会話中です(不幸中の幸いを)(司先生と)
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中華料理のお店『クトゥルフ』にて。
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私の席は学生の方が多かったのですが、司先生と主に喋っていましたよ。司先生は妊娠中、お酒が飲めないから酒の席を避けたものの、学生さんにとって『見張り』になりすぎないようにと心を砕きつつ、見守るその姿はやはり素敵な先生だなと思いました。
「私も学校に行けば、先生の本当の生徒になれたかもしれないですね。ああ、でも私はうろなに来たのは高校に上がる年だったから、司先生の生徒にはなれなかったですね」
「ん? お前は私の中では大切な教え子……いや、大事な娘のように思っているぞ。あの森で会った時から……なんだ、寂しいのか?」
「いいえ、そんな事は……ないと……ただ……いえ、学校に行っていてもあまり変わった事はなかったでしょうけど……」
首を傾げて考えます。
目の前でクラスの話や、宿題や期末テストの内容、果ては学校の怪談なんて話もあってとても楽しかったのですが。現役で学校に居た時も、いつも私はそんな話を側で聞いているだけ。
長く一つの所に居た事がなく、髪は染めてコンタクトにしていれば容姿に驚かれる事はなかったのです。ただそれでも転校生珍しさに今までの話を聞いてくれる子もいました。けれど三日もすれば話す事もなくなり、次の学校にスムーズに入るために勉強は手を抜く暇もなく、絵を描いているうちに本当に居つく事無くすぐに移動してしまって。
「いつも学校では一人でしたし」
「転校から転校と続くと、教師の目も届きにくいからな」
「あ、別に不自由はなかったのです。でもお友達っていう人はあんまりいなかったですね……」
それでも今みたいに……何でしょう? 『疎外感』? のようなモノなんて感じた事はなかったのですが……
ベル姉様が帰って、リズちゃんもお仕事忙しそうで、皆に守ってもらって心苦しかったけれど、賀川さんが居てくれと言ってくれて。葉子さんのご飯は美味しいし、オジサマ達も職人のお兄様方もやさしくて、ちょっと体調は悪いけれど何も不自由はありません……おかしいですね?
「あ、この頃、絵では心の師匠だった神父様が側にいますし、子馬さん……ああ、葉子さんの息子さんですね。彼も出入りしていますから、お家がにぎやかなんですよ? 子馬さんは体がすっごく大きくて、ニコニコしてて、海さんがすごく好きみたいで、色々ビックリしますよ」
私はパチンと手を打って話を変えます。
「ほう、神父なのか……ユキが師匠と呼ぶとは、ぜひ会ってみたいな。それにしても葉子さんの息子……居るのは聞いていたが……ニコニコな感じはわかるが、そんな体つきのでっかい子供がいるとは思えないんだが。こないだ渉が会ったとは言っていたな。で、海ってARIKAのか?」
「はい。そうそう、金剛さんの時は渉先生にも本当にお世話になったのです」
「聞けば金剛っていう男は、髪は白髪で賀川に瓜二つだそうだが……雪姫。アンドロイドとか夢のある話はイイが、とにかく誰にでもついて行っちゃダメだぞ?」
「夢じゃなくて、金剛さんはアンドロイドですよ?」
「……わかった、そこはそういう事なんだな。ともかく気を付けるんだ」
えっと、私も誰にでもついて行っているわけじゃないのですよ? だって金剛さん賀川さん探していましたし、私も一人じゃ行き辛かったですし。でもすっごく心配されているの、わかるのでちゃんと頷くのです。
「それで賀川が葉子さんの親類だったって言うだけで驚く上に、細密電子の息子で、姉がコロッケ甚平の嫁になっていて。まさか不審者だと思っていたのが弁護士で、更に父上の幼馴染だとか…………世の中狭すぎるな」
ぱくりとゼンマイの中華胡麻味噌和えを口にしながら司先生が笑います。確かに世の中狭いのかもしれませんね。
「確かに賀川さんが急に海外の女性と婚約したと言い出したりとか、急に風呂場に入ってきたとか……本当に世の中、驚く事ばかりですよねぇ……」
「……ちょっとマテ。雪姫、何か今、さらっと聞き捨てならない内容が……」
「え?」
「ちょっといいですか、司さん」
その時、別テーブルでお酒をいただいていた渉先生がこっそり声をかけます。
「店主には今度の新年会と新年度、小中高の先生達とやる親睦会にココを使う約束で、今回の金額を下げてもらいました。それから漁協のツテの紹介もできるという事で、いろいろ都合してベンキョウしてもらいましたから……」
「よし、交渉よくやった。渉」
「でも……それでも結構な額になっていませんか? 本当に大丈夫なのでしょうか?」
「私達も大人だ、本気で酒まで未成年に全部払わせる訳はなかろう。ただ……あんまりヤツが幸せそうだったからな」
「そうだよ、ユキちゃん。そろそろ生徒は帰るから、流石に二次会からは『割り勘』って、残った人達に伝えてます……酒類は初めから『飲み放題』として最後まで通してもらいましたから、残った大人分、つまり殆ど各自になる計算で。俺達は残らないけど人数に入れて支払って。残るヒトは酔いつぶれる前に会費として先に徴収しちゃいました」
「ナイスだ」
とはいえ、ガックリ肩を落とした稲荷山君が会計を終えるのが見えました。色々、裏で手を回したようですが、相当な金額になったと思います。けれども彼は、可愛らしい双子ちゃんやお友達、みんなに囲まれて終始幸せそうな気がしましたよ。
『ゴチになりました~』
『不幸だぁ~』
みんなの大合唱の中、稲荷山君の声が響き渡ってます。流石に学生達は余り遅くなるのはよくないと、『子供』はそろそろ殆どが引き上げる頃となったのでした。
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『人間どもに不幸を!』(寺町 朱穂様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/
芦屋梨桜ちゃん 稲荷山君
中華料理のお店『クトゥルフ』
このお話は『人間どもに不幸を!』の最終話の終了後を、
妄想で構成しています。
『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』 (YL様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
清水先生 司先生 梅原勝也さん
『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』 (小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
海さん
『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズさん ベル姉様
その他、ちらちら雰囲気で~
『以下1名:悪役キャラ提供企画より』
『金剛』弥塚泉様より
お借りいたしました。
問題があればお知らせください。




