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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月25日

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420/531

クリスマス:夕刻前です(ユキ)

lllllll

少し巻き戻して……

ユキ目線です。

lllllll









 私は夕方より少し前、タカおじ様の車でホテル<ブルースカイ>に近い、砂浜の側を走っていました。

「あれ? 子馬さんに海さんです」

「……仲よさげじゃねぇか。脈あり、か?」

「ですね。たぶん、そんな気がします。だって色が繋がって虹を……あの、私、ちょっと声をかけて行きます」

 望みを聞いて車を停めてくれます。

「ホテルまで送るからココで待ってるぞ?」

「いいえ、大丈夫です。歩いて行けますし、子馬さんも居ますし」

「そうか。じゃぁ気ィ付けろよ。何かあればすぐに呼べ」

 私は頭を下げて浜の方に歩いて行きます。いつも心配かけてるんだなって思いながら。

 見付けた子馬さんと海さん。何だか引っ付いたり、離れたり、微笑ましい感じの二人を見ながら、私はニコニコしてしまいます。

 良いな、って思います。とてもきれいな青に赤。お互いが引き立てるように輝いて。側に寄るとぐっと色が濃くなって、でも互いを探る様な交じりが美しくて。それは美しい虹の様。

 そして、キスが……落ちる……

「じゃっな~♪ まーたなぁ~」

「あーー海さんには勝てないよ」

 その時。やっと二人は私の事に気付いたようです。ひらっと飛び寄る大きな蝶。

「宵乃宮の巫女」

「ゆゆゆゆ……ユキっち!」

 見ちゃ駄目だったでしょうか?

 二人共、強くていいなと思います。私は海さんが羨ましいと思いました。

 子馬さんは荒いお仕事も結構担当しているようです。そんな彼が側に置いても大丈夫と思って選ばれた女性。

 私が海さんの欠片程でも強かったなら、タカおじ様達や賀川さんにも迷惑かけなかったと思います。強いどころか、体さえ何だかままならなくて。ここにもうお母さんが戻ってこないと決まった今、私は……

 子馬さんがじっとこっちを見ています。海さんも。二人を包む、見惚れるようなきれいな色。

「あの」

「何でしょうか? 巫女」

「……………………………………………………お二人。む、結ばれました?」

 二人が同時に赤くなります。

 聞いちゃいけなかったでしょうか。

「色が混じって、糸を引いているので……」

 おかしな子って思われたでしょうか?

「巫女が巫女たる由縁か……」

 そう呟き、さらに続ける子馬さんの台詞に海さんが喰いついて、喧嘩のような態になっていましたが、それでも二人は仲良しさんです。

「子馬さんはそんな勘違いしてしまう優しい海さんが大好きで。海さんはそんな子馬さんにいつの間にか引き込まれてしまったって事ですね?」

 暫し間があって、ごほん、っと子馬さんは場を仕切る様に一つ咳払いをします。その時、側にいた蝶が足元の来客を知らせてくれました。

「手袋ちゃん!」

 浜は風が吹いて寒いのですが、私を見つけて挨拶に来てくれたようです。しゃがんで手を広げると、よじのぼってくれます。ぺろりと頬の辺りを舐められてくすぐったい。抱っこするととっても温かいです。海さんを見て挨拶と言ったように短く鳴いて、その後は腕の中でじっ~と子馬さんを睨んでます。

「子馬さん、大きいけど怖い人じゃないから」

 そう言うと私を見上げて胸に顔を埋めて、ゴロゴロ言ってますよ。

「猫にも好かれているのか……で、巫女。今日は?」

「ただの猫、じゃなくて、手袋ちゃんです。ほら、前足の白が可愛いでしょう? で、えっと、今日、もうすぐ賀川さんが来て、あのホテルでピアノ弾いてもらうのです」

「ジジイの?」

「ああ、海さんの今住んでいるのはあのホテルなのでしたよね? で、ですね。子馬さん、賀川さんがココに来る前に話しをしたいのですが」

「そ、それは失礼いたしました。で、何でしょう」

 ちょっとワザとらしいくらいに言葉を整えて子馬さんが聞いて来るので、笑いながら、

「自分の身が守れないのに不安だったら、身柄を保護してくれるって、本当ですか?」

 その言葉に子馬さんと海さんが顔を見合わせます。

 前から考えていた事で、でもなかなか切り出せなかったから。言ってみたのですが、二人とも怪訝な顔をしています。

「あの……お二人共、どうかしましたか?」

「賀川と小父貴、他にも君の回りには自然と守りが出来ているし、水羽様もおられる。不安に思う事はないと思うのですが?」

 私は目を伏せながらフルフルと首を振ります。

「夏は親友の無白花ちゃんや斬無斗君、その後もベル姉様もリズちゃんも私を守ってくれて……傷つきました。幸いな事に皆、今は元気ですけど……私のわがままですよね。うろなに居るのって。私を……保護してくれますか? そうしたら賀川さんに無茶させなくて済みますか?」

