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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月27日

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460/531

解散中です(不幸中の幸いを)(司先生と)

lllllllll

そろそろ一次会は終わり。

lllllllll

 






『ねぇ稲荷山君、帰りながら妖怪探しに行くよ!』

『ええええっ? あ、芦屋、今日はもう遅いし、ストレートに帰れよっ。俺はくるみるくを送って……』

『くるみるくちゃんには、保護者が来てるよ~』

『ただいまー』

『ただいまー』

『我輩はまだココでの仕事をやっていくので、気を付けてだな……』

『ほら、大丈夫だって。じゃ、稲荷山君、久しぶりに行こうね』

『それなら俺も付き合おう、梨桜』

『えー、伊織兄さんはイイよ。吉祥寺副部長のお姉さんを、ちゃんと連れ帰らないとだよね?』

『睨むなぁ~ソレは俺のせいじゃないっ。ぜーーーーーーてぇっ、俺、不幸だっ』




 いろんな人の声が木霊するのを聞きながら、司先生は笑い、ちらっと後ろを見ます。



「しかし賀川の不審行動はいつか追及するとして、思ったよりヤツはうろな町に馴染んでいるんだな」

「ふしん?」

 賀川さんは結婚式の席順で同じテーブルだった鬼が島さんというとても大きな男性に引っ張られ、別のテーブルに座っています。真後ろではあるのですが、お酒が飲める方達が集まっている席ですよ。

「では……入口の混雑もハケたようだし、私達もそろそろ帰るか、渉。夜になるとお腹が少し張るからな」

「大丈夫ですか? 司先生」

「司さん、不快感とかあれば言ってください」

「いや。妊娠してからはコレがいつもの感じだから大丈夫だ。けれどもやはりお腹の中で赤ちゃん達も疲れるのだろう。ただ食べてすぐ横になるのも苦しいから、ゆっくり歩いて帰って、休んでやらないと。でも最後に頼んだのだけは食べて行こうな、雪姫」

「はい」

「じゃぁ、俺は残ってる皆に挨拶してきますので。ゆっくりどうぞ」

 渉先生の細やかな気遣いに、司先生と私はにっこり笑い合います。

 その時、私達の目の前には小さいけれど可愛らしいクレープが二皿並びました。

「こっちはクランベリー、こっちはブルーベリークレープ豆腐アイス添えアルね~大量に食べなければ太らないし、カロリーも低いし、妊婦でもクレープのおかげで冷えずに大丈夫アルね~」

 ここは頼んだものが大抵出てくるとかで。

 凄いですね、とってもたくさんの人がいて結構細かい指示も出てましたし、バリエーションに富んだメニューを頼んでいましたが、滞りなく運ばれてきたのですから。

 ウェイトレスは稲荷山君の側に居た女の子がチャイナに着替えてやってましたけれど、他にお店の人がいないのに、これだけ切り回せるってすごいと思うのです。

「店長さんって、凄いですね。味もイイですが、食べやすいようにとっても綺麗で細やかな気遣いがあって嬉しいです」

「そうだな、ちょっとした付け合せのパセリなんかも揚げて食べられるようになっていたり、隠し包丁も無駄なく入っていて、女性でも食べやすいな」

「先生も、お嬢さんも、褒めるのうまいアルね。じゃぁ、このクレープは個人で払うって言ってたケド、奢りアルよ。気に入ったらまた来てくれると嬉しいアル」

「え、そんなつもりでは」

「いやいや、オキャクサン増えるのは歓迎アルよ」

 そう言って店主さんはお盆をくるりとさせると、厨房に戻っていきました。

 二人でニコニコしながらデザートを食べます。それにしても今日はたくさん寝てきたので、あまり調子が悪くならなくてよかったです。

「……雪姫、ちらりと葉子さんから聞いているが、二月は何だか大変なようだな。お母さんも……」

「私もよくはわからないのです。お母さんも……亡くなってしまったようで。でもずっと何処かにいるような気がして……あんまり思ったほど寂しくはないのですが」

「そうか。でも『お別れ』するんだろう?」

「はい、どんとの時に母の残した服を空へ返そうと思います。だって、死に装束を纏える遺体はなくて……だとしたら。裸のままはとても恥ずかしいと思うので」

 そんな話をしてお店から出ました。

「賀川ぁ~……いいなっ……ユキが素直だからと無体をしたら、私が許さんからな」

「…………わ、わかっています」

「まぁまぁ、司さん。賀川君も悩んでいるみたいで、今も相談を受けて……」

「ほう……渉に? ……それは尚更、大丈夫か心配だな」

「ええっ! 俺ってソコの信用ない?」

「……出来ちゃっただし……それについては私も責任はあるが、まぁお前が学生の頃をお母上と義姉上からお聞きしてから、な」

「え……何言ったんだ……あの二人……」

「ふふふ……ともかく雪姫、何かあったら、いや、無くてもいいから遊びに来い。そろそろ家に居る事も多くなった、きっと喋り相手が欲しいくらいになるだからな。遠慮はするな」

「ありがとうございます、司先生」

 賀川さんは皆からお酒を勧められた様ですが、飲み過ぎにならないよう大変だったようです。歩き出した途端、待っていたかのように白い鳥が賀川さんの頭上に舞い降ります。

「だから、ドリーシャ。俺は木じゃないから」

 鳥と戯れる賀川さんと私の後ろ姿を見送ってくれる司先生に手を振ります。離れてその姿が見えなくなった時、私が知らない所で先生達がこんな会話をしていると知りませんでした。

