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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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捜索中デス4(悪役企画)

llllllllll

汚れるのは勘弁してほしい。

子馬目線です。

llllllllll

 






「泥だらけだろうな、その格好で海さんには会いたくないな」

 泥に引き込まれた俺はそんな事を思った。

 鏡を何度覗いても変わらない厳つい顔に、無駄に大きな体。生まれつきは変えられないので、せめて身綺麗でいたいのだけれど。普段の路上生活ききこみ姿や、泥だらけは見られたくないな。

 そんな事を考えている暇はホントはないのだろうけれど。と、何かが近づいてくるのを感じ、気合を入れ直すと咄嗟に指先で印を組む。集中して解読すると土の拘束が外れる。

 息は長く続かない、このまま弱るのを待つ……そんな感じがした。

「土御門って名前だけじゃないんだよ……」

 頭の中で溜息を吐くように思った。

 俺がこの手の術に詳しい事や、それも名字の通りに『土』に関するモノが専門だなどと、仕掛けたあの女達は知らないだろう。

そんな力、欲しくて得た訳じゃない。五歳まで父親が少し変わっていたり、小父貴の中にもヘンなのが居たりはしたけれど、なーんにも知らずにうろなを普通に走って遊んでいた子供だったから。土御門の中で出来は最悪。でも俺が母親の元から連れ去られ、置かれた場所はソレが使えなければクズ同然と思われるような場所だった。火御門ひみかどとか水美都みみととか他の派家には会わせたくないなんて言われたし。落ちこぼれでいる事は父母の悪口となるのが嫌で……

 反発心もあって、まぁ、俺がよく使うのは『土』じゃなかったりする。

 とは言え、あの女もアヤシイ術を操るとすれば力次第では俺が押し負ける可能性もある。ともかく体に纏わりついた土の拘束は簡単な印で解けた。それを鑑みるとそこまで強い術者ではないと思われた。

 だが、土の中にある『気配』は本物だった。

「何だ? 生物、だよな? 土蜘蛛とか言ってた?」

 生き物にしても大きい気がした。胸にあった護身用の小太刀を引き抜く。泥で出来たこの空間は五感のうち触覚以外は殆ど役に立たなかった。重い液体に沈められたようで動きが絡め取られている中、いくら専門でもそこを住処とするモノに手は抜けない。



 土が。



 微かに……動く。



「そこだっ」

 岩か何かの足ざわりを感じ、それを勢い込んで踏み、小太刀を突き刺す。場所は『術』の発生が感じられる場所。

「何だこれは?」

 突いて気付く。ソコにあったのは一枚の『お札』。体に痛みが走る。その痛みは頭を酷く重くした。この札を破こうとする者へのカウンターが仕掛けられていたらしい。

「コレ、まずいかも、知れない……」

 そう思った時、俺の体は思い切り地面から飛び出し、高く空中に跳ねたかと思うと物凄い振動で降り立つ。どうなっているかわからないが。俺は飛び出した何かに突き刺した刀一本で中空にぶら下がっていた。ともかく頭痛を堪え、落ちないようにしがみ付きつつ、もう一度札を読む。これがこの生き物を操っている何がしなのは間違いなかった。普通の人には読めない奇怪な文字の羅列。

 体に、頭に、痛みが走り思考を削ぐが、何とか解読する。

 その札に書かれていたのは……とても危険でめちゃくちゃなモノだった。実験中に蓋の開いたアルカリと酸を、何の表示もなく無防備に隣り合わせで置くように。系統立って学んだ者ならまず怖くてやらない術式がそこにはあった。そうしないうちに崩壊して術者を喰らう所……

「わわわ……」

 どうやら刺してしまった事で、『混ぜるな危険』をやって、崩壊を早めてしまったようだ。もしそうしていなかったら俺は食われていたんだろうけれど。

 ガシガシと揺れ、地面を抉って行く八本の足。

「蜘蛛? こ、これが土蜘蛛、か……」

 そう呟いた時、やっとその揺れに慣れてきて、回りの会話に気付く。

「……巫女を差し出せばその数が半分で済むかもよ?」

「馬鹿言うなっ! 俺の娘だっ、お前らの好きなようにはさせねぇ。子馬の分も……」

 どうやら俺、タカの小父貴の中で死んだ事になっていそうだったから、急いで声を出す。

「勝手に殺してません? 俺ココですよ~」

 それを見た小父貴は一瞬何とも知れない表情をした後で、ニヤッと笑った。その時、酷い痛みの波が襲って、つい手を滑らせ、俺は地面に叩きつけられる。更に多すぎる蜘蛛脚に踏まれそうになる。何とか小父貴の近くまで逃げ、口に入っていた泥を吐き出し、

