奪還戦デス9(悪役企画)
llllllllll
硝煙の匂いが辺りに立ち込める。
llllllllll
『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(11月4日付)に賀川参加中。
当方現在12月1日。『アリス奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より一か月ほど『後』の話になります。メンバー構成的にも混乱するかもしれませんが各々『別日』の話になります。
では、お楽しみくださいませ』
llllllllll
プールに落ち込んでもまだ銃の弾切れまで撃ち放つ。空になった銃は鈍器代わりに使えるだろうか。そう思っていると、ザプンとプールが揺れた。
「冷たいんですけどもねぇ!」
そう言いながらひょろんとした生き物が水中から起き上がってくる。プールの水はとても暖かそうに見えるが、冷たいらしい。上がってきた彼はガタガタ震えながらも、先程まで着ていなかった白スーツを着込んでいる。びしょ濡れだが。胸には赤のチーフが色として眩しいが濡れているのでテロンとしている。履いた白靴を脱ぐと、ひっくり返して水を抜く。ピンクに染められた頭髪が頭を振るとフンワリに戻る。服も見る間に乾いていく。痩せていて骨と皮のようだが、人間の体裁は取った。
「野蛮人ではないようですね。身支度を待つ余裕はあるとは神妙」
「は、はぁ?」
ただ銃が効かないとわかったので、どうしていいかわからないのと距離があるからなのだが。取りあえず空になった散弾銃を、恰好つけたソレに向けて投げつける。かこーんと当たると、その体がまたプールにドプンと落ちた。
「冷たいと言ってるでしょう?!」
ガバッと立ち上がり、抗議しながら上がってくる男。
「いや、もう用意終わったみたいだったから」
「また濡れてしまいましたよっ」
「水から上がって、服を着れば濡れなかったんじゃないかっ」
服が乾いて行くのはどんな仕掛けなのだろう? わからないが、俺は近付くとそれを何度も殴り飛ばす。
「やはり野蛮人!」
「品行方正ではないさ。お前もだろう?」
「お前と一緒にしないで下さい」
「だって、嫌がられていたよね?」
「嫌がられ……嫌? 嫌なわけないでしょうが。この私に選ばれたのですよっ!」
急に興奮したように、その後、すぅっと無表情になると手にしたナイフを鋭く振り下ろす。その一撃は早くてナイフの重みに任せた、迷いのないモノだった。
「っ……おらっ!」
右袖をナイフが掠めながらも、蹴りを放つ。確実に柳の様な体が揺れ、ヒットした感触はある。だが、ダメージを与えるのはかなり力を加え、捩じりこめた時だけな気がした。思ったより機敏だし、ナイフの扱いは慣れている。ただ格闘自体は苦手のようだ、ほんのちょっとでもう息が切れかけている。一撃に対する比重が大きいのかもしれない。
あの三つ首の獣が嫌う要素は、何となく漂う気持ちの悪さ、だろうか。幽霊が怖いとか闇が怖いとか根拠のない、表現し辛い感覚が相対していると湧いてくる。でもあそこまで嫌悪するのは、あの獣が嫁に出来る、つまり雌なのだろう。
「そう言えばリズさんの声はどこからしてたんだろう?」
「ゴ、ゴミのくせに、邪魔しないで下さい。ええい、ちょこまかウルサイ!」
再度、振り下ろされたナイフを軽く避け、打ち込みを決めようとした時だった。
急にカクンと力が入らなくなり、避け損ねた切っ先が左の肩口を抉った。だが詰められた間合いは最高で、普段ならそのまま突っ込んで行って決める所。しかし自分の体に何か変化が起きている気がして、本能的に離れかける。
「私に恐れをなして逃げるには遅すぎ……ぶっ!」
「勘違いすんなよっ」
不用意に近付いてきたので鳩尾に一撃入れて、回し蹴りで頭を蹴って、ダウンを取って態勢を整えようとして膝をつく。疲れ、出血による貧血かと思ったが、どうにも苦しい。拳が堅く握れなくなり、筋肉が痙攣したようになって、体が動き辛い。