「な……」

 海さんが私に詰め寄ります。海さんは子馬さんと初めて会った時に話を聞いていて、うっすらとながら私が変な立場にあるのを知っています。黒い跳ね髪を風に揺らしながら、

「よぉーく考えてみろよ? ユキっち! 人間、居たい所に居て何が悪いんだよぉ~? 皆、それを望んでいるから協力してくれるんだろ? 一番君の熱ぅーいキスは本気だったろ? 構うこたぁないっ! この海ちゃんも必要とあれば手を貸すし! どーんと大船に乗ったつもりで……」

 そう言えばあのキスを見られていたのでした、赤くなった私に子馬さんは冷や水をかけるように、

「海さん、それは荒事に慣れた人の台詞だよ?」

 子馬さんはとても優しくほんわりと笑っていましたが、言葉は冷静でした。

「彼女は操られると、自分が何をするかもわからないんだよ? いつも自分を守れず、他人にばかり盾になってもらっている人間の気持ちは、海さんにはわからないと思うな?」

「う! お前、正論だけが正しいと思うなよっ!」

「正しいから正論なんだよ?」

「あ~っ、だぁ~もう。ユキっちは一番君を好きなんだぞ? その仲を裂く権利なんて誰にもねぇ~だろ? な?」

「海さん……それはわかるけれどもね。巫女はね、争い事を嫌う。だからこそ巫女なんだよ。そして自分を犠牲にしても、他人の幸せしか望めない。それが逆って、遺伝子的に彼女は今凄いストレスを感じているんだ。巫女であるのを差し引いて、普通の人間であってもそう思うよ? 」

「じゃ、どうするんだよ! ユキっちはココに居たくないのかよ?! それで良いのかよ?」

 腕の中の手袋ちゃんをギュってします。ここを出たら手袋ちゃんとこうして会うことも無くなるのはとても寂しい。けれども……

「イイとか悪いとかじゃなくて、私がいる事で皆が大変なのは心苦しくて」

「うん……一つの選択肢だと思う、他人の俺達が口を挟む余地はないな」

「たたたたっ他人じゃねーだろ? あたしは友達だし、お前はユキっちの分家の血筋がどうとかって……それも子馬じゃなくてユキっちに聞いてるんだよっ」

「俺は今、『刀森』じゃないし。それを言うなら『土御門』……警察として彼女の意志と要求で保護を求められたのを優先させる立場だよ?」

「だ~か~らぁ~子馬おまえじゃないって!」

 二人がまた睨みあってます。お二人を喧嘩させるつもりはなかったのですが。

「巫女、一つ聞いておきたいけれど」

 海さんを放置して、子馬さんは私に話を振ってきます。

「はい?」

「賀川ってどういう印象?」

「え……っと、賀川さんは複雑で分かりにくいです。でもピアノを弾いている姿が彼の『本当』だと思います」

「彼は強いと思う?」

「心の芯は強いと思います」

「じゃあ、体は……?」

「普通、くらいではないでしょうか? そう言えば清水先生のお義父様との決闘のお手伝いをすると聞いた時もハラハラしました」

 賀川さんには戦うなんてイメージはないのです。仕事柄、体ががっしりしていますけど。この頃、ちょっと触れる機会があったのですが、前に比べるとどこか筋肉が強靭になった感じましたが。

「確かにあの男に守ってやると言われても、不安になる気持ちはわかりますよ、巫女」

「不安と言うか、彼が傷つくのは嫌です……」

 その言葉を放った途端、子馬さんが私の腕を掴みました。

「わかりました。身柄、お預かりします」

「こ! 子馬! っめー人の話を聞けってーの!」

「え? すぐって訳じゃなくって……その、あの……」

「個人的にその力には興味もありますしね……」

「け、警察だろっ! 自分で言ってたじゃないかっ」

「だから、警察以前に個人的な興味があります!」

 海さんが、ニヤリと笑う子馬さんに飛び掛かって行きました。


lllllllllll


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん ホテル<ブルー・スカイ>


『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

ベル姉様 リズちゃん


時雨(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7606bq/

手袋ちゃん


うろな町 思議ノ石碑 (銀月 妃羅 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n4281br/

無白花ちゃん 斬無斗君 お名前のみ

(妃羅さん、連絡付きませんがお元気でしょうか?)


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

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