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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月27日

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454/531

対話中です(皇さんと)

llllllll

本日二回目更新

オフ会記念です。

続けての更新なので前話を読み落とすと話が飛びます。

ご注意ください。

llllllll








 リンと扉の鈴を鳴らして英国紳士風の服装を着こなした男が一軒の店から出てきた。見送るポニーテールの少女の笑顔は柔らかい。まだ予断を許さない状況というのは変わりないのだが、この地下の医院で起こった忌まわしい事件の先行きが明るくなった事を示していた。少女リズはこの客人を招き入れた自分の判断は間違いなかった事にも安堵していた。

「では、何かありましたらうちの古書店にもおいで下さい、リズさん。お力になれる事もあるかと思います」

「ありがとうっス! 皇さん」

「では……」

 皇は丁寧に頭を下げ、くるりと背を向けるとひたひたと歩き出し、優雅にゆっくりとではあったが、うろなの外れまで止まらなかった。

 昨日まで雪がチラつく天気だったが、今日は空に雪雲はないようだ。彼は一度足を止め、それを見上げて白い息をゆっくり吐き、西の山の散策道を登っていくと、夜目でもわかるほど大きな栃の木とその側に桜の木を見つける事が出来た。

 この町を見下ろすように立つ『栃の木』は町民に愛され、ここから長く長く町を見守っている。

 その下には黒いスーツにコートを着た眼鏡の男が彼の到着を待っていた。

「ありがとうございます。おかげで助かりました……皇さん」

「私は『回復要員』じゃないんですよ?」

 にこやかに、しかし釘をさすようにそう言う皇に、スーツの男は糸目を更に細くしながら、

「いえいえ……あの女とはそれなりに縁がおありのようでしたし、『助けを求められたら手を出すかもしれない』と、言われていたと聞きましたので……」

 そう笑って言った言葉に、いつも人の良い雰囲気を纏っている皇がギラリと睨んだ。

 睨んだ先に立っていた栃と桜の木が、風もないのに大きく揺れた。その様を見ながら、ふっと息を吐き出し、

「まぁ、貴方に聞かれたなら言うしかないでしょうね、かぐつち」

「火と木では圧倒的にこちらに分がありますからね」

 眼鏡をかけた細い目から覗く縦瞳孔。まるで何かを飲み込まんとするかのような妖しい輝き。

「私が直で手を出す事は出来ませんから、仲介させていただきました」

「……くらみづは、は、お元気ですか?」

「最後の巫女を狙っている者がいるので気が気ではないようですが。それでも楽しくやっていますよ。昨夜はイルミネーションを楽しんでいましたね。今日は巫女のもとへ。……しかし秋の頃に酷く凄惨な殺しがありましたから。その時は久々に泣き崩れて、かなり地盤を揺らがせています。これで巫女が亡くなったら……大洪水は免れないでしょう」

「その後は彼女は立ち去って、やってくるのは大渇水ですか?」

「この国全土規模でとお考えください、あんな風な妹ですが私と同じ『古き神』ですから……この町には陰陽師が幾人かいますが、水に特化した者は居らず、人外でもどこまで手に『おえる』か……いや『負うか』……普通にやっても特別楽しい事ではないので。確か琴科の天狗がいますが、アレは風関係でしたから雨雲を呼べたとして応急的な助けは出来ても、あまり降らせれば地盤が緩み、降らせなければ再び渇水……その慌て様で喜んで、あの狐狸が力を貸す気になるか……まぁ本当に不味いことになったら貴方がどうにかしてくれるでしょうが……」

「そうならない為にかぐつち、貴方が歳月をかけて敷いた『布陣』の一つを助けたわけです……あの女子おなごが生きていれば、ある程度、『命を取り留められる』はず……なのでしょう?」

「『命だけ』は、ですがね。人間は脆い、故に美しい……だからこそ二月はすべてが無傷とはいかないでしょうが」

「巫女の祝福は二月ですか?」

「たぶん半ばを超えた頃ではないかと……」

 二人は左手の方を見やった。

 西の山から見下ろせば、その辺りにはうろな町の北に位置する深く広い森がある。そこには『かぐつち』の結界に守られた神域がある。普通の者が見れば真っ暗闇であるが、二人にはその中の一部が薄明るく輝いているのが見えた。

「そういえばここを騒がせている『芦屋』などがアレを嗅ぎ付けて来ないのですか?」

「彼女は強力ですが、残念ながら『そういうの』を探知する能力がないんです。兄にはあるようですが、たぶん本家から『かまうな』という通達があっているはず。芦屋は別に陰陽師の独裁を狙う集団じゃないのです。人間に危害を加えるモノを嫌うだけ。巫女が招く『最悪』より、居なくなる事の不利益の方がこの町……いや、人や国にマイナスに運ぶくらい、本家は理解していますからね」

 かぐつちはクスリと笑った。

「皇さん、私は今、ここでは篠生 誠という名で通っています。商店街の文具屋でまた雇っていただけることになりました。確か古本屋も近いのですよね、これからもよろしくお願いいたします」

 そう言いながら彼は赤く輝く十字架を手渡そうとする。

「…………何故に十字架ですか?」

「いえ、この山の奥に居る猫夜叉の双子と巫女が作ったのが十字の飾りだったので、それを真似しただけですよ。ええ、他に意図はないです。今日日こんな意匠ものに驚くモノはいないでしょうが、これには火の加護を。これが明日か、それとも何百年後か、いつ役立つかわかりませんが。今日の心ばかりのお礼と久々の再会を祝して。それに…………黒いスーツにはよく似合うと思いまして」

 ちらちらと昨日まで降っていた小雪を積もらせた木々が、風もないのに再び強く揺れた。

 ゆっくり白みかかる空に木々の歌が零れる。

 そんな時間にうろなを長く知る二人は、未来の平穏をそれぞれの方法で願い、探している事を確認し、その場を離れた。


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『悠久の欠片』(蓮城様)

http://book1.adouzi.eu.org/n0784by/

皇悠夜さん=ルチアさん


『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

リズさん


『うろな町~僕らもここで暮らしてる~』(零崎 虚識様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7914bq/

栃の木さんと桜さん


『人間どもに不幸を!』(寺町 朱穂様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7950bq/

芦屋梨桜ちゃん

『銘酒の秘訣―うろな酒店の昼下がり―』(寺町 朱穂様)

芦屋伊織さん


『うろな天狗の仮面の秘密』(三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様 千里様


『うろな町 思議ノ石碑』(吉月こひな 様)

http://mypage.syosetu.com/235410/

斬無斗君 無白花ちゃん


名前ナシだったりもしますが、いろいろチラリしています。

問題があればお知らせください。

lllllllllllllll

ストックゼロになりました。

次の更新までしばらくお待ちください。


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