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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
7月6日(小題に『お祭り』と付いているモノが会場内)

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更衣中です

帰ってきました。タカ自宅。

何とか書けました。


 そういえば、この七月六日は『夏祭り』と付いているモノのみが会場内での出来事です。

 ついていない話は会場外です。夏祭りとは直、何も関係ない話もあります。

 







 おにぎりを配って戻ったユキさんを私は呼び止めたの。

「何ですかぁ? 葉子さん」

 のんびり間延びした返事が彼女らしくて笑いながら、そっと花火柄の浴衣や帯などを差し出たのよ。そうすると赤い目を丸くして、

「これは?」

「タカさんの奥さんのタンスに入っていたの。亡くなって暫くして彼女の着物を虫干しする時に見つけてね、彼女の浴衣より裄が狭いし、袖も伸ばせるように作ってあるから誰のかと聞いたら、「いつか着てくれる奴が来るから大切に扱ってくれ」ですって。それを数日前に出して着れる様にしてくれって言われたの」

 紺色の浴衣には綺麗な花火が散っていて、白髪の彼女に良く似合うでしょう。でも受け取るのに迷っているよう。

「着てあげて。きっと刀流さんが連れて来てた、少女の為に奥さんがあつらえたと思うのよ?」

「お母さんを知っているんですか?」

「貴女のお母さんではない頃の彼女だけど、ね。遠目に見てもそれは可愛らしくて良いお嬢さんだったわ」

 その頃は私は働いてはなかったけれど、何度か刀流さんが女の子と居たのは覚えているわ。彼女の子が、この白髪の子と知った時は驚いたけれど。不運な事故で息子と妻を一気に失くした彼はもう神様なんて信じられないかもしれないけれど、彼女とこうやって巡り会えたのは天の采配でしょう。

「着つけてあげるから、お風呂に入って来なさいな。朝から揚げ物におにぎりに、いろいろ忙しかったから汗かいたでしょう? 髪も結ってあげる。全部アップも良いけれど、そうねぇ……」

「でも」

「でも、も、だって、も、ないの。ワンピースも良いけれど、お祭りには浴衣が素敵よ。さあ」

「あの、髪を染めて行こうって思っているので、買い物に……」

「何を言っているの、お母さんから頂いた美しい髪や瞳を隠す必要なんかないわ。胸を張りなさい」

 何か言いたげだった彼女を浴室に押し込みます。

 上がってきた彼女を掴まえて、汗を押さえた所で着せ付けたの。



 襟は汚れと汗を吸うように伊達襟のように手拭いを挟んで、艶やかに見えるように。帯にはユキさんがこだわりがある様で、コサージュやら柔らかい布をヒラヒラを入れ込んで今風に仕上げたわ。我ながら良い出来。

「タカおじ様の奥さんってどんな人だったんですか?」

「そうねぇ。朗らかでいつも笑っていたわね。ねぇ、髪はお嬢様風に、サイドを後ろに止めるだけにしましょうか? 結い上げも……悪くないけれど、飾りが大人っぽいからこの方が」

「はい、それでお願いします」

 私は両サイドの髪を持ち上げながら、

「そう言えばタカさん、奥さんの顔が思い出せない様なのよ」

「え? 毎日あんなに写真を拝んでいるのに?」

「……事故ったのが工務店の軽トラだったから事故を誰かが知らせてくれて。タカさんが駆けつけた時はまだ救急車も来てなかったらしいの。彼女、酷いケガでね、頭がもうどこに行ったかわからないほど……その隣でまだ最初は息のあった息子さんに心臓マッサージしていたそうよ。時間が経ってね、写真を見ても空絵事のようなんだって」

 いつもあんなに賑やかにしているのに、あんなデカい背中を小さく丸めて深夜に一人でチビチビやっているのを見ると、声もかけられないわよ。

 そう付け加えながら、彼女が持ってきた梅の綺麗な飾りを頭につけてあげる。耳にも同じような梅の花の飾り。

「白髪に涼やかでよく映えるわ。黒髪にもきっとこれは素敵ね」

「これ、司先生とお揃いなんです」

 嬉しそうに頬を染めるユキさん。薄く化粧を施してあげるとなお一層綺麗。



 この子を手元に置く事で、少しタカさんの気持ちが楽になっている。ぎょぎょさんとバッタさんがいろいろしている時は、また良からぬことにタカさんを担ぎ出すかと思ったけれど、これは彼らにも感謝ね。

「あの、ユキさん、こっちに居ますか?」

「あ、賀川さんだ」

「いってらっしゃい」

「葉子さん、ありがとうございます」

「財布と携帯、この手提げに入れて。手ぬぐいに足袋、扇子。入れてあるから。ねえユキさん?」

「はい?」

「賀川さん、どうなの?」

「どう? って?」

「だから、どうなの?」

「ど? うんと。よく構ってくれるので、助かります。けど、そんなに暇なのかなーって」

「そ、そう。気を付けてね。草履は出してあるから」

 これはタカさんが娘を送り出す日は相当に遠そうだわね。

 浴衣姿で真白な日傘を手にする、彼女に見とれてる彼には悪いけれど。




YL様の梅原先生お名前、お借りしました。

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