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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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361/531

交錯中デス1(悪役企画)

llllllll

ユキサイド、三人称です。

llllllll







「疲れたんだろうが、もう寝たらどうだ、ユキ」

「そうですよ、巫女様」

 風呂から上がってきたタカと子馬に声をかけられるが、ユキは目を擦りながら首を振る。

「いえ……もうちょ……と……っと、子馬さん、様付けはやめ……下さい、ねぇ…………」

 殴られた箇所にはガーゼが当てられ、氷で冷やしながら、コタツでウトウトしている。その後ろ隣には白髪の賀川……ではなく、金剛が正座で控えていた。

 工務店務めの者達には、小さかった方の冴の兄とか、つまり賀川の血縁だから似ているとか適当に言い通してある。今日一日、タカが現場を抜けた事や、ユキが怪我していた事で色々あるのだろうと察して、皆、大人しく自室に引き上げていた。

「ほら、高馬。湿布。タカさんも。無茶しないで下さいよ」

「け、こんなのはかすり傷にも入りゃしねぇよ」

「ダメですよ、タカさん。色々、いつまでも若くないんですから。ああ、いいからユキさんは座ってなさいな?」

 甲斐甲斐しく世話をする葉子に、ユキも動いて手伝いしようとするが、そう言われると氷の上に頭を乗せて、ゆったりコタツに突っ伏した。疲れやすさに拍車がかかっているように見えて、タカは心配だったが、賀川の消息を気にして寝ようとしないユキに溜息をついた。

「まだ連絡はねぇか? 子馬」

「はい。こっちには着信ないですね」

 ユキが行方不明になって、誰彼が時間があれば賀川へ留守電を残すなど何度か連絡をしていた。だが返信はなく、彼女が見付かって、何とか保護した後、後処理や金剛の騒ぎなどに巻き込まれ、その後『ユキは無事だ』と誰も彼に連絡をしていなかった。それに気づいて少し前に電話をしてみたものの、留守電すら入らず、圏外状態になってしまっている。

「ほら、ユキ。帰ってきたら知らせてやるから」

「でも……」

「きっと何て事はねぇで、久しぶりの仲間との対面でハメ外してんだろうがよ。海外からわざわざ会いに来てるって聞いたが、てぇ~事はそれなりの仲って事だろ? 女らしいし。アイツは印象は薄めだが、悪かない面構えだ……この時間なら酒でも飲んで積もる話でもしてりゃ、遅くなってしかるべきで。可愛いねーちゃんなら、そらぁ賀川も男だしなぁ……」

「タカさん!」

 何とかユキを休ませようと紡いだ言葉が完全に地雷であるのに気付かないタカ。葉子に名を呼ばれて、ジト目でユキに睨まれているのに気付き、居心地悪そうにその目線を避け、剥いて置かれていたリンゴを食べ始める。隣で子馬が洗っただけで皿に積まれたリンゴを皮ごと黙々と食べていた。

 その時、家の電話が鳴り響く。湿布を子馬に渡しながらタカさんにも貼ってと指示しつつ、葉子は電話を受けに行った。

「あら、寿々樹ちゃん? ……そうなんだけど、賀川君が戻らないのよ。……何の話なのよ? ……まぁわかったわ。え? そ、そうだったわね……本当? ……えええ? そう、ね。じゃあそう伝えておくわ……」

 間に空白が入りながら、そう話してからパタパタと戻ってきた葉子が、笑顔でユキに告げる。

「賀川君、寿々樹ちゃん所に泊まって来るんですって」

「え?」

「今晩は賀川君、寿々樹ちゃんとゲームするから泊まるって。ほら、あそこは一応病院だから携帯の電源落していたみたいよ。その海外のお友達は八雲さんの知り合いみたいで、女同士で喋ってるみたい」

「ゲーム、ですか……鈴木さんゲーム好き……でしたよね」

「え、ええ。賀川君もココの子達とやってるから。きっと寿々樹ちゃんに引き留められたのじゃないかしら? ユキさんが無事に帰ってるのは知っているわよ。さ、賀川君の居所もわかったのだから、自分の部屋で寝なさいな」

