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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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奪還戦終結デス7(謎の配達人)

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『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(11月4日付)に賀川参加中。

当方現在12月1日。『アリス奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より一か月ほど『後』の話になります。メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが各々『別日』の話になります。

では、お楽しみくださいませ』

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死の淵に沈む。

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 山中とは言え、炎はまだ強く、施設から上がる煙は空を穢していた。それでも誰も来ないのは、報道規制でも敷いているのだろうかなどおぼろげに考えながら、レディフィルドはガムテープが巻かれ、切られたコートの下から、溢れる賀川の血を見やった。

「こんな状態で。よっく生きてんなぁお前。感心するぜ、あきらちゃん?」

 いつもなら聞けば飛びついてレディフィルドの胸ぐらを掴んで揺らしてくるセリフも、今の賀川に反応はない。死にそうな男を目の前にして、流石にレディフィルドも『おい、起きろ』と連呼して取り乱しそうな衝動に駆られなくはなかった。

 この所、縁浅くない付き合いをしてきたのだから。だが冷静である事が今は求められているのがわかっているレディフィルドは出来るだけ平常時の口調で呟いた。

「どんだけ血の気が多いんだって……」

 もう、普通に『死』しか選択肢のない賀川を見やる。慌てて圧迫した所でもう手遅れでしかなかった。レディフィルドは愛鳥ルドのくちばしにあるヒールを視界に収める。

「日に二度も(葬送す(おく)る)、なんて勘弁だぜ。カガワ? おぃ、死にたいなんて思わねぇよな? お前の(生命)は、まだ終わっちゃいない」

 ……命の時計が壊れ『終わって』いた撫子、だが目の前の賀川は微かながら砂時計が落ちているのを感じるレディフィルド。失った砂は多いがまだ『刻んで』いるなら彼にはまだ『手』があった。

 賀川の首から下がる青い石。アリスにドックタグを触らせた時に取り出して、隠す間もなく胸に下がったままになっている。

 青の石は迫る夜闇に微かな光を宿して仄かに輝く。引き合う者……きっとセツだろ?……が、賀川を想い呼んでいるのだろうとレディフィルドは思う。

 この石はレディフィルドの守る少女、汐から送られた『夜輝石やこういし』と呼ばれる貴重な石だ。レディフィルドの耳にきらりと輝くそれも、賀川の石の光を受けたように今は青く輝く。

「しっかし思えばいつも、ぶっ倒れてんなぁお前。……大事なモンを守れても、てめぇが倒れてたら世話ねぇんだぜ?」

 そう呟くが、やはり賀川が意識を取り戻す気配はない。

 それを見やってはぁ、と息を吐き。ガリガリ頭を掻きながらぼやく。

「……『アレ』っきゃねーか。あんま、使いたくね〜んだが、なぁ……」

 眠り込んで脈拍ももう薄く、顔色も無いに等しい賀川を覗き込む。

「……ったく。お前、まだ訓練代、払ってねーだろ? ま、汐ん時世話になったからな。……しゃーねぇ、いっちょやってやるか」

 軽い口調で呟き、傷口を見て、手を翳す。

 ゆっくりと……

 彼の耳の飾りが光を放つ。賀川の首から下がったそれも微かに明滅をはじめ、それが輝きを増し、二つの光は次第に青さが深まり、深海の蒼を帯びる。

「俺様が出来んのは、傷を塞いでやる事と、魂を一時的に、留め置いてやる事だけだ。後は賀川、お前の運……それに生きたいって『想い』次第だ……」

 石が青く光る、その空間でレディフィルドがゆっくりと賀川の命の音に合わせて『ルーン』を組み上げて奏でる。



『〈Z〉アルジズ 保護』

『〈S〉ソウェル 生命力』



 二つの音が一つになって、それは共鳴を起こし、賀川の胸に下がる青い石も重ねて強い光を放った。彼のドックタグがそれを反射し、傷口を照らす。

 じわり……塞がる傷。だが青い光よりも溢れだす赤い血の方が勢力が強く、塞がり切らない。

『このまま『逝く』のが自然の摂理……ってか?』

 諦めれば死の韻律が賀川の体を満たそうとしており、レディフィルドの作った『ルーン』はそれに対抗してそこに渦巻く。



 生と死。



 単純な二つがそこにせめぎ合う。


挿絵(By みてみん)


 本来なら死に傾こうとしているそれを覆すのは簡単な事ではなかった。

 レディフィルドと賀川は知りあって日は浅かったが、死者への手紙の配達人と受取人として繋がり、ここ一か月などは非日常的な戦場を今日含めて三つ駆け抜け、賀川の耳を訓練するなど縁は深く。

 不思議な力に恵まれた少女を守ると言う流れも近く、汐が渡した夜輝石を媒介に。何とか命を繋ぎとめようとするレディフィルド。

『たり、ねぇ……』

 だが、僅かに『足りない』。

 髪の毛の太さ程の。

 ほんの爪先程の。

 吐息程の。

 何かが『足りない』。

 人の命をこの世に繋ごうとする時、レディフィルドが感じる『取りこぼした』時の既視感。その感覚に秀麗な顔立ちが疲労を見せる。

『戻れよ、カガワぁっ! ざけんじゃねー。『次に会うまで、逝くんじゃねーぞ』とは言ったがな、 死にかけ(逝きかけ)でもイイとは言ってねーぞ? 無事でいろって意味だろうが! おい、玲っ! きーてんのかっ』

 その名を……心で呼ぶ。

『お前が行くんは、まだソッチじゃねぇだろーが……こんなトコでお前ぇが死んだら、雪姫セツはどーすんだよ。本当に命を賭けなきゃなんねぇのは……さっきの女じゃねぇだろーが』

 レディフィルドはその顔を覗きこみ。

 賀川の上半身を抱き起す。手にベッタリと張り付く血の感触に肩口の傷を見ながら、

『おいおい、ボッロボロじゃねぇかよ。どんな戦い方してんだよお前は。地雷には突っ込んで行くわ、傷口は段ボールにガムテープだしよ。……こいつ、俺様以上に危ねぇんじゃねー?』

 ……お前ほどじゃないレディレディフィルドと、起きていたら暗い口調でぼそりとそう言うだろうとレディフィルドは想像し。だが血の気のない賀川は身じろぎもせず、その肌は冷たく。レディフィルドはもう一度、ルドのくちばしにあるヒールを見やる。

 彼は死の間際、撫子と約束をした、『赤いトカゲの指輪を取り戻してやる』と。たぶん賀川の戦いに、ユキを守るソレに引っ付いていれば、間違いなく『そいつ』に辿り着く筈だ。

 その汚い手で撫子を弄んだあいつらに。

『逝って早々だけどよ。こいつ(カガワ)がそっちに行こーとすんなら、悪りぃけど留めてくれ。『まだ』、早えぇんだよこいつは。……こっちで今から『引っ張る』。その間だけでいい……撫子、お前の『指輪しんじつ』に近付く為に……』

 レディフィルドは賀川の顎をそっと掴み。

『……言っとくが。俺様に、 チェーイールー(あいつ)みてぇな『趣味』はね〜からな?』

 そう言って色のない賀川の唇に、己のそれを重ねた。



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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

レディフィルド君 ルド君 汐ちゃん

チェーイールーさん 夜輝石


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『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


『木曽 撫子』 YL様より


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。


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