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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月21日

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飲み会中です

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お支払。

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『んじゃ賀川(おまえ)、鍛えてやったのの見返りに、この俺様に酒奢りやがれっ!』



 耳の訓練終了後、ビシリ、と、俺を指差して悪い顔でニヤリとしたレディフィルドの要望。飲み代を出せという話で、今、俺達は酒を飲みに来ている。

「カガワぁ〜訓練終わって間ぁあいてっから、俺様への報酬、忘れてんのかと思ったぜぇ〜」

 と、突っ込まれたが、秋姫さんが亡くなったとわかった後は必ず何らかの形で、誰かがユキさんの側に居た。俺もできる限りそうしていたから時間が取れなかったのだ。全く構ってもらえなかったけれど。

 説明するのは面倒なので、黙って気にしない事にする。それもレディフィルドは酒場に連れてきたら即笑顔だから、凄くさっぱりして付き合いやすいと思う。

 ユキさんが取り乱したのはその日だけで、落ち着いたように見える。しかしタカさんは泣き喚きもしない彼女に危惧を抱いているようだった。

 いつも気になって仕方がないけれど、心が離れている感じがして必要以上は近寄れない。それでも仕事はクリスマスの日に無事休めそうだし、その後のシフトは緩めて行こうと思っている。

 それにしてもレディフィルドとの飲みの約束の後、汐ちゃんにある『不思議な導き』をされたせいか、以降、『音』に対しての防御が楽になった上、何か別のモノが見えつつもある。

 例えばアリスを救う時は、地雷の場所や爆発までの時間が掴めていたからこそ出来た芸当だった。

 普通の人間だって少しは研ぎ澄まし、切っ掛けがあれば今までと違った視点で見えたり感じたりするモノがあるのは感じた。ただ、俺がどれだけ頑張っても平凡の域は出ないのだろうけど。

 今日の飲みは『聴覚訓練』の報酬。だが汐ちゃんに『飲み』に誘う訳には行かないから、ここに来る前にモールへ寄って買い物をした。ユキさんのクリスマスプレゼントも一緒に。仕事を詰めていたから時間が取れて本当に良かったと思う。

 俺は明日が仕事、と、言う日程で酒を飲むのは嫌いだが、クリスマスに休みをもらうため仕事をすし詰めにしている。明日は昼から翌朝までの仕事にしてもらった。

 レディフィルドはどこの店でもいい感じだったので、適当に予約した。個室に着いた所でポンっと財布を渡す。

「それ以上の金は、酒では動かせない。『限度はある』と言っておいただろ? それで今夜の二人分だ」

「交渉、意外にしっかりしてるのなぁ~カガワ」

 中身を見て納得してくれたらしい。と、いうか、こうしておかないと非常に拙い気がした。酒に強い輩の顔だ、酒と言った時の音がタカさんのテンションと似ていて、いくらでも入るタイプと見た。

 カードは持ち歩かないので、現在の手持ちの有り金、全部。俺の給料、二か月分くらいは入っている。さっき買い物はしたし、車のガソリンも入れたばかりだから大丈夫。

「あ、電車代に五百円だけくれ」

「電車あるうちに帰すと思ってんのかぁ~」

「そう言うのは女だけに言え。電車は終電乗れなきゃ、始発まで駅で待つつもりだからいい」

「なんだよ、お前も乗り気じゃねぇかぁ」

「いや、乗ってないから」

 五百円だけ受け取ってポケットに入れる。

 運ばれてきた酒は俺が日本酒のロック、レディフィルドは焼酎と紹興酒。日本のビールは俺が余り飲まないと言ったからだ。日本酒は清水先生からの受け売り。

 食べ物は刺身、出汁巻き卵。ホウレン草のサラダにベジチップス。明太子トーストにジャガバター、豚の串揚げなど。

 ただ、から揚げとか焼き鳥、チキン系は食ってもいいのだろうかと少し悩んで出したオーダー。そうすると卵もか、うーん。

「ま、どうしてもの時はルドを呼ぶから、乗せてってやらぁ~」

「要らん、遠慮する。乗り物は好きだが、鳥は乗り物に入らない」

「こないだけっこう喜んでたくせに……」

 確かに……何度か乗ってその度にテンション上がったが、あんなのは非現実的だ。きっと何か種があるのだろうが、俺にはわからないから。非常時やユキさんが一緒じゃなきゃ乗らない。楽しいけど、普段使いでは絶対乗らない。



