表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月21日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

411/531

飲み会中です2

lllllllll

黒髪の美しかった女性。

lllllllll






 月の初め、アリスを救った後、前後不覚になり倒れて、気付いた時に俺の側に居たレディフィルド。そこに『彼女』はおらず、彼の手には見覚えのあるヒールがあった。それをそっと抱くレディフィルドの表情は沈痛で、彼女の死を悟るのは難しくなかった。

「木曽 海斗……ある電機メーカーの研究員、彼は不慮の事故で亡くなり、姪の名が撫子だったみたいだ」

 朝の鍛錬時に魚沼先生が持って来てくれた封筒には、姉の冴に頼んでいた情報が入っていた。

 TOKISADAではまだ前田と言う名の少年研究員の名はまだ伝説の様に残っており、そこに当時いた社員の苗字から彼女を割り出すのは姉にとってそう難しい作業ではなかった。

「海斗……撫子が忘れたアイツの名前……伯父、だったのか」

「両方ともシングルマザーの子供だったみたいだな。兄妹のように育ってるんだ。その母親が亡くなってから、彼が彼女の親代わりに働いて稼いでた……どちらも父親の名はわからないが、政治家か資産家じゃないかって噂もあった。彼の葬儀に名もない包みがあって、金額が凄かったとか書いてあるな……裏は取れてないけど」

「その辺にゃ、興味ねぇよ。撫子は、アイツの形見だった『赤い指輪』を持ったヤツに従ってた、って事は確かだぜ〜」

「形見……赤い、指輪?」

「そう、だ、な。銅よりも血のような……赤メッキの、指輪。羽の生えた、トカゲみてぇな形だった」

「赤いネジ……赤い宝刀……」

 俺は古ぼけた写真を取り出す。戦中か戦後かに撮られた一枚の写真。日本にカラーなんてそんな写真が撮れる機材は当時たくさんなかったろうから、海外から来た軍人ものが接収前に撮影したのだろう。ただこの刀はどこを探しても海を渡った形跡がなく、こないだ魚沼先生がそれに切られ、子馬も負傷した。

 写真を見た途端、秀麗なレディフィルドの白眉が嫌そうに寄った。

「そう……こんな色だ。何なんだ、こりゃ?」

「昔ユキさんの家系が祀っていた刀だ、こないだ模造刀を……」

 刺されたような記憶がある、言いかけて、そんなわけあるかと口をつぐむ。こんなモノで刺されていたら死んでいるはずだ。

 そこに映っているのは宵乃宮の刀をじーっと睨む様にレディフルドは眺める。タカさんの息子刀流さんが作った金属で子馬の父親が打った模造品ではなく、長き時をかけて巫女の血を吸った刀。

「ありゃ、どー見てもまた来るだろーなぁ。カガワ(お前)、撫子と居たヤツラとまたやり合うんだろぉ〜?」

「やりたいわけじゃない。けど二月に『祝福』って儀式をやるんだ、ユキさんの為に」

「祝福だぁ?」

「良く意味が分からないけれど、二月のソレを失敗したらユキさんの体が持たないらしい。その為の力とユキさんを同時に奪いに来るんじゃないかって予想してる」

 うまく説明できずに端折ると、青い瞳を泳がせ、だいたいの所を頭で補完してくれたようだった。

「二月、もしカガワ(こいつ)が事を構えるならラザ、俺様に知らせろよ?」

 途端にるっくぅと小さな声がして焦っていたら、手品みたいにドリーシャがレディフィルドのどこかから出てくる。

「個室にはなってるけど、飲食店にマズイだろ」

「ルド、置いて来たんだがなぁ。お前を店前で待ってた時、おとなしくしてるから入れろってだなぁ~ま、見付かんなけきゃイイだろ~ぉ」

 ドリーシャもわきまえているのか、レディフィルドの膝から静かに俺の膝に移動する。そして頭をすりり俺の体に擦り付けた。酒が入ってるせいもあって、可愛い仕草に怒る気にはなれない。

「こんな風に小さい生き物にされるのって……いいけどな」

 生き物を飼った事の無い俺は、懐かれるとつい嬉しくなってしまう。

「柔ぁらかくて美味そうだし。可愛いよドリーシャ」

「くるるぽ?」

「喰われんなよ、お前……」

「ははは、今は飢えてないし、ユキさんの道案内もしてくれたし、魚沼先生にいさんが危ないのを知らせてくれた恩もあるから」

 優しく首筋を撫でてやる。その手が血まみれている事を忘れさせてくれる一瞬、口が緩む。

「ドリーシャ好きだな。ずっと側にいてくれると嬉しいけど。レディフィルドの鳥だもんなぁ」

 そんな『ずっと側』になんて、口約束が鳥と交わせると思わないけれど。梅雨ちゃんを預かった時の様に、突然帰ってしまうのだろうと思ったら、寂しくなってそう告げる。

「カガワぁ〜、それって告白かぁ〜?」

「え?」

 ドリーシャは音もなくフワリとテーブルに乗ると、肘をついていた俺に近付き、くちばしの先をちょん、と、唇に触れさせてきた。甘えているらしい。それを見ていたレディフィルドはニヤリとし、

賀川(おまえ)雪姫(セツ)から乗り換えんの?」

「さっきから何言ってんだよ」

ドリーシャ(そいつ)メスだぜ〜? 二股かぁ? わっるい男だなぁ〜」

「二股って……何を……鳥だろ? 色もユキさんと同じだから凄く可愛くて……ほら、ポケットに入ってるか?」

 そう言うと、嬉しそうにモゾモゾ入って行く。

「この頃、外が寒いだろ? それで家に入れる様になって気付いたけど、狭い所、好きみたいだよな、ドリーシャ」

「ここまで専属なつくなんてホント珍しいんだがな~」

 カラになったグラスにボトルで頼んだ酒を注ぐと、ゆっくりそれを眺め、

「撫子と約束した……その指輪、必ず届けると……」

 氷が揺れるグラス。それを眺めるレディフィルドの目はとても遠くを見ている気がした。

 何があって、どうなってそんな事になったか、聞ける雰囲気じゃないけれど。

「そういや、ピンクのキリンに会ったなぁ~アイツ次に会ったらボロ雑巾にしてやる、ってか、雑巾に失礼だな、あの匂いは……」

「匂い?」

「カガワぁ、本当にお前、ソッチの方向、ダメなんだなぁ~」

「ソッチって、どっちだよ?」

 首を傾げると、露骨に呆れたような顔をされた。

「……なぁ~お前、誰かに何ンかされたろ?」

「何だよ、それ?」

「駄目だ、こりゃ。ま、いっか」

 そう言って首を竦め、大皿に乗った食べ物をぱくりと口にした。



llllllllllllllll

現在不定期更新(自転車操業)

llllllllllllllll


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

レディフィルド君 ドリーシャ 


"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

梅雨ちゃん



『以下3名:悪役キャラ提供企画より』


『木曽 撫子』 YL様より


『田中』 さーしぇ様より


『早束 まなぎ』 とにあ様より


問題がありましたらお知らせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