奪還戦終結デス5(リズさん)(謎の配達人)
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『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(11月4日付)に賀川参加中。
当方現在12月1日。『アリス奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より一か月ほど『後』の話になります。メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが各々『別日』の話になります。
では、お楽しみくださいませ』
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亀裂は深く、炎が上がる。
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余りの間の悪さにリズは茫然とした。
目の前の亀裂は下階からの炎で壁を作り、巻き上がる風はもう輝きを失いつつある空に向かって炎を一段と高くする。
溝は深く、幅がかなり空き、上がった炎はその向こうに倒れた賀川を飲み込まんとしていた。だが意識を戻す事もなく眉一つ、指先一つ動かさずそこに寝そべり、さながらに死んでいるように見えた。それでもリズの跳躍力なら助走を付ければ何とか飛び移れそうだが、背にはアリスを乗せている。
彼女はリズの様な耐火性のある毛に包まれているわけではない。今も湧き上がる炎の熱さと煙に耐えている。声を上げないのは目が見えずとも彼女も戦士として生きていた経歴と、今はそうする事が自分の仕事だとわきまえているからだろう。
だが、リズが動きを止め、その場を立ち去ろうとしない事、天井が割れた音や瓦礫が落ちて、空気の流れが変わった事にいぶかしげに眉を寄せ、
「どうかしたの? リズ。トキは?」
目が見えない彼女にその場の光景を予測する事など出来ないだろう。まさか今まで側に居た賀川と距離が離れてしまったとは思わず、そう聞くアリス。リズは念仏のように、
『大丈夫っス、大丈夫』
そう告げるしかなく、ひたり、ひたりと後退する。
火の輪くぐりではなく、アリスを出来るだけ炎から遠ざけつつ、賀川のいる場所に降り立つには、跳躍の長さだけでなく高さも必要とした。
『今から……少し跳ぶっスけど、しっかり掴まっていて下さいっスよ?』
「ええ、乗馬はやっていたから多少は平気よ」
『それは頼もしいっス』
背中に翼はあるがこの翼は空を飛ぶためではない。それでもバランスや加速を促す。それをバサリと振って、
『ひとっ飛びっ、いくっスよ!』
本人としては少し小さめの体であったが、間違いなく猛獣の美しい筋肉と毛並、そして普通はあり得ない三つ首をした漆黒の動物が、力強く床を蹴り、傾いたアクリルの壁を踏んで蹴倒し。
高く。
確実に賀川の居るスペースに舞い降りる。
『やっ……』
人間の姿だったらガッツポーズを決めたい程の美しいアーチを描いた跳躍。見事に着地したリズの足元が、ガラガラといきなり崩れはじめた。
『これっ! なぁーいっスよーーーー』
「何? どうしたのっ」
『ううううううううぅ! 大丈夫っス、心配ないっス』
リズは逆走するエスカレーターのように、瓦礫を踏み、駆け上る。魔力を絞り出して自らの体温を調節し背中のアリスを劫火から守りつつ、倒れた賀川の元に必死で舞い戻ろうと努力した。
だが崩れていく建物はもはやリズを待ってはくれなかった。背に乗せた彼女を怪我させないようにするため、一旦上に戻る事を諦め、ガラガラと崩れる瓦礫を避け、建物から出来るだけ安全な距離を取って地上に降り立つ。
その間に賀川が瓦礫と共に落下しない事を祈るしかなかった。
リズが次に振り返ると、そこには爆発を絶えず繰り返すもう骨組みだけになった鉄骨の建物らしき廃墟があるだけで。賀川も落ちて瓦礫に潰されてしまったかと冷や汗が流れ落ちる。
『あれは……』
だが賀川の姿はまだ高い位置に見る事が出来た。
ただ回りの足場と言える場所はほぼ崩れ、彼の体は剥き出しの細い鉄骨にコートの襟首が軽く引っかかっている状態になっている。木の葉のようにぷらんとさがるその様は遠くから見たら、等身大のてるてる坊主でもぶら下げているかのようだ。
『アリスさん、降りてっ。すぐ戻るっス!』
「どうなってるのッ」
どんなに誤魔化そうとしても誤魔化しきれない気配がアリスの口に疑問を乗せたが、リズに説明している暇などもはやなかった。
賀川の肩口から指先へ流れる血が、腹部からの血が、はらはらと涙のように空に舞い、炎に巻き込まれていく。火事の対流で起こる風が意識のない男の体をやわりと一撫でし、翼を失い死を前に失速した真っ黒な鴉のように空中へ落下した。
『くううううううっ、助けるっス!』
アリスを降ろしたリズは四肢に力を込め、走り戻る。
高さは三階分、意識がある時の賀川ならば足を犠牲にしても命までは影響のない降り方ぐらい考えられたろう。だが意識を戻す事もなく無防備のまま炎と瓦礫の中に落ちていく。もっと高さがあったなら落下時間が稼げたが、低いが故にリズのその驚異的な脚をもってしても、落下着地前にその場所に滑り込む事は難しい計算。
『賀川さん!』
リズの頭の中では賀川の葬式が開かれ、ユキが『どうして』と泣きながら棺に抱きつく所まで想像できてしまう。それでもまだ降ってくる瓦礫の雨の下に我が身を晒し、叫んだ。
その声に呼応するかのように甲高い鳴き声が辺りに響き、巨大な影が賀川の下にひらりと舞い、救い上げる。
『フィル!』
それはフィルの操る巨大な白き鳥の影。賀川の体はそのくちばしに引っかかった形で激突を免れる。
だが危機はそれで終わらない。何とか立っていた鉄骨のいくつかが倒れ、瓦礫が一気にその上に降り注ぐ。リズは六つの瞳を煌めかせ、三つの口を大きく開け、魔力の塊を炎とする。迷うことなくそれらを一気に放ち、一瞬で瓦礫を灰にかえた。柱は溶けて融解し、炎の勢いで逆方向に倒れていく。
その隙に白き鳥ルドは天空に一度舞い。その姿を見たリズはワオーンと、長い鳴き声を上げながら、踵を返し、落ち来る瓦礫を身軽に避けながらアリスの元に戻った。
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退避完了。しかし……
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『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズさん
キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
レディフィルド君 ルド君
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お借りいたしました。
問題があればお知らせください。




