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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月2日

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381/531

思慮中です(ぎょぎょ)

llllllllllll

少し時間を戻して。

一人残ったぎょぎょ。

llllllllllll






 タカに賀川、子馬を見送ったぎょぎょは暫く皆の入って行った洞窟の側に居た。中では何があっているのか気にならない事もなかったが、彼は移動をかけた。何かよからぬモノが近づいてくる気がしたからである。毛繕いに勤しんでいたドリーシャも木を渡るようにその後について来ているのを感じながら、大きな銀杏の木の側に出た。

 だが、なにも変わったモノは見付けられず、

「もうあの洞窟には自力では辿り着けんか」

 そう呟いて側にあった折れた樹をベンチ代わりに座って空を見上げる。

 辿り着くまでは子馬が『遠回り』をしたので時間がかかったが、洞窟からは直線で二十分と離れてはいなかった。だがもう来た道を普通に戻っても神聖な雰囲気を漂わせていたあの場所には行き着けないと、何となくわかっていた。逆にここに居れば皆、来るだろうと確信めいた気持ちでそこで銀杏が舞う様を眺める。

 森の中でも樹が密集しておらず狭いが広場の様になっている為、日差しが温かい。傍には深い沢があり、そこから登ってくる冷気もここまでは届かない。空の青に、銀杏の黄色、森の木々の静かな流れにホッと息を吐く。

「冴にも、見せてやりたかったな」

 何が起こるかわからない為、連れてこれなかったが、家で待つ新妻に心を傾ける。

 煌めく黄金の葉っぱの舞。風に揺らぎ、高い冬の青空に舞う様は心を洗うような森の風景。彼女もその美しさに驚いてそしてうれしそうに笑ってくれるだろうと想像し、それだけでほっこりと幸せになるぎょぎょだった。

 籍を入れてまだそんなに経たないが、昼間の彼女は幼い姿の時と変わらず聡明で甲斐甲斐しく尽くしてくれている。夜も……ゆっくりとながら時を重ねられるようになり、二人で眠りに落ちる瞬間は人生の幸せとぎょぎょは感じていた。

 妹の事だけに思いを向け、弁護士になってからは人生のすべてを犯罪の被害者を少しでも救えるように走った年月。容姿の事もあったが、誰にも預けられなかった心を休める場所がある事を嬉しく思う毎日を過ごしている。

 ただ数日前に清水夫妻の結婚式に出たせいもあって、写真を撮りに行くためのドレス選びに冴はとても嬉しそうにしていた。それが自分の容姿に難点のあるぎょぎょには苦い所なのだが、それ以外は殆ど問題なく……

「いや……」

 ぎょぎょは眼鏡をかけなおしながら、振り返る。

 籍を入れてタカが早急に設えてくれた新居が片付いた頃だったろうか、一度だけ夜中に冴が騒ぎ出した事があった。

 弟の名や母親を半狂乱で呼びながら、部屋を見回し二人の姿を探して……

「冴、さえ、もう、いいのだ。弟の玲は無事だ。投げ槍の家で暖かく暮らしている。母上も安らかでいるはずだ、冴、俺だ、とにかく落ち着くのだ」

 何度も何度も抱きしめて、言い聞かせて、ようやっと落ち着いた彼女が謝ろうとするのを止める。

「お前は何も悪くないのだ。悪くない」

 卑劣な犯罪、傷つくのは巻き込まれた被害者だけではない。その傷は冴を長く蝕み、つい先日まで自分の大切な弟を傷つける事でしか逸らせない程に酷かった。まだその傷は完全に癒えた訳ではない。

 正気に戻った冴はがっくりとうなだれ、悲しそうに涙を落した。

「こんな面倒な女、お嫌になられたでしょう……あきらちゃんが……夢を見てつい……もう大丈夫だと思っていましたのに」

「面倒? そんなことはない。お前は俺の妻だ、なぁ、寄り添って生きていくと決めてくれたのだろう? だから一緒に居るのだ……ずっと……ゆっくりでいい、何も急ぐ事はない」

 その背を撫で、黒髪を梳き、肩を抱いて、小さい男の手が不器用に涙を掬う。

 後日、専門の医者に行き、自分も含めてかかりつけた。今まで彼女を医者に連れて行った者などいなかった、彼女は表面上『荒れた事』はないとなっていた為だ。誰も彼女に口出しなど出来る立場の者が居なかったという事情もある。カウンセリングと共に薬も処方されたが、何より支えとなるのはお互いであるという事を再確認する事になった。



 そんな事を考えていたら、俄かに空が曇る。

 だが雲と言うには厚い何か……

「い、……岩?」

 それは岩や石で出来た塊だった。そんな重い物が空を飛ぶ、にわかには信じがたかった。だが、昨日アンドロイドの『金剛』そしてタカが相対した者が、コンクリートを剥いで投げつけて来たのは聞いていた。その為、あんぐりと口を開けている時間は短く済んだ。

 反重力で浮いた岩は、辺りに次々と投下され、その勢いで地面を巻き上げ、クレーター状の地面を作り始める。ぎょぎょの上にも容赦なく降り、危うく潰されそうになりながら逃げる。そうしながら岩の跳ね方が微妙におかしいのに気付く。

 空……何もない空間にまるで硝子の壁があるかのように岩が跳ね返ってくる場所があった。

「不可視の壁を物理で壊す気か!」

 先程子馬が丁寧に必要最小限の『開錠』ですり抜けた『結界かべ』を壊そうとしているのだと察する。全てはあの洞穴、つまり御神体の滝があると目算して進んだ場所に至る為の行為と気付いたぎょぎょと、視界にやる気のなさそうなひょろい男を見つけるのはほぼ同時だった。

「うけっ、うけけっ。いいものみぃ~つけ、うけけけけっカッパかっぱぁ~」

 逃げ回る河童のような生き物を見つけた途端、口の端を釣り上げて不気味な笑い声を上げる男。

「誰がカッパだ失敬な……」

 そう呟きながら地面に落ちた木切れを拾って、男を叩くべくぎょぎょは落ちてくる岩を縫って動き始めた。


llllllllllllllll

現在不定期更新(自転車操業)となってます。

今週は何とか更新できました。ありがとうございました。

土日祭日は現在毎度のことながらお休みですが、来週は月曜もお休み。

水曜以降から書きあげと更新準備が整い次第の更新に完全変更、

更新頻度が冬季休暇中は下がります。

申し訳ありません。

lllllllllllllll



キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

ドリーシャ



"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水夫妻の結婚式があった設定


『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


『金剛』弥塚泉様より


『ルイス』小藍様より


お借りしました。

問題があればお知らせください。

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