「それにしてもお前よ~こないだ、あの白い髪のにキスしたってぇ~?」

「ユキさんな。ネタ元は海さんだな……」

「ルドもばっちり見てたぜぇ~」

「お前は鳥と話すのか、非常識な」

「巫女なんてぇーのに、手ぇ出そうとしてる(ヤツ)の台詞ったぁ〜思えねぇなぁ」

「ユキさんは普通だ、お前と一緒にしないでもらおうか」

「おっ、お前、何か態度悪っ。かっわいくねぇ〜!」

「今までは教えを受ける側だったから、少しは下手に出てたんだ。社会人としての礼儀な」



 こないだ中学の先生である清水渉先生と飲みに行った時と今、確かに対応は違う。

 清水先生は可愛いユキさんの命の恩人。

 死の際を救ったのはあの人の英断あってだとわかっている。年は実際下なのだが、失礼がない程度に崩しながらも敬語で会話するような仲。魚沼先生が俺のラッシュの練習相手の条件の一つが『こいつが尊敬できて絶対蔑ろに出来ないような者』というものだった。

 もう錠前が外れた状態でも一撃目に『誰』かを認識できないなんて事はないが、初期の俺に歯止めをかけたのは、確かに清水先生に対する『気持ち』だった。

 一方のレディフィルドの能力や知識が尊敬に値しないわけではないのだが、一緒に『戦った』者として、戦場を共有した『仲間』になってしまっていて。ポンポン言葉が飛び出てしまう。仲間と言われて相互を崩してしまうほどに。ただ今までは汐ちゃんも居たし、教えも乞うていた。その為に押さえていた所は無論あるのだ。

 まだ実戦を兼ねた訓練はしてくれる話があるのだが、とりあえず今日は垣根は必要ないかなと判断して、愛想笑いもせずに思った通りを口にする。



「お……お前っネコ被ってたのか!」

「んー? 俺、忠実だぞ?」

「自分で言うか、自分で!」

 割り箸でトントンと俺の目前にある皿を叩くレディフィルド。俺は無造作に箸で刺身をその口に押し込んでやった。

「そんなに欲しいなら、口で言えよ」

「貝柱うまっ! じゃ~、なくてだなぁ」

「貝柱じゃなかったのか……」

 次はエビ、マグロを突っ込んでみる。文句言いたげなのだが、何故か奴の口が開くので、面白い。

「うん、餌付けだな」

「餌付けって言うなぁっ! 俺様に向かってそーんな態度を取った事を後悔させてやるっ」

「わさびナシがダメだったのか? 俺はわさびが苦手だから……」

「お前、つ、ツンと来たっ! わ、ワザとだろ? ワザとだな? 確信犯だろ?」

「レディフィルド怒らなくてもいいじゃないか、せっかく飲みに来たんだし。お前と飲みに来れて嬉しかったんだけどな。何だかヤツらと飲んでるみたいで」

 カラカラと氷を言わせながら酒を飲む。

「ありがとう、レディフィルド。お前のおかげで色々、乗り越えられた。まだまだだけど」

「ん、ああ、俺様から見たら世の中のみぃ~んなが、まだまだだけどなっ! ……おねーさん! 俺様もロック! それからこれとこれ」

 お互いにやっと笑いながら、注文と杯を重ねていく。

 レディフィルドのピッチが速いので、それに釣られない様にしないとキツいなと思っていると、見越したようにおかわりを頼まれる。

 彼の杯は即座に空になるので、それに合わせて頼んでやると、面白いように食べ物と飲み物が彼の口に消えて行く。鳥と言うよりその勢いは巨大獣の飼育並みな気がしてきた。子馬がいつぞや海さんに食事を口に運んでもらったと嬉しそうに話していたが、その時の海さん程は大変でないだろうが、似たようなもんじゃないかと考えられるくらい食べる。小さいくせに。

 レディフィルドがコップを空にしては氷で音色をたてる。酒が入って来た所で、話をあの女性の事へ話を向けた。

「こんな時に何だが、あの女性の話をしてもいいか?」

 楽しくやっているのに、と、文句を付けられるかと思ったが、レディフィルドは特に文句も言わずに酒を飲み干し、無言で了解の意を示す様に俺を見た。


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現在不定期更新(自転車操業)

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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

レディフィルド君 汐ちゃん 海さん 


"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生


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