捜索中デス6ユキ(悪役企画)
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金剛は考える。
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何故、どうして答えが出ないのデスカ?
答えは0か1、イエスかノー、白か黒。二つに一つ、それなら問題などないのデス。私は少なくともその二択しか知りませんデシタ。
でも、たがねが言いました、『お前、壊れた?』……本機体の中ではきちんと正常に稼働していると表示されマスが、私は『異常』であって、壊れているに相当するのかもしれまセン。『TUDA』に制作中止され、更に兄弟達と共に捨てられたあの時点で終わっているのかもしれまセン。……それでもココに私は居て、マスターに従えず、この少女を拘束し連れて行く事を拒否して佇んでイマス。
わかるのは、この白髪の少女が稼働し続けて欲しいというコト。
こうやって居るだけで、たくさん学べマス。理解できない事も増えマスが、明らかに充実しているのがわかりマス。
「……自分の、思いとは何デスカ? どうすればそれがわかりマスカ」
目の前の少女にそう質問をすると少しだけ首を傾げて、
「例えば……お勉強したいって思うのや、手塚さんに頼まれたわけでもなく、賀川さんを探したいって思うのは、金剛さんの気持ちではないのですか? 学習型だからって、金剛さんは言いますけれど、同じ兄弟でもこうやって人を探したり、マスターに反したりまではしないのじゃないですか? そこまで来るとそれは学習型だからじゃなくて、金剛さんの『思い』だと思います」
「……私はお勉強がスキで……貴女の稼働を望む……これが『自分の思い』?」
「稼働? ……生きてるって事ですよね。ありがとうございます。私も金剛さんがずっと生きてる……そう、稼働してる事を望みます」
そう言ってもらう事によって湧きあがる何か……自分がアンドロイドとして作られたのは『人の役に立つ』為デス。今日は遊具に添乗し、話しただけを楽しいと言ってくれ、稼働を望むと言われる事は『嬉しい』に相当する為、私は口角を上げ、教えられたとおりに笑いマス。
マスターから命じられた事を全うしたときには、嬉しいに相当した事がなかったのデス。今と何が違うのかわかりまセン。
これは私達初期シリーズのバグ、その前兆である可能性を80パーセントと予測しマス。きっとこれを突き詰めていくとスペックの低さから動かなくなりマス。たぶん他の兄弟達と同じに。
ただマスターはこの前に破壊された時に、アリス相当の型番の体に軸に一から組み上げて私を詰め込んでくれた為、すぐに止まらないと予測しマス。しかしいつまでこうして稼働しているか予測不明デス。
「手塚さん、娘さんを亡くしたのですか?」
「マスターは娘は殺されたと教えてくれマシタ。体の中が摘出され、他の体で今も稼働しているそうデス」
「摘出? 稼働……」
「臓器移植、という技術デス」
「殺されて……移植って……そんな」
彼女の顔色がすうっと変わり、体がふら付き出したので支えマス。体調がすぐれない中、気温もだいぶ下がり始めてイマス。約束の為にも、早く安全な場所への移送を私は提案しなければなりまセン。
「行きまショウ、貴女の家がイイでしょうカ?」
「ちょ、ちょっと待って下さい。その後、金剛さんは?」
「マスターの所に帰らねばなりまセン」
「何故? 壊されるかも知れないのに? そんなのダメです」
「しかし本来私はマスターのモノで……」
「金剛さんは物じゃないですよ? ちゃんとココに生きてるんですから。……そうだ、かくれんぼしたら良いんじゃないですか?」
かくれんぼ、それは人間の子どもの遊びの一種と記憶していマス。急に何故、そんな話が出るのか答えが出ない私に、彼女は続けるのデス。
「手塚さんが二キロくらいに入るとわかるなら、それから逃げるんです。普通の時は好きな事が出来るし、ずっとやっていたら諦めてくれるんじゃないですかね?」
「それにはエネルギーが必要デス。補給場所がない以上、私のフル稼働時間は後二日と四時間二十三分デス。省エネモードでは年単位に伸ばせマスが、基本動けずに、逃げることは不可能とナリマス」
「電気……ですか。普通の家庭用のコンセントってわけじゃないんですよね」
「改造すれば繋げない事もないと思いマ……」
私は捉えマス、時速百二十程のスピードで二キロ圏内から突っ込んでくるマスターの気配を。
「来マス! 接触まで一分デス。離れて下サイ!」
「金剛さん? く、車?」
高速道路でも法令違反の速度で突っ込んでくるそれの音は、閑散とした倉庫群に爆音をこだまさせて私達に向かってきマス。
「駄目です、行っちゃ駄目。金剛さん壊されちゃいます」
「ただ爆破するならここまで来なくて可能でありながら、本地点まで走って来る事から推測し、巫女を爆発に巻き込みたくないと判断しマス。ここで止めて車を潰しマス。送る事はできまセンが、出来るだけ離れて……」
「私を……生け捕りにしたい、って事ですよね」
目の前の白髪の少女はにっこり笑うと、走り出しマス。ただその足を向けた方向はマスターが添乗した車の走行線上……
「危険デス!」
その軌道上に暗くなってきた空気を照らすヘッドライトの灯りに躊躇なく、巫女と呼ばれる少女は顔色一つ変えずに立っていマス。マスターもまさか飛び出してくるとは予測していなかったのデショウ。ブレーキ音が響きマスが、間に合うかは計算的に難しいスピードデス。ハンドルを切ったために滑る車体にキュルキュルと擦れる音。
私は彼女を前から抱きしめ、安全の確率計算前に飛び出しマス。車は直前で何とか折れたものの、私が彼女を一メートル八十二センチ動かしていなければ直撃していた軌道デシタ。車は滑りながら左方向二十メートルにあったシャッターにぶつかりマス。
「ユキサン、大丈夫デすか」
「はい。手塚さんが曲がってくれましたし」
きょとりと彼女の唇から吐く息が首筋に触れていマス。
彼女が生きている鼓動が伝わってくる事に『嬉しい』と感じるのは何故ナノデショウか……私のベースは介護用ロボットであるが為、人の世話をする為に作られた故……それは真実なのでしょうカ……世界の答えは二つに一つじゃナイのデス、そう学習しながら彼女の白き髪に触れ、抱きしめた時、マスターが車から降りて来まシタ。
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現在不定期更新となります。
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『以下2名:悪役キャラ提供企画より』
『手塚』『金剛』弥塚泉様より
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