表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月2日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

377/531

打ち合わせ中です(秋姫)

lllllll

赤き刀に貫かれた賀川。

lllllll








 秋姫の緩い動きと篠生の隙をついて、彼女の力とこの場所にユキの為に貯められた力を奪うため、宵乃宮がやってきたと言う。それは昨年のゴールデンウィークの後の事。それを撃退するため、秋姫は命を落とし、ユキは一年後まで森に一人暮らした、帰らぬ母と、時折やってくる配送人の賀川を待って。静かに。

 それが破られたのは彼女が体調を崩した為だった。




「を……おい、何て事を……」

 串刺しと言うか、射抜かれたと言った情景は余りに残酷な処刑だったが、急に賀川の体に刀が吸い込まれるように消えた。そのまま体が地面に倒れる。やっと動けるようになったタカは賀川に走り寄った。意識がなく、疲労感の溢れる賀川だったが、喉元に傷はなく、飛び散った血も誰かが舐めとったかのように消えていた。

「篠生さんよ、これは……幻、なのか?」

「近いかもしれませんね。でも痛みも衝撃も見た目だけありますよ。ああ、零れた血は勿体無いので私がいただきました。そのままじゃ表は歩けませんしね」

 ちろり、と唇を舐め、

「私は誠との契約的に彼を殺せないので、彼に傷つけた事も無効になるだけです。別に不死身になった訳ではないので、彼を刺したら普通に死ねますから、勘違いなさらぬよう」

 憎いわけでも敵対しているわけでもない。

 むしろ親しいと分類しても過言ではないハズであるのに。死なないとわかっていた所で刺殺する勢いで刃物を向ける行動を何のためらいもなくする男。普通の人間とはまた一線を画した思考をする篠生にタカは畏怖を覚えずにはいられなかった。

「では続けましょうか……」

 説明を求めた賀川をダウンさせていたが、篠生は興味なさ気にかまわず話を続ける。

「……そして、冬が来て、夏が来る前、巫女は体力が限界になった上、体温低下と脱水により具合を崩したのです……私は宵乃宮を撃退後、一年以上、森の広範囲にかけていた結界を解き、玲様以外の人間を故意に彼女へ近付けました……それに一人で居るのは限界が見えて来ていましたしね」

 タカはユキがあの小屋でころりと横になっていた姿を思い出す。

 蟻が這う床の上、花がバラバラと散らばった部屋に眠る白髪の少女の姿は、まるで棺の中にあるようだった……と。

「その後、秋姫が言った通り、ココには再度、祝福の力が集まりました。が、ココにあまり好ましくない者が住みつきましてね。その力を渡したいと思える相手ではなかったので、全力で隠し、その間に彼女はその者に触れ、『呪い』をかけられました。その為、とても祝福を受けさせて耐えられるとは思えなかったのです。それで祝福を先送りしました」

「その時に集まった力はどうしたのですか? かぐつち様」

 子馬の疑問に篠生は一度目を細め、ちらりと金の瞳を覗かせて、

「そこで初めの此処が荒れた話になるわけです。集まった力は放っておけば危険なので。私は仲介により、その力を『悪魔』達に喰らわせました」

「ええええ? ぁ、悪魔ですか?」

「ええ、その『悪魔』達を追ってきた『堕天使』達を介して一掃してもらう事で、再びここは何もなくなりました」

 危ないやり方だと子馬は思った。もし堕天使と呼んだ者達がしくじっていれば、どうなっていただろうと。

 それにしても……悪魔と堕天使の違いが良くわからない、専門は香取の小父貴の方かなどと思っているうちに、

「もし彼女らに出来なければ火の海を生み出しただけです。出来ないと思わなかったので仲介したのですがね。世の中、不確定要素は多分にありますから心配はわかりますがね」

 ニコリともせず、サラリと流される言葉。

 ぐったりした賀川を抱き寄せたまま、タカは篠生を見た。

「ユキのやつぁ、確かにこの頃は疲れが溜まりやすい感じだったが、その『祝福』とやらを受けた方が良いのか」

「受けなくても良いですが、彼女、早死にしますよ。今の玲様の年、イヤ土御門当主の年齢を越えられるか……受けないならもう力が溜まらない様にしますが……」

 にィと悪戯に笑ったのを見て、タカは慌てて否定した。

「いやいや、篠生さんよ。受けさせねぇなんて言ってるんじゃねぇ。例えばの話だかんな? で、次に溜まるのはいつだ?」

「二月……頃だと。それでそろそろお知らせと、巫女が言い出す前に秋姫を迎えに来て欲しいと……」

「かぐつち様? 初めは春から夏までの半年で溜まり、その次は一年以上かかり、今回は夏から冬でこちらも約半年。……何故溜まるのに時間差が?」

「初めは秋姫が急いだのです……親心と言った方が良いでしょう。次はゆっくり自然に任せるままに溜まったモノです。しかし今回は自然しゅくふくがわの方が、巫女の体の変化に気付き出し、急いでます。受け取るタイミングは彼女伝いに知らせましょう」

「かのじょ?」

「呼ぶまではココに巫女は連れない方が良いでしょう。余り気持ちの良い場所ではないハズですからね。ココに残った思念は彼女に何を見せるかわかりません」

 くるっぽ、くるっぽと言う鳴き声と共に降ってきたのは白い鳩ドリーシャ。その足に何かを握って飛んでくるが、賀川が倒れている事で、降りる場所を失ったように皆の頭上をバサバサ旋回する。

「今度巫女が受け取れない状態になれば、ココに溜まった力を分散させる方法は考え付きませんね。そう上手く悪魔がやって来て、それを潰しに堕天使がやって来るなんてもうないでしょう。もしもの場合はこの森ごと焼き払い……出来れば避けたいですが……それもこの一~二年で何度も力を集めている、次が溜まり切るまでの時間は相当かかるでしょう。その場合、その間に巫女は逝くことになる可能性も……」

「そんな事言ってくれるな、篠生さんよ! 連れてくりゃいいんだろ」

「二月が最後の祝福のチャンスって事ですか?」

「そう思ってくれてイイと思いますよ。来なさい」

 くるぅ~ぽぉ……

 何とも迷ったような声を上げながら、賀川の胸に舞い降りた。

「早く行った方が良いですね。……後、貴方達は『私』と会うでしょう。気を付けて……」

 まだタカには聞きたい事があった、ユキの『本当』の父親、自分の息子に何があったのか、他にもきっと……色々とこの男は知っていると直感していた。

 だが、質問は許されなかった。

 何故ならドリーシャが運んできた物は、魚沼の底瓶眼鏡。その分厚いレンズがひび割れて血まみれで、それに触れた彼女は純白の胸毛を赤く濡らしていた。


llllllllll

『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/


夏に来た堕天使(ベル姉様とリズちゃん) 悪魔(魔本、アラストール)話題に


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

(二つ前もチラリ使用です)


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

ドリーシャ

llllllllll

ストック切れと冬休み前の本業が今週より忙しく、

不定期更新となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