捜索中デス7ユキ(悪役企画)
lllllllllll
ユキ目線、手塚が車で突っ込んでくるあたりから。
lllllllllll
だって、金剛さん、そのまま帰って、壊されたりばらばらにされたりするのはイヤだって思うんです。悪い人には見えないのです、金剛さん。って、人ではないのかもしれないですが、目の前に与えられた情報を飲み込んで行く様はまるで子犬のように純粋で。無邪気だからこそ、マスターである手塚さんが無理な命令さえしなければ彼は穏やかに生きていけると思うんです。手塚さんにも色々事情がおありのようですが。
ともかく金剛さんを即座に爆破せず、私達を車で跳ねに来たのでもないって言うなら、とりあえず話し合いの場を持とうと思って。
私は飛び出します。
でも随分車が早くて驚きました。怖いなぁ、跳ねられたら痛そうだなぁって思ってたら、金剛さんが叫びながら私を守るように腕で包んでくれます。私達はよろけるように場所を少し下がります。
そして車は私が今までいた辺りで曲がってくれました。下がってなかったら危なかったみたいです。車は止まり切れず、シャッターにぶつかって横に流れます。金剛さんが私を抱きしめました、ちょっと苦しいくらいに。心配、してくれてるんだって思いました。
その時、声がします。
「金剛ぉ……」
「ちいっと、おねぃちゃん。考えてぇな? 死ぬ気やったん? ほんま、酷い目にあったわぁ~来るんやなかったわ」
降りてきたのは遊園地でぶつかったスーツ姿の手塚さんと、ネックレスがチャラりと眩しい鏨さん……戻って来たようです。
後部座席から二人、半袖半ズボンのガタイの良いお兄さんと、細身のお兄さんが降りて来ます。
「……金剛……もう一度言う。巫女を連れて早く来たまえ。そうしなければお前を爆破させる。その事態に陥る事は『人間に危害を与えない』『命令に従う』『自身を守る』と言う三原則に違反する行為だ、金剛。それは避けねばならない、わかるだろう?」
手塚さん、落ち着こうとしていますが、声が怒りで震えています。
「おーこわ。手塚さんがキレるん始めてみたぁ」
そう言って隣の鏨さんがひいています。でも金剛さんは顔色一つ変えず、私を抱きしめたまま振り返り、
「マスター。今、この距離で私を爆破させれば巫女の体が九十八パーセントが消滅しマス。マスターは、彼女の生死は問われまセンが、体の七十パーセントは持ち帰りが必要なはずデス。よってマスターは私を爆破しまセン。その為、私は『命令』に従っていませんが、一項より優先されるべき『人間に危害を与えない事』を順守出来マス」
「く……アンドロイドとして正確な判断と言った所か。しかし私の作った音声反応主従システムは完璧のハズ。『連れて来い』。こんな簡単な命令がどうしてきけない! 所詮、鉄屑は鉄屑か……」
「こ、金剛さんは鉄屑なんかじゃないです、お勉強がスキで、とても優しいアンドロイドです」
「優しいだと!」
それを聞くと、険しい顔が崩れ、高らかに手塚さんは笑います。
「そいつは柔らかいラバーで包まれてはいるが中身は鉄屑、感情などないだよ、君。プログラミングによってそれらしい対応を取らせる事はできるが。そうか、好きな男に似ているからそうであってほしいと投影してるんだろう? 私のデザインが完璧という事だな」
「確かに賀川さんにとても良く似ています。でも賀川さんは賀川さん、金剛さんは金剛さんです。色が違うからそれはすぐにわかります」
「色? そう言えばよく、ボディが替わっているのに『中身』が同じだとわかったとは感心するがね。今日仕掛ける気はなかったが、目的通りお前を誘い出せた」
「賀川さんに似てるからじゃなくて、金剛さんが賀川さんに会いたいって言うから一緒に来ただけなのです。そして金剛さんは金剛さんです。彼は戦ったり人を傷つけたりする事が嫌なんです。だからそんな命令をやめてほしいのです。言う事をきかないからって、壊したりしないで欲しいの」
そう言うと、手塚さんはゆっくり深く息を吐き、口を歪めて笑うと、
「なら、大人しく君が付いて来たまえ。君がどうなるか私は知らないが、金剛は壊さない、そう約束すれば来てくれるのかね?」
「……えっと」
私が迷いながらもその腕の中から抜けて一歩を踏み出そうとした時、金剛さんがそれを遮るように私の手を取ります。そしてその一瞬で近寄って来ていた男性の手から飛びずさって、私を守りつつ距離を取りました。もう寒い時期だと言うのにその男性の半袖を纏った両腕は、銀色で美しい光沢をしています。機械である事を誇る様に。
「だからアンドロイドじゃなくて、半改造した俺の方が役に立つって言っただろう? さぁ、俺に命令しろ。手塚!」
近寄ってきたのは車から降りて来ていた男性のうち、筋肉質で体格のいい方の男性です。どうやら金剛さんのように全てが機械ではなく、本当は人間で部分的に体を作り変えているよう。証拠に剥き出し半ズボンの脚は焼けてはいましたが、ジーンズ地から見える脚は筋肉で肉付いた普通の人間の肌色の脚です。と、言うかムキムキです。
手塚さんは一度目を細め、考えた様にして、
「金剛を制圧し、巫女を連れて来い。行け、ライ」
「仰せのままに、な! オーライ、マスター!」
ライさんはその足で素早く地面を蹴ると、金剛さんに肉薄し、銀色の腕を振り上げます。私を庇いながらも素早く戦闘態勢を取った金剛さんでしたが、
「金剛! お前の反応速度も、戦闘能力も、俺の上だがな! 『もしも』の時の為に、俺にはお前らを制圧できる能力が与えられている!」
バチリとライさんの腕に光が走るのを見ました。体に纏う黒っぽい色は人が何かを壊す衝動を帯びた時の嫌な色で。アンドロイドを制圧できる能力……それでは金剛さんが壊れてしまうのではないでしょうか。そんな事を考えましたが、金剛さんの行動は早くて。
「下がっていて下さい!」
とても綺麗な発音でそう言いながら私を突き飛ばした金剛さんに、彼の銀色の腕が触れた瞬間、二人の体は強い光に包まれたのでした。
llllllllllllllll
身を挺して……
llllllllllllllll
現在不定期更新となります。
llllllllllllllll
『以下5名:悪役キャラ提供企画より』
『鏨』とにあ様より
『手塚』『金剛』弥塚泉様より
『ライ』『ルイス』小藍様より
問題あればお知らせください。




