると、どこともなく姿を消してしまいます。歌っていた少女はそれに気付くときょろきょろとして、壇上を下りて、カトリーヌ様に駆け寄ってきます。

「神父さま? おかぁ様はどこでしょぉ?」

「アキ君。暫く君の事は教会が預かる事になったんだよ。準備が整えば迎えに来てくれて、また日本で生活できる日が来る……」

「アキ、今、見ちゃった……おかぁ様……死んじゃう……の。宮様が……こわい顔でおうちをみんな食べちゃうの…………その後、おかぁ様…………」

 おうちをみんな食べる、その言葉をおかしい気がしますが、同時に私は彼女が見ているモノを感じ見るのでわかります。顔が半分焼けた大きな人が、炎の中で暴れ狂い、逃げ惑う人が炎で燃えていく姿。それは恐ろしく、その建物も人をも食っていくようでした。

「おいで、アキ君」

「神父さま……」

「全ては神の御許でなされる事、私達ではどうにも抗えぬ事もあるけれど。それでも人間は努力する事で神にも負けぬ想いを通す事もできるんだよ。だから見送ってあげて」

「おかぁ様……本当の母様ではないの。けれど……」

「血の繋がりよりも濃いものはこの世の中にはたくさんあるんだよぉ。僕の両親も血の繋がりはないけれど、僕を本当の息子のように可愛がってくれるんだ」

「アキも……だから別れるのはイヤ…………」






 気付いたら……ベッドに寝かされていて、カトリーヌ様が私に唇を重ねていたのです。驚いたのですが、すぐに唇を離すと心配そうに私を覗き込む表情と顔色の悪さに何も言えなくて。

「目が覚めたねぇ。少し絵を描くのに集中しすぎたのかなぁ。急に倒れて。僕の力を補充したけど、相性がそんなによくないから……賀川君からもう少し奪っておけばよかったけど」

「力を……?」

「そう、口移しが一番早いから。でもキスに他意がないかと言えば…………嘘だねぇ」

「たい?」

「他意じゃなく、故意かなぁ」

「こい?」

「お魚だねぇ。鯉に鯛……」

「お? お魚ですか? 何だかよくわかりませんけれど、助けてもらってあり……」

「いいよ、職務だから。ただキスされたなんて言っちゃダメだからぁね? イラナイ誤解を招くから」

 頷くとまた髪を撫でてくれます。けれどももう少女の姿を見る事は出来ません。起きようとしたのですが、頭が重くて動けなくて、カトリーヌ様にベッドに戻されてしまいます。今は黒く見えるその瞳を見ながら、私はカトリーヌ様に聞きました。

「あれはお母さんだと思ったのです」

「あれ?」

「はい、カトリーヌ様は私の母が小さい頃からの知り合いだったのですか? 母は教会で育ったのですか?」

「何か……見たのだね」

 コクリと頷くと、見たモノを説明するように言われて。そのままを告げるとカトリーヌ様はそっと話してくれます。

「……それは初めてアキ君に会った日の事だと思うよ、一緒に居たのは筆頭だった刀森の女性でね……土御門おんまくんと結婚して、旧姓なんかを聞いたことがなかったから気付かなかったけど、彼女、葉子君の母親だったそうだねぇ」

「カトリーヌ様とお母さんは一体どんな関係だったのですか? 前も、その……閉じ込めたとか、小さな頃の私の事も知っている風だったので」

「刀森の女性に彼女を預かったのは僕だったんだけど、教会の指示で彼女は海外へ出て住んでいたのでね。会うことは稀で……彼女がどうしても日本に帰らねばならないと言い出して、極秘にこの町に戻ってきて、彼女が刀流君の側にあったのには驚いたよ……あの幼い日以上に美しくなっていてねぇ。眩しい程だったんだよぉ」

「ちゃんと話を……」

「今、君に必要なのは休養だよぉ? また今度の機会にすべてを……オヤスミ、我が巫女……」

「やくそく……」

 そう言うとカトリーヌ様はどちらともつかない表情で微笑んでくれて。その表情を見ながらゆっくり眠りに落ちたのでした。



llllllllll

更新遅くてすみません。

私は外に出るのが苦手なのですが、来月末まで、ほぼ週末にお出かけするそうです。

それらの予定+夏休みの為の平常業務も多く、執筆時間が取れないので、しばらく更新ペースが遅いです。

ご了承ください。

明日もお出かけでお泊りだそうです、私…


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