キリンはどさっと派手な音を立てて倒れたが、その後、ノッタリと起き上がってじっとりと俺を見た。
「おやおや、もしかして毒が効いてきた?」
「そのナイフに、か?」
「私は『人間』に毒は使いません。すぐに死んでしまうでしょう。くっけけけ、簡単に楽にしてはあげない。手塚に腹を探られたのでしょう?」
「どうにも……いい趣味じゃないな、お前ら……」
あの激痛を思い出して俺は顔をしかめた。どうやらその時に遅行性の毒を仕込まれたらしいとやっと気付く。動きの鈍くなった俺を地面に押し倒すと、馬乗りになり、
「腹を割いて出してあげましょうか?」
いつの間にか乾いたピンクの髪が揺れ、骨ばった指で俺の首や脇腹、胸を撫でまわし、コートの上から巻いた包帯に触れた。その後、ナイフの柄でガツリ、ガツン、とそこを殴る。
「ぐっ、あ……そ、そこは……うっっ……やめろ」
「さっきの元気はどこに行ったんでしょうね」
更に腹の包帯をナイフでブチブチと切って行く。体を捩るがうまく逃げられない。血を吸い込んだコートが乾いて皮膚を擦るのと、傷があった辺りが空気に晒されるのを感じる。何とか繋がっているが酷く脆い感じがする場所。
「ここ、まだ傷がしっかりわかります。それでも人間なのにどうしてこんなに早く治ったのでしょう」
つっ……っと、指を這わされ、ちくちくした痛みが微かに走っているのがわかる。その痛みが激しくなり、ずぶりと人差し指が、捻じ込まれた。
「ううう……」
流石に唸ってしまうものの、細い指がネチネチと傷をいたぶっていたが、あまり反応がない事に面白くなさそうな顔をした。
「痛くない?」
痛いけど、叫べばピンクのキリンの思うツボだ。奥歯を噛んで耐える。腕を突っ込まれて腸を漁られた時より痛みはマシだ。
「じゃ、これは?」
手にしたナイフを反し、クルリと刃を向ける。メッタ刺しにされるかと思った。だがヤツは、俺の毒で震えた左手を取る。押さえつける力が半端ない。普通ならともかく、今の俺にそれを振り切る事は出来ず、じたばたするだけで効果がない。
「綺麗な指ですね。勿体無いほど美しい……普通の人間のくせに。大切にされてきた何かを感じます。これは、何でしょうね」
ざわっと心を逆撫でする口調。そっと地面に置かれた俺の薬指にナイフがごく軽く当たる感覚がする。皮膚が薄く傷つけられ、血が玉を作るのが想像できた。
「わかりますか、イイ顔になってきましたよ」
折角弾けるようになったピアノをたった一日で、次は永遠に弾けなくなるのか……いや、ピアノなんて言ってられないだろう、こいつに徐々にいたぶられながら死ぬのか、その前に毒が回り切るのか。
嫌だ。
どうにかしてココを切り抜け、アリスを救い、ユキさんに普通に『ただいま』って笑って帰るのだと心で叫ぶ。こんな床で倒れて死ぬ為に来たんじゃない。
でも……
最悪を思い、出来ぬ望みだと考え至り、つい浮かべてしまった表情は、歪なキリンを満足させた。彼は痩せた頬肉を引き攣らせる様に笑い、
「人間にはそんな怯えた表情が似合っていますよ。まずは結婚の邪魔をした罰に、薬指をいただきましょうか?」
オーバーすぎる振りで刃物が俺の指に断罪を与えようと上へとあがる。振り下ろされる刹那、光を受け、ぎらっとナイフが暗い輝きを発した。
llllllllll
自転車操業中。
書けない日が続きますので更新は未定とさせて下さい。
llllllllll
『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズさん
llllllll
『以下2名:悪役キャラ提供企画より』
『田中』
さーしぇ様より
『手塚』
弥塚泉様より
お借りいたしました。
問題があればお知らせください。




