奪還戦終結デス3(リズさん)(悪役企画)
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『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(11月4日付)に賀川参加中。
当方現在12月1日。『アリス奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より一か月ほど『後』の話になります。メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが各々『別日』の話になります。
では、お楽しみくださいませ』
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向けられた銃口
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頬を掠めた銃弾。
溢れた血を背筋が凍るほど冷たく感じる。そのまま喉元をするりと滑り落ち、腹部の血と混じりあって、足元に血だまりを作った。側にあったドラム缶に必死で寄りかかり倒れる事だけは避ける、もう、立ち上がる気力がない。立ち上がれないなら倒れない事しか俺に策はなかった。
「何で、だよ」
俺の言葉に泣き声で返事が返る。
「怖いの、トキ。私、貴方に付いて行ったのよ?」
「俺に?」
一瞬、意味が解らなかった。
「コーヒーに薬を仕込まれていたとはいえ、……私……貴方がわからなかった」
「……あの人形か」
俺より腕の立つアリスが、のこのこと連れていかれた理由がやっとわかる。幻覚剤の類いを飲まされ、俺に似せた人形をそれと疑うことなく……『巫女を誘い出すには君に似せるのが良いかと思ってね』っとアンドロイドの指揮者が言っていたのを思い出す。ユキさんを誘い出す時の実験も兼ねていたのかもしれない、と。まさかユキさんが彼をアンドロイドだと認識したうえで、尚且つ一緒に付いて行くという、斜め上を行く行動を取るとは誰も思わなかったが。
俺は声の聞こえる方へ手を伸ばす。ぼんやりと彼女の姿が見えるが、よくわからない。
「ごめん。もっと早くに行けば……俺も良く見えないんだ。頼む、銃をおろし……」
「それ以上近寄らないで、怖いの、怖い……」
「お願いだ、信じてくれ。俺だ、アリス。遅くなったけれど迎えに来たんだよ」
「来ないでっ!」
もう一発、弾丸が放たれた。俺の声だけでよくもまあこれほど正確に撃って来れると思う。俺も耳だけで判断して最小の動きで避けるが、もう物を持たないで立つ事も難しくなっている今、アリスの撃たれてしまう未来が予見できてしまう。
「この建物はもう危ないんだ、早く……」
今のアリスは目を奪われている。声だけで判断する時、それが俺か人形か、わからないのだろう。間違って付いて行き、この状況になったアリスが『怖い』と思うのは当然だ。
しかし建物が微震を続け、少しずつ室温が上がっている。ここもそう長い事はもたない。俺の耳は建物に加わる負荷や爆音を確実に捉えていた。
その上、壁から変な機械音が響く。かしゃりかしゃりと弾の装填される音、ボウガンの切っ先が何処からともなく飛ぶ準備をしていた。
「この部屋……『訓練室』みたいになってるんだろ? 早く、出ようアリス」
「嫌よ、この位置は安全なの。ココだけが安全……」
目が見えない中、銃や弓が飛び交うその部屋で、何とか見つけた安全地帯。俺だって自分の立場なら呼ばれて立って進めるか疑問だった。
アリスは呼びかけに応じない。無防備に立っている俺はこのままではオートで放たれる銃や弓の蜂の巣だ。
その時、ふと手を置いたドラム缶の上に冷たい塊に触れる。目が霞んでいるがそれが銃とわかった。俺は微かな躊躇もなく、素早くそれを構えてアリスに悟らせる隙を与えず一発撃ち放った。
彼女に勝てるモノはそれしかない。普段日本じゃ役に立たないスキルだが。
「きゃっ」
「ゴメン……痛っ」
彼女の銃を弾き落すと一気に詰め寄り、抱きしめる。途端に部屋の中に弾や矢が飛び交い始めた。耳を突き刺す轟音に鼓膜をやられない様に聴覚を絞った。それでも痛いほどの音。
「やめ……てぇ」
「はなさない、生きて連れて帰るから」
「ぁ……ぁぁ……本当に、本当に…………トキなの?」
「…………ごめん、遅くなった……」
銃声は三十秒ほどで消え、見えないとわかっていても俺は精一杯彼女に微笑む。そしてアリサ似の機械『アリス』から受け取った後、首に下げていたドックタグに触れさせ、
「アリスのだよ。俺の噛んだ奴、まだ持っていたんだ」
