表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月25日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

425/531

クリスマス:夕刻前です2(子馬)

lllllll

ちょこまかと細かい奴。

子馬目線です。

llllllll






 見た目、何処にも不自由がないように動き回っていたが、賀川のコンパクトかつ執拗な攻撃はじわじわと俺を苦しめていた。俺の体は丈夫で回復力はあるが、それも数秒で行われるわけではない。分散して受ければ大した事はないが、ここまで執拗に集中して喰らうと回復が追いつかない。攻撃される場所は限定されるのでわかっている、だがそこを余りに必死で庇おうとすれば効いている事を認めているようなものだ。出来るだけ的を逸らせながら、確実な一撃を与える隙を探す。

 一撃でいい、そう思うのだがちょこまかと動いて『雷針』さえ思う様にヒットしない。

 その時、賀川から発された異様なまでの圧迫感。

 俺は反射的に『力』を纏わせて腕を振るってしまった。それは人間であるなら超えてはいけないボーダーを上回る力。人を殺めるのに余りある力で、出すつもりのなかったそれを無意識に引き出すほどの力を賀川は有しているのを俺に計算させた。

 賀川が咄嗟に防御した為、殺すには至らなかったが、思わぬ速さですっ飛ぶ。このままでは賀川が結界の網に引っ掛かる。生身の人間は水分が多く、枯れ木のようには燃えない、だが服などはいとも簡単に燃やし、体を感電、死亡させる雷壁だ。雰囲気を出すためもあってソコソコ本気で張ったのを後悔しても遅い。

「賀川っ」

 それはマズイ……結界が解けるより前に彼の体がソレに触れてしまう。燃えカスになる彼の体を想像したが、ガキィッ! っと、正体不明の高音がして、彼の体は燃え上がらなかった。

「鎖?」

 それは鎖が軋むような音。結界の中には四方八方から伸びた、青く光る鎖によって空中に拘束された賀川がぶら下がっていた。それは蜘蛛の巣に捉われた蝶のようにも見えた。

「水羽さん……間に合いました」

 手錠で止めた不自由な中にあったにもかかわらず、巫女は地面に図形を書いていた。風に攫われ、一瞬しか確認できなかったが、それはかつて宵乃宮が祀った神が使ったと言われる古代の文献に残る物と酷似していた。

 鎖はすぐに解けて見えなくなると、ぐちゃっと無様に賀川が落ちる。その為、レディフィルドと言う鳥使いが遠慮呵責なしに笑い転げ、賀川がキッっとそれを睨んでいた。

「何だったかわからないけど、助かったのかな?」

 賀川は今の鎖は俺が作ったモノだと思ったようだった。頭を少し振りながら立ち上がった賀川は、俺を見てにやりと笑った。

「で、子馬。俺の勝ちだから」

 彼の手には俺の胸に下がっていた筈の鍵が輝いていた。

 俺が弾き飛ばす瞬間に握りしめたのだろう。俺の張った結界は消えており、雪は彼を祝福するかのようにその手に舞い落ちる。

 彼はゆっくり巫女の前に歩み寄って膝を付く。猫は温かさから動きたくなさそうだったが、伸ばされた汐ちゃんの腕に不服そうにしながら移動し納まる。

 賀川はブランケットを除けて足と手の錠を外しながら、

「どうしても行くの? ユキさん」

 静かにそう尋ねていた。

「それを言うなら『行くな』だろぉ?」

「そうだよ、賀川のお兄ちゃん」

 海さんと汐ちゃんに言われて、賀川は言葉を失くす。俯いたり、空を見上げたりしながら、

「俺、頼りないかな?」

「子馬さんにあんな風に向かっていくなんて、無茶です!」

「ユキさんの為なら、俺は何度でも挑むよ。全くの素人ではないのはわかってくれただろう?」

「でも、そんな風にしてると、賀川さんが傷ついてしまいます。それがイヤです」

 そう言われた賀川は、底無しに黒い、そして意志の強い瞳で巫女を見た。

「傷ついて何がいけない?」

「だって……」

「欲しいモノを欲しいと言って何がいけない? 今まで俺にそう言いたくなる物はなかった、どこにも行き場がなくて、それでも何となく誰かの役に立ちたくてエンジェルズシールドに入ったり、姉の言葉に従ったりしてきた。運送の仕事が楽しくない訳じゃない。でも、違うんだ。今は俺の欲しい者の為に戦える。それが嬉しいんだ。だから、ねえ、ユキさん、……いや、雪姫。貴女おまえを俺にくれ。かわりに全てを君に」

 汐ちゃんに抱かれた猫がピクリと賀川を見る。それは値踏みするかのように。巫女の瞳が大きく見開かれた。

「守るとか、側に居るとか、その約束で足りないのなら。いっその事、俺に君の全てをくれ。君の為に戦いたい、守りたい。それを叶えさせてくれ。自分が傷つくよりも、君がいない事が嫌なんだ。君がいない事が俺には何より辛いんだってわかってくれ。つまり……うろなを離れるなんて二度と言うな!」

「かが、わ、さん」

「俺の側に、うろなに居ろ。俺達の家はあそこなんだから……」

 見つめ合う二人、でもそれを遮る様に少年レディフィルドが二人の顔の前で手を叩き、

「続きは後から二人っきりでやれって~の! それとも見られるのが好きなのか? そんな変態趣味だったとは知らなかったなぁ~あきらちゃ~ん」

 やっと観衆が居るのを思い出した賀川は顔を赤くした。

「何だと! レディちゃん!」

「あーぅ、二人ともやめてよ、フィル! 賀川のお兄ちゃん!」

「レディフィルド君と賀川さんって仲が良いのですね」

「はぁ?! 俺様をこんな奴と一緒にすんなっ」

「はぁ?! 俺とこんな奴と一緒にしないで。ユキさ……いや雪姫」

「ふふ。やっぱり仲良しさんですね」




 わいわい言い始めたその場から、俺はそっとを離れた。

lllllllllll


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん ホテル<ブルー・スカイ>

汐ちゃん レディフィルド君 

(あ、ルド君がずっと肩に居るのに書いてませんでした、失礼しました)

 


時雨(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7606bq/

手袋ちゃん

お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

(そろそろ本格的にストック無しになりますので来週あたりから書き上げ次第のアップ、春休みも近く平日毎日更新では無くなる予定ですが二月に向け運用していきますのでよろしくお願いいたします)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