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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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324/531

奪還戦デス20(悪役企画)(謎の配達人)

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『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(11月4日付)に賀川参加中。

当方現在12月1日。『アリス奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より一か月ほど『後』の話になります。メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが各々『別日』の話になります。

では、お楽しみくださいませ』

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少年が追う。

そして撫子は笑う。

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「嬉しい事を言ってくれるわ」

 私は炎の中を駆けて行く。ヒールの音が響き、煙が渦巻く、そんな所を走りながら、少年が言ってくれた言葉を一人反復する。

「『お前みたいな、イイ女の為の火傷なら。いくらでも負ってやるさ』、ねぇ……大きく出たわね俺様君」

 青い瞳の少年を思い出しながら。その言葉が冗談でも嬉しかった。

 敵同士、言い合いの中で重ねた唇、たった一度で何が変わるほど子供でもない。それなのに、確かに何かが消えて、思考がクリアになった。見えなかったもの、見えなくなっていた者がハッキリする。

 私には心を許した仲間はおらず、いつの間にか頼るしかなくなった、まなぎ様。彼への不審感が募る。

 少年達はきっと、探していると言う仲間の元に駆けて行ったのだろう。知る限りの事は教えた。あの閉鎖部屋で耐えられてるかはわからないけれど。彼らの求める娘が無事で、瞳の光がまた戻れば良いと思う。今は心よりそう祈る。

 誰かの為に、それを守る為に命を賭ける想いを持つ者達を羨ましく思いながら。

「私には……『あの人』がいる」

 どんなに考えても、情けない事に名も思い出せないけれど。忘れた事さえ気づかない程に、何も見えなくなっていた。私にも大切な人が居るの。守る事も出来なかった、側に居る事も出来なくて、もう死んでしまって届かないけれど、それでも……大切なの。

「……お兄ちゃん」

 随分考えたけれど、名前をやっぱり思い出せない。たまに頭を撫でてくれる、その暖かさや優しさは体が憶えている気がするけれど。

 かつては毎日挨拶を交わし、一緒に生活し、同じ空気を吸っていた。きっと私を妹としか認識していなかったでしょうけれど。何度も何度も……戻らぬと知りながら、彼が沈んだ海や遺影の前で繰り返し呼んだ筈の彼の名が、……どうやっても口から出てこない。

 考えると湧き上がってくるのは、まなぎ様の声。『イイ、だろう? 亡霊なんか忘れて』と。

 キラキラと赤いトカゲの指輪が私を深淵へと導く。何とか生きる道を探して、無謀にも自分の腹を割こうとする青年から零れた赤い血は、とても綺麗で、あのトカゲと同じ色をしていた。頬に飛んだ血の赤さと熱に、消えかけていた目的がはっきりと見える。

 どんな奥底でも。アレが手に入るならば、何でもする。けれど……手に入らないならば、私は何故、ここに居るのだろう。

「屋上に行ったら、海が……見えるかしら?」

 海を見たら思い出せそうな気がする、愛しい彼の名前を。けれどこの建物はその前に焼け崩れるかもしれない。それでも、今、それを見たかった。

 坊や達の手伝いをした事はもうバレている。

 手塚の『アリス』の頭部の聴覚は生きていて、きっと誰かが会話を聞いていただろう。よしんば今、聞かれていなかったとしても、今日のターゲットが毒で倒れなければ私の手から解毒剤が回ったと憶測が立ち、それはすぐに明白になる。

 手懐ける為の演技と言えば許されるかもしれない。けれど誤魔化しはそう長くは持たないし、彼らを利用し、あの守りの翼を持つ者達にこれ以上、迷惑をかけたくなかった。

 それか『気紛れで手伝った』と言えば、多少……嫌な目にあったとしても……まなぎ様は私を処分ころしまではしないだろう。

 むしろ……怖いのはその先。

 きっと海を見には行けなくなる。いや、見たとして、その時の私は、今の私なのだろうか。

 何でもする、そして何でも受け入れてきた。後悔はない、もう涙はない、けれども……その為にあの人の事を忘れてしまうのは違うと思う。

 青い瞳の少年が『……大切な想い人(ヒト)に、気持ちを伝える気はねぇか? 撫子!』そう言ってくれたのを思い出し、微かに後ろを振り返る。

 死んだあの人に。

 もし伝えられるなら伝えたかった。今でも誰よりも、名前を忘れても、貴方が一番で、私が愛したのは貴方だけだったと。

 いつしか海も見えない、こんなに遠くに来てしまった。全てが汚れてしまって、あの人に合わす顔もないけれど、それでもその腕を広げてくれるなら、今でも駆けて行きたい。

 屋上へ上がろうとした足が止まる。



 揺らぐ炎の中に人影を見た。



 私は。

 私であるように歩いて行く。

 カツリと音を立てる高いヒールは……欲しい物を得る為に心を曲げない様に履くようになった。それすらも、もう忘れそうなくらい何もかもが不透明だった。今は、わかる。しっかりとした音に意識を確かにする。

 私はまだ笑えている事に感謝した。きっとあの少年達のおかげだろう。

 自分の道は、自分で決めるの。それがどんなに愚かであろうと。

 唇に軽く触れる。

「目は覚めたわ。私の王子様ではなかったけれど」

 つぶやいて。もう一度、彼とゆっくり話してみたかったと思った。

「貴方が来てくれるなんて思わなかったわ」

 私は真っ直ぐ声を張った。



llllllllll

書く時間も更新時間がまだ取れにくい状況です。

夏休みは終わりましたが、不定期更新とさせて下さい。

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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

レディフィルド君



『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


『木曽 撫子』

YL様より


『早束 まなぎ』

とにあ様より



お借りいたしました。

問題あればお知らせください。

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