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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月27日

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458/531

集合中です(不幸中の幸いを)

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イルミネーション会場より移動した二人。

ユキ目線です。

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「雪姫、疲れていないか?」

「私は大丈夫ですけれど。賀川さんの方が……」

「ん、ごめん。大丈夫だから」

 さっきイルミネーションを飾り付ける高所作業から降りてきたら、リズちゃんに後剣のオジサマ、それから弥彦お兄様が居たのです。なんだか皆何か言いたそうでしたが、オジサマが『さぁ、リズ! 担当に戻れ。おぅ弥彦、今日は早番だったろう。お疲れ! ほら、上がったら整骨院よしゆきんトコに行くって言ってたろうが急いで……』などと声をかけて引き揚げてしまったので、余り話す事は出来ませんでした。

 それにそこから賀川さんがおかしい気がするのです。いや……その少し前くらいからですか? 高い所から手を振って、振り返してはくれたのですが、あの辺りから……とても言葉数も減って。それに今日は車ではなく電車で来ていたのですが、どうみても顔色が悪かったのでうろな駅で降りたのです。

 電車から降りた途端、白い小さな鳩が賀川さんの頭を陣取っていますけど。

「心配かけたね……少し歩きたいけど、いいかな?」

 暫く座っていたらだいぶ良くなったのかそう言います。私はコクコク頷いて見ると、賀川さん、次は顔を上気したように赤くして、目を泳がせます。

「熱あるんじゃないですか?」

 ぺとり、座った賀川さんの前に立って、額に手を当てます。ますます赤く、目もうるうるなってませんか? やっぱり寝不足になる夜勤明けに振り回してしまって悪かったでしょうか?

「タクシーを……」

「ち、違うんだ……違うのか? いや違わないかもだけど、そ、その、……手を握って……歩いていい?」

 そんな事、改めて聞かれると恥ずかしいのですが。賀川さんの頭の鳥さんは私を見つめてクルクル鳴いて、飛び立ちます。

「その……こ、恋人同士って、どうしたらいいか考えてたらよくわからなくなった所に……他にもいろいろ……頭がパニックしてるだけ……で、それだけで。で、手、いいのかな?」

「……はい」

 綺麗なピアノの旋律を弾き出す繊細な指は軍手でいつも覆われているせいか、彼の首筋よりとても白く。そっと私の手を取ってくるそれは、私より大きくて暖かくて。いつだったか動かずに冷たかった、あのままにならなくて本当に良かったと思うのです。立ち上がった賀川さんはしばし私の手を眺めていましたが、私の方を見て、

「ホントに綺麗だ……ぇ、ど、どうしたの? 俺、おかしい?」

「いいえ、あったかくて、何だかうれしい……ほら、手が動かなかった事が……」

「……あぁ、うん。何よりきっと君のおかげでもあるけれど。きっと、まこと君も居てくれたから」

「まこと君……」

「話してなかったかな? 幼馴染、なんだ。もう……亡くなったけれど」

 そう呟く彼はとても遠い所を見ているようでした。

 その時でした、

「ユキじゃないか、ちょうどいい所に来たな」

「司先生! 渉先生も」

 そこに居たのは十一月末に結婚式をされた清水夫妻の姿が。司先生も渉先生も命の恩人なのです。

「わぁ……だいぶ大きくなりましたね」

 体の小さな司先生だから、おなかがすごく大きく見える気がします。それも中に居るのは双子だから。けれども先生は綺麗に笑い、

「安産の為に運動をっと言われるが、思っていたより妊婦というのは動きづらい。だからこそその身を任された感覚が心底愛おしいがな。お前達は仲がよさそうで何よりだ」

「賀川さんと……付き合う事になったので……」

 恥ずかしくなって、つないだ手を放します。

「付き合う事って、……付き合ってなかったのか」

「その、俺達、正式にはそういう約束をしていなかったので……お久しぶりです、先生方」

「賀川君、それは良かったなぁ~それじゃついでにお祝いを兼ねて、一緒に行こうか。稲荷山が奢ってくれるみたいだから……」

「え?」

 私は賀川さんと顔を見合わせます。

 お二人の向こうには玩具屋の高原さんがいました。結婚式後半のサプライズを計画したり、渉先生がしていた『連携』の仕事を引き継いだりした方です。

 その側には先ほど別れた弥彦お兄様に妹の葵お姉様、森であった事のある整骨院の無料券をくれた……確か藤堂先生、その側に同じ色を纏う胸の大きな女性。このお二人も夫婦になられたのでしょうか? それに少し離れた所に目つきの鋭い感じの男性や、小さい女の子が数人いて。

 その真ん中あたりに居るのは白髪仲間の稲荷山 孝人君でした。その側には芦屋 梨桜ちゃんも。いつぞや森で会った二人です。

 稲荷山君はがっくりと頭を落としています。どうやらすごく困っているようです。

「何か困っているみたいですけど、私達まで奢ってもらって構わないのでしょうか?」

 賀川さんはそれを受けてゴソゴソと財布を漁ります。

「そうだな……だけど、俺も持ち合わせが……」

 賀川さんはちらっと私の耳に飾られているイヤーカフを見ます。結構値が張ったのかもしれません。そこでポンと声が飛びます。

「心配しなくていいと思うわ」

 やってきたのは天狗仮面様に、揺らめくような紫の色を纏った女性、千里さんです。その微笑みは色々が混じって形容しがたいのですが、基本的にとっても楽しそうです。

「あの子は、『払う』って言ったのよ。それに、孝人には強い味方があるから」

「強い味方とかあるわけねーだろ!!」

「まぁ、そう言うな孝人よ」

 この後、天狗仮面が差し出したチケットが使えるとか、使えないとか、騒ぎながら。

 どんどん参加者が増えて行ったのです。

「お、お前ら全員―――不幸になっちまえ!!!」

 っと、稲荷山君の声が響いたような気がしましたが、ともかくそこに居た皆で夕食をとる事になったのでした。

lllllllllllll

『人間どもに不幸を!』(寺町 朱穂様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/

芦屋梨桜ちゃん 稲荷山君


このお話は『人間どもに不幸を!』の最終話をベースに、

ユキ目線で構成しています。




『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌』 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生 司先生 高原さん


『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

ドリーシャ


『うろなの雪の里』(綺羅ケンイチ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9976bq/

後藤剣蔵(後剣)さん 伏見弥彦さん 伏見葵さん

藤堂先生 美里さん


『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

リズさん


うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様 千里さん


その他、ちらちら雰囲気で~

問題があればお知らせください。

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