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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
7月6日(小題に『お祭り』と付いているモノが会場内)

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お祭り:早朝です

一日と四日は飛ばして夏祭り行きます。

後程差し込み投稿予定。


では夏祭り当日、朝です。

 









「姐さん達! おはようございます、今日も綺麗っすね」

「おはようです、葉子姐さん! ユキ姐さん」

「ねーさんお茶くれっ、死ぬから」

「オニギリだっ! 食べて良いっすか?」




「うーん、お茶は良いけど。これはどうなのかなぁーーーー」

「ダメですよ、これは現場に持って行くから。食堂に出汁巻き卵とホウレン草のおひたし、かまぼこ、辛子明太子とお味噌汁、用意してるから。今日は煮物と魚はないけど勘弁して。ユキさん、よそって、お茶は各自ね」

「えーーっと。しゃもじぃ」



 七月六日、うろな工務店の朝は早い。



 小さいとはいえ、この町の祭りの準備を任されているからだ。普通、祭りの設営は数日前に一度と、当日朝にやるモノだが、俺達が担当する大物設営が場所が野球場のためか、先日前までの設置許可が下りてない。朝も余り早くからやって、騒音などの問題があってもいけねぇ。気を使う所だ。

 毎年、この時期には何件か受注を受ける恒例行事、ただ今年は最初の現場になる。昨年を経験してない職人は初陣になる、ちいっと気合を入れてかからないと遅れなんか客に見せちゃあみっともねぇ。


「野郎ども! 早く食え」

「ういーす」


 うろな工務店の胃袋担当、賄いの葉子さんが、ユキを上手く使いながら朝食と現場用のおにぎりと漬物、お茶を用意していた。葉子さんは俺より少し下だが、まあ優しく厳しい姐さんだ。

 ユキも同じく「姐さん」と呼ばれるようになり、かなり年上の兄ちゃんにも年下の中卒上がりとも溶け込んでいる。皆、初めはあの髪色に目だからビビったみたいだが、あの娘が離れに居着いてから宝くじや馬券が当たった奴が居たり、工務店も受注が増えたりしたもんで、すっかり女神様扱いだ。



 積み込みは済んだ、まずはステージを設営。それからこれは任せて、配線を張らないと機材班の準備に支障が……など、頭で考えていると白髪少女がふわふわ横切り、給仕をしている。

「ユキ、済まねえな。うちは女手が少ないから助かる」

「はーい。早く食べて下さい」

「お、ありがとよ」

 銀飯を明太子で掻き込んで、最後に残っていた一切れの出汁巻き卵を制して、味噌汁をいただく。豆腐にワカメ、玉ねぎ、最高だな。

 誰かが注いでくれた茶を啜りつつ、過不足がないか考え、時計を見る。

「煙管と所要があるやつはさっさと済ませろ。行くぞ。現地組が法被持ってるから配ったら羽織れ、雰囲気の問題だけどな。設営後居残り班は楽しむのは良いが、酒は厳禁。提灯の配線を間違うなよ。通常業務班も気合入れて行けや、何かあれば応援も出す」

「へーい」



 現場じゃ、見習い以外、基本的に班長指示と自己判断で動く。うちじゃ、回りを配慮出来ないヤツは見習いって事だ。その度に咆えると迷惑だしな。

 そんなこんなで、慌ただしく出ていく。

 着くと、椅子や機材のトラックが到着している。現地集合班に声を掛け、予め決まっている班長が設置、配置のプリントを配布、露店の組み立て、配線、ステージ、夜用の提灯を用意する。

 花火職人と話してライトや提灯の電気を消すタイミングを最終確認を終わらせておく。

「おはようございます」

 そこに人のよさそうな、青年が声をかけてくる。代替わりした町長、だったよな。しっかし若けぇな、おい。後ろには綺麗な秘書様が控えている。

「朝早くからの設営感謝です」

「おうよ。そうだ、青いタオルを首に巻いた奴が三人ばかりいるのがうちの班長だ。片付けまでで設備に何かあれば、俺かそいつらに声かけてくれ、他の下っ端より早く対応できるはずだ」

「わかりました、ありがとうございます」



 丁寧にあいさつ回りをしている感じの町長を見送り、ステージの前で陣取っていると、

「前田殿! 助太刀に参った! ケイドロ大会の時には世話になった」

 そう言って天狗と名乗る男がやってくる。

「おう、天狗か」

 初めの頃は良く通報してやったものだが、天狗の意志が本物だとわかってからは、こうやって協力も出来るようになった。

 ケイドロ大会の時は若い者を開催前の草むしりやらに出していたから、少しは役に立ったのだろう。オレ自身ももっと協力出来るつもりだったんだが、その前が講習連日。開催日の当日協力しかオレは出来なかった。それでも不満の色はない。人間が出来てる……いや、天狗が出来てるって言やいいのか? それも律儀な事にいつまでもオレを苗字で呼ぶんだ、これが。

「タカでいいつってんのに相変わらずだなお前さんはよ。じゃあ、役場の人たちが向こうでテント建ててるから手伝ってくれねえか」

 気持ちのいい返事を残して去って行く天狗を見送って、暫くすると緩ーい声が飛んでくる。



「タカおじ様~~私一度帰ります」

「足りなかったパイプを取りに行くトラックに乗って行け」

「はい、ありがとうございます」

 朝食を取らずに来たうちの従業員や、町役場の人に「おにぎりーーありますよーー」と、声を掛けていたユキがフラフラ帰って行く。又来る時は賀川と一緒に電車だろう。

「あ」

 戻ってくると、手にしていた袋を渡してくれた。

「タカおじ様に作っておいたんです。お腹すくでしょ?」

「ありがとな、お、天むすか。美味そうだな」

「もう一つは鮭です。一昨日ね、手袋ちゃ……うん、猫ちゃんにもらったんです。それの真似」

「て? 手袋ってその辺たまにいる猫だろ。猫がおむすびって……そう言えばこの頃、見ねぇと思ったら、どっかに引き取られたとか」

「時雨ちゃんって呼ばれてました」

「ユキ姐さん、行きますから車っ!」

向こうからうちの若いのがユキを呼ぶ。ぺこりと白い頭を下げていく。

「じゃあ、後で」

「おう」

 優しい娘だ。

 成り行きとはいえ、刀流のおかげで良い縁をもらったな。

 そんな事を思いながら、オレはその背を見送った。


シュウ様『『うろな町』発展記録 』より、町長さんと秋原さん

三衣 千月様『うろな天狗の仮面の秘密』より、天狗仮面さん

とにあ様『時雨』より、時雨ちゃん(手袋ちゃん)


お借りしました。

手袋ちゃんのおにぎり話は4日の事で、まだこちらでは書いておりません。

祭りが終わったら差し込む予定です。


上記作家様、何か不備がございましたら書き直しますので、お知らせください。ありがとうございます。

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