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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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298/531

分析中デス(悪役企画)(リズさん)

lllllll

スーツの男(手塚)目線。

lllllll

 






 ふらりと現れた黒髪をポニーテールにした少女は、ターゲット『時貞 玲』に対し、急に攻撃を始める。かと思えば、その矛先を急に私の『アリス』へと切り替えた。初めは腕のみを獣化させたが、最後には全身、それも三つ首の獣へと姿を変えた。人間の獣化報告は少なくないが生きているサンプルを見るのは初めてだった。

『賀川さん……それならそうと言ってくれれば……って、間違えた私も悪いんっスけど』

『だって、どー見ても襲っているようにしか……』

『でもこれは勘違いだったっス。ああ、賀川さん死んだらダメっス』

 可愛らしい少女の声。だがその頭から発されるソレは質の悪いスピーカーを通したように歪んでいた。それぞれの頭が呟きながら、口から吐きだされる炎。

 それを『アリス』は槍で叩いて相殺し、刃先を繰り出す。だが、『制限』をかけている『アリス』では動きが付いて行けていない。

 それでも水を被った『アリス』に敵は居ないと思われた。全身が水で濡れている限り、体を巡る『再生蛋白T-025』の効果によって、全身の約九十パーセントを再生できる。体の心臓部であるコアや一部駆動系、目など再生不可能部分もあるが、水さえあればほぼ無敵と言えた。

「被検体として面白そうなのだが……」

 炎を吐く三つ首の獣をその段階では侮っていた。

 戦闘データ欲しさに、制限を解かず、あまり積極的に動かさなかった事もあるが。

 獣は最初のターゲットに対する様子から直情的で、観察眼に置いて劣るかと思われた。しかし水が再生蛋白を動かす事に気付いたらしい。アリスの全身に『熱』を加え、水分を蒸発させて再生機能を壊し、その隙に金剛の手からターゲットを奪って姿を消した。置いて行った言葉の土産に顔を顰めた。

「無価値、だと? 現実と芸術のわからん奴だ。忌々しい……」

 命あるモノ、必ず死ぬ。

 だが人間はその面影を側に置きたがる生き物なのだ。古代はミイラやその骨を持って死を悼み、中世には肖像画や髪を残し、写真が撮れるようになるとそれは遺影という形になった。今では身内の人間の細胞や遺伝子では飽き足らず、ペットのソレまでもを取り置く世界だ。

 初めは全て機械で置き換える予定だったが、『目』や『髪』などの生体を移植する事でより愛着のある玩具が作成できる。これはビジネスになる……ただ元手が今はない。その為に巫女を、たった一人の少女を捉え、その側の青年を殺せば莫大な金を手に入れる事が出来る。

 その金を元手に商売を展開し、必ず『子供』のアンドロイドを作成するのだ。今、現存する部品は成体用ばかりで、部品が大きすぎた……小さくするだけ? 口で言うのは簡単だが、それには開発費用がもっと、もっと要る。大人サイズにするのも人間のサイズを再現するために縮小に縮小を重ね、押し込んでいるのだ。それを更に二分の一、四分の一にしていく事の難しさ、ナノパーティクルの世界になる。

「待っていろ、そして必ず父さんはお前を復活させる……今度は『犯罪者』になどさせない」

 あの子が読んで欲しがった絵本には、黒髪に緑の瞳が優しい魔女が住んでいた。彼女の作ったチョコレートを食べると皆楽しく元気に暮らせるのだ。だからあの子はその魔女に会って、チョコが欲しいとせがんだ……純粋なあの子のソレであいつがのうのうと生きてるなんて許せない。

 過去のあの子を思いかけたが、頭を振り、思考を戻す。

「おい、金剛! 『アリス』を蛋白プールの手術台に運びたまえ」

『金剛』に後を追わせる事も考えたが、折角得た美しい緑眼を『アリス』に嵌め込む事の方が先だった。

「化け物め。炎だけでなく……熱も操るとは……アリスの内部を熱して再生蛋白を気化させ、更に水分を蒸発させた上、内部のエネルギーコアを融解させたのか……」

 人間の体内を探ったために赤い血で汚れた手を清める。

 ああやって痛みに狂う姿を見るのは、アンドロイドにはない反応なので面白いのだが。今度捕まえ予定通りの部位を摘出したら、暫し飼ってやろうかと思いながら改めて『アリス』の故障部分を確認、修理する。そして手に入れた目を保存ケースから取り出して嵌め込む。神経細胞に機械を絡ませ視覚を繋ぐ。特別に手に入れた赤い金属はまるで命あるかのように柔らかく視神経を取りこんだ。

「見えるか? 『アリス』」

「……視界、クリア」

「マスター、核の損傷は十三パーセント。予想より低被害デス。被害に遭う前に予備ラインから再生蛋白T-025の供給が核の前部筋肉を補正、保護した結果と考えられマス。その為、他の修復を含めて蛋白プールに投入一時間半と五分でほぼ完全に、『アリス』機は修復しマス」

「そうか」

 金剛には『アリス』の様な再生蛋白による回復能力はない。だが高度な分析能力、また一度見た技を『学習』する能力を保持させている。今、見た戦いのデータ、それから目を切り取った生身のアリスから得た記録を、『金剛』から『アリス』の戦闘用データバンクいっぱいまで投入しておく。

