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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月2日

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380/531

疾駆中です(タカとぎょぎょ)

lllllll

真っ直ぐに、友の元へ。

lllllll






 タカは漆黒の闇をオレンジの光に導かれながら突き抜けていく。迷う事のない足取り、力強く俊敏に友の為に走る。



 ぎょぎょは剣の才に恵まれた男だった。

 幼き頃より父に叩き込まれ、友と切磋琢磨した。体格は小さくあったが、その俊敏さは群を抜いており。備わった力は歳も行かぬうちにしっかり根付き、体格さえ凌駕する技を身に付け、いずれはその道に名を残すであろう勢いで伸びた。

 だが……妹が救えなかった事でその剣を捨てかける。が、手放し切る事はなく、彼なりの道を歩むうちにそれをモノにしていた。

 大会に出る事もなく、段も無ければ実績は世の中の何処にも記録されていない。それでも全日本剣道選手権大会優勝経験者の親友、梅原 勝也とそれなりの戦いをできる腕を持っている。

 剣の道に関してそんな奇妙な経歴を持つ弁護士、カッパによく似た面構えの男をタカは思う。



 丸腰でココには来ているが、木切れの一本も持たせれば、身長の低さを生かした独特な動きと神の如き太刀筋を見せる男なハズ。

 その普段外さない眼鏡が割れ、血塗れなのを見てタカの心は騒いだ。

「きっと……他の誰かの血だ。アイツに手を出すなんて運の悪い奴だなぁ。きっと返り討ちにしたに決まっているだろぅがよ……」

 ならば、あの白い鳥はどうして眼鏡を運んできたのか。小動物にしては賢く、賀川に従っていたその鳥が意味もなくそんな行動をするとは思えない。

 多勢に無勢、そんな言葉が脳裏を過ぎる。

 それでも普通の輩であるならぎょぎょの手に負えない者はないだろうが、妙な力を使う者が牙を向いたなら……

「早く外に連れてけよ……頼む、ぎょぎょの奴が……」

 ひらり……

 かつての仲間が折った蝶の折り紙。

 その昔、たくさん作らせて困らせた思い出。皆で仲良く騒ぎ、遊んだ、幼いあの日々は遥か遠く、若くして幼き子供と妻を残して死んだ男。自分が行くべき場所で亡くなった『おんま』の姿を蝶の光に見る。

『タカさん……行って、早く……もう、何も失わないように……』

 どこかで聞いた優しい女の声が誰だったのか思い出す間もなく。



 闇を……抜ける……



 立ち眩むほどの光、冬の空気は寒く洞窟内は暖かだった事を感じる暇はなかった。後ろの洞窟の入り口が光に消えた事も、気付く事もなく、

「おらぁっ、やめろぉ~!」

 そこには赤い刃を振り上げる男が居た。近くには倒れた小さな男の体。

 タカは何迷う事なく、刃物を振り上げた男に向かって行った。だがその刃が自分に向いた途端、死を覚悟した。それは狂気の塊のごとき剣気。それでもタカの勢いは殺される事無く、体格の小さな親友の為に相手の攻撃レンジに身を踊らせた。

「な、げやりっ」

 そこに居た誰よりも素早く、タカの視界に割り込む小さな影。その腹部にめり込むように押し戻される感覚と飛び散る血。タカはその小さな影を抱きしめるような態勢で赤く染まる視界の中、自分が飛んだ距離を無くすかのように、元の位置にすっ飛んで行く。そこにもう暗い入口はなかったが。

「真剣を握った者に生身で飛び込む奴があるか! 投げ槍っ」

「よかった、生きてんじゃねぇか……やっぱりその速さと小ささは伊達じゃないなぁ、ぎょぎょ」

「お前って奴は……意識を逸らしてくれたおかげで串刺しにはならんで済んだが、ちょっと……切られたか……」

 タカの腹部をタックルの要領で止め、更に敵から退けさせたぎょぎょは額から血を流していた。かなり逃げ回ったのか泥で汚れ、頬などに打撲痕がある。そして今、背に負った傷からそれなりの出血が見て取れた。

「昨日、だったか……石を自在に操る話を聞いたが、その手合いがいた……ソコの沢に落してやったが、その時に……」

「来んぞ……だが、どうして……」

「邪魔が入りましたねぇ。ここで貴方を仕留めておかないと色々困るのですよ。丁度いいので、二人まとめて送りましょうね」

「篠生……さん、アンタが何でココに? いや、違ぇ……な。お前ぇは誰だ?」

 目の前の刀を握った男は、先程洞窟内で出会った篠生と言う男に瓜二つだった。篠生が最後に言い残した『私に会う』とはこの事だろうと察した。

 ただしその服装は漆黒のスーツではなく、パーカーにジーンズと言った軽い感じで眼鏡はかけていない。『神』を名乗るならば、同時に二人存在する事も可能なのかもしれないが、『何か、どこか、違う』と、タカの本能がそう告げていた。それに……その男が握った赤い宝刀は先程見た刀とほぼ同じだったが、刀身の赤は黒に近い、静脈の血液に近い赤。それは賀川の体に突き刺さった刀の透明度の高い、炎を思わせる鮮烈な赤とは違うモノだった。

 何より、その柄の先に『玉』が嵌っていたがそれは闇を思わせる漆黒。

「宵乃宮……と、名乗るのが一番通りがいいですね。やっと力が回復してきたので来てあげましたよ。さぁ……巫女を……白巫女を手に出来るチャンスを、今度こそこの手に……それには邪魔を排除しなければ……彼女を人柱に、新しい『星』を手に入れる為に」

 かちゃり。

 剣から放たれる瘴気が眼鏡を外したぎょぎょには見える。タカもその禍々しき雰囲気に眉を寄せつつ、

手負いのぎょぎょを背に隠しながら隙を窺う。だが相手が握った凶器かたなに対して達人の域にあるのを肌で感じ、ぎょぎょを庇いながらの勝機は低く感じられた。

 それでもやる、と決めたタカが踏み込みを深くしようとした時、

「投げ槍っ、飛ぶぞっ!」

「な……」

「こういう時は逃げるが勝ちだっ」

 ぎょぎょはタカの襟首を掴んで引っ張ると、そこに足場はなく深い沢。そこに二人は叫ぶ間もなく転落して行った。



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現在不定期更新(自転車操業)となってます。

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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/


梅原勝也氏


お借りしました。

問題があればお知らせください。

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