「……とは、言っても、妊婦の私では、どうしても雪姫は遠慮するだろうな……」

 ふっと目を細め、息を吐く司先生。

「司さん……」

「あれだけ体調が悪い時でさえ、母を待つと言っていた雪姫が、だ。亡くなった事がわかって、程経たずなのに、あんな簡単に母の死を口にして、まったく涙も見せないとは。タカさんが心配しているはずだ」

「でも無理してるって感じがない所を見ると、まだその事実が胸に入り込んでないのかもしれませんね。居なくなってしばらく経ってるから、まだ……ただただ母親が出かけていて、まだ『お留守番』をしている気がしているのでしょう。タカさんトコに馴染んでいて、賀川君ともうまく行ってるみたいだけど……」

「賀川とのやり取りがうまく行っているかちょっと疑問だが、ともかく……かつて母親が居た事でユキはかなり満たされていたのだろう」

「それは母親側もじゃないですか? 全国逃げ回っていたようだし……一卵性親子って奴ですかね?」

「多分な。雪姫は家に帰れば絵を描きつつ、仕事帰りの母親を待って。帰った母親は、ない時間の中でもきっとよく雪姫の話を聞いてやるような方だったのだろう。だからこそ、父も友達もおらず、転校など繰り返してもスレずに、寂しさもさほど感じず居られたのだ。だが、今の雪姫は違った気がする……早く母親の死を受け止め、あの家や賀川が完全に拠り所となればいいが、賀川は人間的に未熟な感じがな……」

 私を心配してくれている二人の後ろを、店から出てきた玩具屋さんの高原さんが声をかけます。

「あの渉兄さん、すみません」

「何だ、直澄、会費に問題があったか? 俺は司さんと帰るけど、お前はまだ付き合うんだろう?」

「もう学生は卒業しているから、遅くまでいるのは見逃すが、絶対飲むなよ? 何を言ってもお前はまだ、未成年だからな。今は部活の剣道指導にも入ってもらっているんだ、悪評が立てば困るのは……」

「わかってますよ~来年までは我慢しますって。でも皆、盛り上がってますからね。徴収した会費で二次会いまはどうにかなります。三次会はわかりませんけど。で、ですね……彼女を見てちょっと思い出したんですが」

「彼女?」

 帰っていった私達の方向を見て高原さんが続けます。

「工務店のタカのおやっさんとこに、小学入学前の女の子が出入りしてんですよ……バイトさんの妹さんらしいんですけれど。こないだタカのおやっさんが連れていて」

「そりゃあ孫を育てる予行演習になるかもね、タカさん。双子を貸し出してもいいと思ったけど、ユキちゃんは賀川君と仲がいいし、関係上、籍入れるのも時間の問題かも」

 そう言って笑う渉先生に、司先生はギラリと睨みます。それに高原さんの反応も良くありません。どうも場違いな発言だったことに気付き、ゴホンと取り直すように咳をしてから、

「なんだ? その子がどうかしたか? 直澄」

「……その子、紫の雨って書いてシウちゃんって言って、来年一年生に上がるみたいなんですけど、倫子さんに調べてもらったら、教育委員で作られたうろな町の来年度の新入生名簿には載ってないんだそうで。でもタカのおやっさんには来年も働くような事を姉は言っているのに、紫雨ちゃんは『その頃までに仕事は終わらせる』っていうんですよ」

「で? そんなの、雇主にバイトが多少嘘を言って職を見つけるなんて普通だろ? もしかしたら載ってないのはタイミングかもしれないし」

「いや、渉。来月は新入生の一日体験があるから、引っ越しなんかであっても、申請があればすぐにでも載せているはずだ」

「あ、そうですね」

 直澄は眉を寄せた。

「ちゃんと来年就学できればいいけど、うろなで入学しないなら、あの子は何処の小学校に行くんですかね……それに紫の雨……首に大きなほくろがあったんですけど……どこかで……」

「小さい時に来てた客で、大きくなってわかんなくなったとか?」

「客じゃないんです……ネットで見た話が気になって……まぁ、タカのおやっさん所は今複雑だから、何か『その辺』に関わってなきゃいいなと……それから彼女自体も、まるで玩具なんか初めて見たって感じで、何だかモノ溢れる時代なのに、なんか……」

「つまり所在不明児童じゃなきゃイイってことだな……」

 その時、電話のベルが鳴ります。

「ああっ! 倫子さんだ……じゃ、店に戻りますね~」

 二十歳ほど年齢が違う女性からの電話に、高原さんは今までの心配はどこかに忘れたかのように電話を受けつつ、店に戻ります。

「こりゃ……その子を田中先生の気を向かせる小道具にしたかな?」

「まぁ何か機会があれば、私も声をかけてみよう」

「ですね。司さん、歩きで大丈夫ですか?」

「食べてすぐ寝るのも苦しすぎるから、ここからなら運動にいい距離だ。張りもこのくらいなら大丈夫」

「無理しないで下さいね、必要ならすぐタクシーを呼びますから」

「心配性だな、渉は」

 そうやって先生達は笑いながら帰宅したのでした。


lllllllllllll

『人間どもに不幸を!』(寺町 朱穂様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/

芦屋梨桜ちゃん 稲荷山君

中華料理のお店『クトゥルフ』

このお話は『人間どもに不幸を!』の最終話の終了後を、

妄想で構成しています。



『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生 司先生 高原直澄さん 田中倫子先生


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

ドリーシャ


『うろな町~僕らもここで暮らしてる~』(零崎虚識様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7914bq/

すべては親父を殴るために

http://book1.adouzi.eu.org/n5357bu/

鬼ヶ島厳蔵さん


その他、ちらちら雰囲気で~


『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


『紫雨』とにあ様より

『奈保』パッセロ様より


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

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