「こんな紛い物の土遁術を行使するなんて……」

「あらあら、貴方、食べられてなかったのね」

 さも残念そうに吐かれる言葉。あのまま放っておけば喰われるのは自分だったとは気付いていないようだ。これだから素人は怖いのだ、聞きかじった術を行使して、神にでもなった気分なのだろう。自然に逆らった術は必ず『逆凪』がある事を知らない。いや、その事を使って死体を手に入れる事自体が、目的の様な感じさえした。

 そして二人の女は勝手に自分達の世界を築き、暴れる蜘蛛を置いて、

「ええ。では名残惜しいけれど……ごきげんよう」

 そう言い残し消えた。

 俺と小父貴は蜘蛛を出来るだけ移動させない様に引き過ぎず、攻め過ぎず、そうしながら言葉を交わす。

「これを止める方法があるかよ、子馬。町があぶねぇ」

 確かにこんなモノが街を徘徊したら一大事だ。何で母さんの命まで狙う、あんな女達の後始末をしなきゃならないのか、なんて言ってられない。

「……本当の土蜘蛛は大きくても手に乗るサイズで、温和で。食べるのは枯葉……なのに、その体を大きくして、余った人肉を食わしてたみたいです」

 この蜘蛛は俺の組する土御門、土の眷属になる。

 土御門おれが近くにいたとすれば罪をなすりつけられかねないし、何よりこの蜘蛛が可哀想だった。静かに枯れ落ちた物を食み、消化して土に戻し、森や自然を小さいながらも支えていた生き物。大人しく生きていた土蜘蛛に、罪を負わせるなんて酷い。

 それに警察として、人間として、一般人が傷つくのは困る。それは……悲惨な事だし、それだけでは終わらず、果ては俺達の様な力を持った者の弾圧に繋がるから。コトが大きくなる前に……止めなければならない。

「蜘蛛公に人を喰わせるなんざ、やる事がエグイな……」

「とりあえず簡易の結界……つまり籠を作ります。でも長くは持たない。ちゃんと陣を描けばそれで拘束できるほど強いんですが……ともかく町に降りないようにしないと」

「四の五の言ってねぇで、早くやれやっ。とりあえずそれで囲って、中で倒すんだな? 作る間は集中できるように俺が捌く」

 ダークブラウンの鳶服が特攻服のように気合が入って見えた。この大きな相手を前に『捌く』と言えるこの人の強さに、俺はその身を心で預けながら、パン、っと柏手を打ち鳴らし、

『八卦封鏡』

 小さくそう呟いて地面に細かな模様を想像する。本当は描いて具現化するモノを想像だけでやっても、余り効力はないが。集中力で補う。

 その間、タカの小父貴は大黒柱のごとくに太い八本の脚を、自分と俺に当たらぬ様に右に左にと身を引く事なく相手する。

「虫嫌いのうちのユキが見たら卒倒もんだな、おい。まぁ蜘蛛は虫じゃないか」

 ダラダラと涎だか泡だかを吐き散らし、土を撒き上げながら突進してくる様は、思わず身を引きたくなる。だが小父貴にそんな様子はない。蜘蛛の複眼は赤く、その瞳がギラリとし、右前脚が鋭い攻撃を放つのをタカの小父貴はひらりと回転し、関節に一撃を加え、撃退させ、更に脚を掴んで投げ飛ばし後退させ……ほっといたらタカの小父貴一人で撃退できそうな勢いじゃないか?

「何、暢気に構えてるんだっ! こいつの跳躍力を見ただろうがよ。手早く食べられるとこに行かすわけにゃ、行かねぇ」

「わかってますよ!」

 集中を深め、編み上げる光を鏡のように反射させながら増やし、何とか籠を作り上げる。大きな蜘蛛はそれに触れると痛がって前進できなくなり、後進すれば尻を痛め、更に暴れ出す。一緒に籠の中に居る俺達は奴を倒さなければ、じき潰されてしまう。

「目視、出来ますか? 俺達も死なない程度に軽く作っていますが触れたなら火傷を生じる痛みがあります。そんなに長く持つものではないです」

「ああん? まぁ何となく壁みてぇなのに囲まれた感覚はする。それで充分だろうがよ。出来るだけ当たらない方が良いんだよな?」

「ま、そうです」

 大雑把なタカの小父貴の返事に俺は苦笑いした。

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更新タイミングが掴めません。不定期更新となります。

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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん、お名前


『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


桜嵐さくらん』呂彪 弥欷助様より


余波なごり教授』 アッキ様より


問題あればお知らせください。

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