「トキぃ……ご、ごめんなさい、私、貴方を刺して……」
そう、用心深い彼女だ。
ココに武器になる物は多い。銃だけではなく手元には何かを握っているだろう事は想像がつく。それでもあのまま壁から無人で放たれる銃などの餌食になるよりマシだった。プロの彼女に躊躇はなく、予想通り握られていたナイフが俺の肩口を傷つけていた。それでも即死しない位置だったのは俺を殺したくないと思ってくれたのだろう。そっと抱き寄せて、安心させるために頭を撫でる。
「大丈夫、大丈夫だ」
「でもトキ、貴方……」
痛みはさほど感じなかった。残った銃弾の匂いを嗅ぎながら、ああ懐かしいなと思い、
「とにかくここを出よう。それに服、どうにかしないと、な」
「とき?」
「俺もあんまり目が見えない、だから恥ずかしがらなくていい。それでも帰り道はわかるから……」
ガムテープで押さえてしまっているからコートを脱いで渡せず、ともかく有無を言わさず彼女を部屋から連れ出す。気合を入れて力強く彼女の手を引く。
今まで居た部屋より、隣はかなり煙が充満していたが、ともかく複数の銃口から逃げられた事に安堵する。その時パタパタとブーツが作る足音が響いた。
「賀川さん! アリスさんはいたっスか!」
「リズさん、大丈夫だった?」
「うわぁ……アリスさんあの人形にそっくりっス」
「Who?! だ、誰なの?」
俺は目が多少弱った所で、靴音と声でリズさんとわかり、来てくれた事に安堵した。だが、アリスが体を強張らせ、足を止めるのがわかった。俺はアリスを軽く抱き寄せ、
「大丈夫だよ、彼女は今日、俺をずっと手伝ってくれてるリズさんだよ」
「わ、私は緋辺・A・エリザベスっス。リズって呼んでほしいっス」
「リズ……」
アリスはその名を口にころがすだけで、なかなか警戒を解こうとはしない。
「貴女、何者? ……ヒト、なの」
そんな失礼な言い方はないと思うが、俺が口を挟む前にリズさんはとても優しい声で言う。
「私は賀川さんの仲間だから安心するっスよ? 酷い怪我っス。その姿は恥ずかしいっスよね! 賀川さんあんまりジロジロ見ちゃ駄目っスよっ。何か服、服……」
見ようにも目が良く見えないのだが。リズさんはアリスが失礼な言葉を吐いた事にも全く嫌な気配をさせる事はなかった。アリスを気遣い、彼女に何か、着れるモノを見つけようとしてくれる。
「あったっスよ。誰かの白衣っス。ともかくこれと、このブランケットを……」
アリスは警戒心も強いが、逆に本当の優しさにも敏感で、作り物の優しさはすぐに見通してしまう。リズさんの優しさは本物だと認めたのだろう。アリスの尖った気持ちも和んだようで、肩に入っていた力が抜けるのがわかった。
「アリスさん、ココが袖っスよ?」
「あ、……ありがとう」
目の見えない彼女の為に服を広げて手渡しているようだ。そんなリズさんの屈託のない声はアリスだけでなく、俺も安心させる。そのせいだろうか、一気に頭の芯が、体が痺れを訴えて膝から力が抜け、ぐらり、体が崩れる。息が……乱れるのを止められない……
「リズさん、アリスを頼む。無事に避難させて……」
「賀川さん?」
「北……北うろなの駅周辺に八雲医院という所がある……八雲先生は……クラウド女史だよ、アリス、彼女なら目を……診てくれる……早く連れて行って……」
必死で側にあった何かに掴まろうとして失敗する。
「はは、ちょっと俺、疲れたのかな……ああ、もう、眠りたいな……でもここじゃ……」
「トキ? トキ?! 一体どうなってるの? ねぇリズ」
「こんな所でダメッっスよ。ユキちゃんが待ってるっス。寝るのは家に帰ってからに……」
俺の特別に良いはずの耳が音を掴まなくなる。リズさんとアリスが何か言ってる気がするのだけれど。せっかく訓練してもらったのに使い物になっていないのかと危ぶんだが、たぶん違う。きっと疲れているのだ。
少し。
ほんの少し。
休ませてくれたなら元に戻ると思う。けれど建物はもうもたないだろう。こんな所で寝るわけには行かない。そうとわかっていても、泥沼に引き込まれた俺の意識は上手く浮上しなかった。
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『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズさん
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『以下2名:悪役キャラ提供企画より』
『アリス』『粟屋』 弥塚泉 様より
お借りいたしました。
問題があればお知らせください。