 ユキは一瞬赤い瞳を泳がせたが、とろりと意識が溶けていく前にと葉子に促されるまま立ち上がる。

「おやすみなさい、タカおじ様。葉子さん。子馬さんと金剛さんも……」

 ふらふらと彼女がコタツから出て行くその背を見送って……っと思ったが、そのまま柱に懐いて寝ようとする。葉子は溜息をつく。

「金剛君、ユキさんを抱えて。出来る? 電気代だけ働いてね」

「……はいデス」

 壁に刺さっていたコンセントを抜いてしゅるりとコードと共に踵に収納すると、葉子に言われるままに金剛は彼女を抱えた。ユキは眠ってしまったのかその腕に静かに納まる。

「こっちよ、お願い」

 スタスタと先導する葉子とその後ろを追う金剛の姿を見ながら、

「葉子さんは順応が早い、な。おい。しかしアレが機械仕掛けなんてな。賀川よりいいんじゃねぇか?」

「モノにも心は宿りますからね」

「子馬の『目』にもそれが見えるって言うならそうなんだろうがよ」

「目に見えなくても、小父貴もちゃんと感じられるでしょう?」

「まぁユキに対して特別な感情があるみたいだが、なぁ」

「心配はそこですか、娘に対する男親としてですかね」

「お前も娘が出来ればわかるこった。息子もイイが娘も……子供って言うのはイイもんだ」

 離れにユキを送り届けた二人が戻ってくると、子馬は手元から折鶴を飛ばす。手元に残った折鶴を見せて、

「巫女の回りに置いていたコレ、壊したの君?」

「はいデス」

 子馬の質問を肯定しながら金剛はまた同じ位置に寸部違わず座った。彼女を連れて行った『賀川』の正体は間違いなく彼で、守りと置いていた折鶴式の式鬼を破ったのも賀川ではなかったからかと確認する。

「これ、けっこうすごいスピード出すけど……」

「動きに変化が少ないため、計算が容易デス」

「なるほどね、改良しないとダメだね」

 子馬は手元の折鶴を手から手へ移しながら呟く。

 表情無く座る金剛に葉子が寒くないのと聞くと、こくりと頷き、やっと少し笑った。それを確認して自分はコタツの方に座った。

「寒かったら遠慮しないのよ? それにしてもユキさん、体調、余り良くないわねぇ。昨日の結婚式が終わった後の良い感じの疲れじゃなくて、酷い疲労って感じになってしまって」

「もともと体が強い方じゃねぇのかもな。見た目もああだしよ」

「女の子ですからねぇ。女性として体の変化が来てからおかしいみたい。お医者で診て貰った方が良いかしら」

 タカと葉子の会話に子馬は首を振った。

「いや。巫女の体質的なモノだよ、母さん。『女の人』になって数年で『力』が上がる一方、ガラスみたいに壊れやすくなるんだって記録がある。それでも刀森の女が色々支援するとだいぶイイみたいだけど、その『方法』は失われてしまったから」

「……うまくしたら私が支えてあげられるかしら?」

「母さんには……伝えられてない以上、刀森である事は関係ないから。それに小さい頃から巫女なら受ける『修行』を彼女は受けていない、ただ家系として受け継いだだけだから仕方ないよ。昨日の様な楽しい祝事はともかく、普段はあんまり波風のない生活を送らせてあげるのが良いとは思うけど、ここではそうも行かないし」

「だからってユキをお前の所に行かせる気はないぞ?」

 ははは、っと、誤魔化す様に子馬は笑った。

「でも手におえない時は公暗こちらで請け負いますから」

「いらねぇって言ってっだろ。……で、葉子さんよ。賀川のはどうなんだ?」

 タカは賀川の行動を見越して質問する。

「どうせ何かやらかしたんだろうが。ユキの事を知っていて、様子も見に来ずに、寿々樹と『げぇむ』なんてあり得るわけねぇだろう」

 そう言って腕組みをした。



『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。

『金剛』弥塚泉 様より


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

土日祭日はお休みいただいて、その後連載復帰です。

何話分かストックありますが、不定期更新とさせて下さい。


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