表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月16日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

406/531

降雪中です2

lllllllll

集配や宅配しながら~

lllllllll






 肩が、腕が、骨や筋肉が軋む様に重くて痛い。

 そう思いながらトラックを運転している。

 ココの所、仕事も鍛錬もたいへんだったが。

 今日はあの後、魚沼先生に真剣の型と、抜刀、納刀を習った後、クソが付くほど重い模擬刀を一時間以上、片手の正眼で持たされて。その後、タカさんからガンガンとその模擬刀に鉄の棒で打ち込まれた。

 素人に刀で攻撃など短時間に教えても無駄だからと、防御と刀を握る筋肉の強化を図っているという。宵乃宮の刀対策だというが、普通にこの模擬刀を持って回るわけには行かないし、意味は見出せない。

 けれども魚沼先生にはラッシーを身に付ける為にタカさんに便宜を払ってもらったから、付けてくれる稽古を拒否するわけには行かなかった。

 だが筋肉の使い方がまるで違う、変わった訓練に体が悲鳴を上げていた。それでも仕事は仕事で出ないといけない。休みたいとは思わない、忙しくしている方が滅入らずに済むのもある。

 ちなみに模擬刀は結びや柄などは他の一族の者が請け負ったらしいが、基本を打ったのは子馬だという。

 海の近くで信号停車した時に、窓を開ける。

「ドリーシャ、寒いけどレディフィルドに。頼んだな?」

 隣の座席に座っていた白くて小さくて美味しそうなそれが、脚に結わえた紙切れを運ぶのに飛び出していく。紙には十二月二十一日に時間が取れたので、礼をする事と場所を書いておいた。本当に届くのか不明だが、届かなかったらそれを理由に中止にすればいいかと思う。

 鳥が海をひらひら横切る中、また小雪が舞う。そこまで町には積もっていないが、家から出た時に見えた西の山は白くなりだしていた。

 北の森も同じだろうか? ユキさんは森のアトリエに行きづらくなるので、この雪を歓迎はしないかもしれない。

 そう思いながら浜へ目をやると、子馬の姿があった。傍には……海さんが居て。どうやら格闘中である。あの二人、どうなっているのだろうか? そう思いながら滑りやすくなっている道に気を付け、集配と配達に回った。

「こんにちわ、賀川急便です」

「じゃあ、賀川君、この辺の荷物よろしくー。こっちは壊れ物。こっちの日付指定はコレ」

「はい。確かに」

 昔は水族館だった建物、荷物を受け取っているとそこの家の子供が出てくる。

 この家は人が多い、プライバシーの侵害になるから誰がどの繋がりか聞いた事はない。俺はそういうのはまったく気にしない方だけれど、気になる人は気になる家だ。

「こんにちはー」

 確か……双子で。

 どっちだろうか?

 中学生の隆維くんか涼維くん……そんな名前だった。小さい方の双子は。大きな双子の方は鎮くんに千秋くんと音が似てないので名前は覚えやすいが。

 そう言えば二か月くらい前だったろうか、千秋くんの方がユキさんに引っ張られてやって来たのは。大切な人を亡くしたと。

 人を死なせてしまう喪失感は何度も何度も知っているけれど……あんな顔を……俺はもう二度としたくない。

 と……それより今の時刻を考えて尋ねる。

「こんにちは。って学校は?」

「今日は朝熱があったから休みー。今は落ち着いてるんだ」

 一か月くらい前にユキさんがココへお見舞いに行ったと聞いた気がする。確かそれなら隆維君の方だろう。

「でね、お願いがあるんだー」

 差し出される包み。なんだろう……運べという事だろうが。

「二十五日の午前中にね、雪姫ねぇちゃんにクリスマスのプレゼント、届けて欲しいんだー。森の家の玄関そばに二十四日の遅くに置きに行くとかも考えたんだけど、反対されそうだしさー」

「当たり前だ」

 っと、怒られている。

 熱があって学校を休むような体調で、雪も降ってるのにそれは駄目だろう。その前に元気でも、中学生の夜中の外出はいけない。合わせて頷きながら、

「危ないからダメだよ」

 と、言うと、彼も謝る様な納得したような顔をしている。頷く仕草が随分可愛らしい子だなと思う。

「でね、それがコレなの。賀川のにーちゃんは雪姫ねぇちゃんとデートを繰り返す仲だから、頼んだらこっそり置いといてくれるかと思ってさ」

 確かに……夏祭りも剣道の試合も、結婚式も、大勢の人前に出る時は一緒だった。彼から見て、俺達は仲良く見えるのだろう。きらきらした目を向けられる。

 でも今は、同じ屋根の下とはいえ、心の中は凄い距離がある仲なんだけれど。いや、一方的に俺が側に居るだけの関係。

「お仕事中なんだからあんまり困らせるんじゃないよ」

 俺の表情がさえないのに気付いたのか、そう言われて。隆維君はムゥっとしてる。お客様に心配させるなんて、これじゃ配送員として失格だ。

「送料は良いよ。帰る時に持って行ってあげるから」

 俺の仕事への姿勢を思い出し、出来る限りの笑顔を作る。

 俺の中ではたくさん受注を受ける中の一荷物だが、お客さんにとっては届ける相手に対しての大切な気持ちが形になった唯一の物。それもユキさんに、だ。希望の通りに『こっそり』は渡せないかもしれないけれど。夜這いしたとか言われてタカさんに追い回されるか、子馬の奇妙な折鶴に攻撃される。

 ともかく丁寧に受け取ると、少年の、にぱっと嬉しそうな笑顔が溢れた。

「二十五日の午前中だから!」

「預かり伝票あげるね。はい。大切にお預かりします」

 お金は取らないけれど、伝票は渡しておく。すると思いついたように、

「うん。あ、そーだ。二十四日の二十五時以降でもいいよ?」

 その時間指定は……クリスマス、イブ、か。

「うちの子がワガママを言ってごめんねー」

「いえ」

「じゃあ、配送の方お願いします」

 他の荷物を後ろに仕分けし、少年のユキさんへの荷物は先程までドリーシャの座っていた席に置いた。

「イブか、クリスマスか、せめてどちらか……クリスマスはユキさんの誕生日だしな……今週、もっと詰めるか」

 シフトが厳しいが、詰めれば何とかなりそうな感じがあったので頑張ろうと思う。

 トラックを出すと雪はまだチラついている。通りがかりに先程の浜を見たが、格闘の足跡が残るだけで、子馬と海さんの姿はそこにはなかった。

llllllllllllllll

現在不定期更新(自転車操業)

llllllllllllllll


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん ドリーシャ レディフィルド君



URONA・あ・らかると

http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

旧水族館、隆維君父、隆維君、涼維君、鎮君、千秋さん


問題がありましたらお知らせください。


~では、お荷物お預かりいたします~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