「金剛、『アリス』に渡したデータの乗算率は?」

「二コンマ六倍から、最大三倍の素早さを想定してデータ化してマス」

 あの獣はまだ本気を出していないだろう事を見越して、データを強化しておく。だが連れ帰った男があの怪我だ、戻って来るまでには我々の方が移動している可能性が高いと思いながら、

「核が完全融解してなかったのは幸いだった、暫くここで泳いでいるがいい。金剛、ここを爆破する用意を。この後は『黒雪姫』の居る施設に合流する。『アリス』もそのつもりで」

「いぇす……はい、マスター」

「了解デス」

 乳白色の液体の中、人魚のように美しい肢体を伸ばして泳ぐ『アリス』はあの魔女にとても似ている。微かな違い、双子のように似た姉妹だったが、俺があの魔女の面影を見たのはアリサの方だった。時貞玲ターゲットの精神を揺する為でもあったが。

 新しい目を得た『アリス』が浸かるその液体は湯気を出していて仄かに温かいように見えた。だが実際はマイナスゼロ度を下回る、氷水のプール。回りの気温が高い為にそう見えるだけだ。

「日本語と語調を押さえるプログラミングもいい感じで作動し始めたな。その言葉遣いの方がより美しく見える。きっとあの男が見れば、死人アリサが戻って来たかのような錯覚を覚えるハズだ」

「感謝、いたします。マスター」

「後……『アリス』、高周波刀、および搭載ガトリング砲の使用を今後の戦闘に置いては暫し許可する。生死は問わんが、余裕があればあの獣の少女はサンプルとして持ち帰れ」

「……はい」

 美しい緑の目。

 アンドロイドとして機械だけにこだわり追求するのもいいが、生体と結びつける事でより美しく仕上がる。逆に人間らしく武器は手持ちの槍や剣を想定して組んだが、ガトリングなども搭載してある。

「より、強く、美しくだ」

 そう言いながら二階のプールに『アリス』を放置し、三階の閉鎖部屋に放り込んだ人間のアリスを見に行く。後ろには金剛がついてくる。

 幾つかの檻を抜け、閉鎖部屋を監視できる部屋へと入る。マジックミラー越しに目があるべき部分が包帯で覆われた、全裸の女性が部屋の隅でナイフ片手にガタガタと震えていた。

 目が見えない中、数分に一度、ナイフや銃器での攻撃が降り注ぐように設定されている室内。中には椅子やドラム缶など遮蔽物や弓や銃などの武器を置いているが、全方向どこから来るか分からない攻撃に備えなければならない。また武器はあっても攻撃を加えて来るのは全自動の『壁穴』で、何も倒すべき者はないのだ。

 薬はもうキレているから、判断力は冷静であろうが、目の見えない彼女では、それがわからないだろう。

「誰が何がいつ攻撃してくるかわからない状況で、いつまで精神と体が持つかな?」

「マスター?」

「何だ?」

「彼女は何故、諦めないのデスか? 計算上一回の攻撃で七十パーセント以上の確率で被弾しマス。生き残る確率は低いデス」

 金剛の学習能力が高いのは良いが、この所、計算では割り切れない『質問』が増えた。こないだ『破壊』されるまでは質問などは一切なかったのだが。何とか回収した予備チップだったが、どこかにバグが起こっているのかもしれない。

「気にしなくていい。金剛。これが終わったら全システムを一度チェックしてやる。いいか、爆薬をセットしたら、時折、入って脅しておけ。私は『アリス』を見た後、奥の書斎で引き上げの準備をしておく。何かあればすぐに呼べ」

「はい、わかりまシタ」

 そう言って部屋を出た。

 金剛のシステム内で言葉の羅列が侵食しつつある事に気付かず。



『ねぇ、アナタは命令されてるからやっているんですよね? お願いだから、こんなのやめて?』

『捕獲該当生物の血液が入ったため、後ほどメンテナンスを希望』



『どうして、戦わないといけないの? どうしてこんなことになるの?』

『捕獲該当生物の血液が入ったため、後ほどメンテナンスを希望』



『……命令だけを聞くように作られたお前達にはわからないだろうな』

『捕獲該当生物の血液が入ったため、後ほどメンテナンスを希望』



『今は……自分の思いの為に、戦う。守る者、そして己の心の為に。たまに間違う事やヘコむ事があっても、戦い方はそれぞれ違っても、己の信念に従って『人間』は……自分の大切と思った者の為に、自分の存在をかけて戦うんだ』



『捕獲該当生物の血液が入ったため、後ほどメンテナンスを希望』



『それはヒトではなく、『無価値』なジャンクっスよ!』



『捕獲該当生物の血液が入ったため、後ほどメンテナンスを希望』

『…………………………………………命令に対するノイズを処理しマス』



『…………………………………………何故、消えないのデスか???????? unknown unknown unknown……』



『悪魔で、天使ですから。inうろな町』(朝陽 真夜 様)

リズさん

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/



『以下4名:悪役キャラ提供企画より』


『アリス(元:天野 恵)』

『金剛』

『手塚』

全て弥塚泉様より

『黒雪姫』

小藍様より(名前のみ)


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

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