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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
12月1日

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293/531

移動中デス(悪役企画)

llllllllll

山へ。車で移動中。

llllllllll

 






「どこまで行く気だ」

「うぇいと あ もーめん ぷりーず トキ」

「その喋りはどうにかならないか?」

「であ いず なっしんぐ ろん うぃず いと」

「いや、おかしいだろ? 基本がソレってことか」

 受け答え内容自体はたぶん正解だが、イライラする。彼女に乗せられた車は空港を離れ、山の中に入って行く。場所的には山に沿って動けば、いずれうろなの西山辺りに繋がっているのではないだろうか?

 アリスを人質に取られている以上、俺はまともに抵抗できない。アリスは慎重な女だ。それをこの短時間でどうやって捕獲したのか。それもあの廃工場で壊した人形の仲間なら、最終的な目的はユキさんだ。

「アレが目的地か?」

 山の中に建物の影を見つけ、聞く。

「いえす……」

 そこまで聞けば十分だった。おとなしく運ばれて拘束されるいわれはない。既に後ろ手に縛られていたが、こういう作業は苦手なのかもともとプログラムにないのだろう。結ばれる時に少し腕の角度を付けていたので、緩みを付ける事が出来、簡単に抜ける事に成功していた。

「ごめん、アリサ」

 愛しかった女を模したその体を傷つけるのは気が引けるが、所詮ニセモノだ。車のスピードは遅くないが、昨日のタカさんの暴走に乗り合わせたせいか感覚が麻痺して死にそうだとは思えない。

 全部問題ない、大丈夫……そう暗示をかけてシートベルトを外すと、彼女の顔を見ない様にして頭を頭髪ごと掴み、側面のガラスに叩きつける。吹き飛ぶサングラス。制御を失ったハンドル、足はアクセルを踏んだまま、山道は細い。そうなれば車はすぐに道を外れ、何度か右に左にとブレながら、最後には谷に向かって転落する。

 落下の間にもアリサに似せられた人形は無表情のまま、俺に飛びかかろうとした。だが狭い車内でゴロゴロ転がる状態でうまく行くはずもなく、何回か殴り合い、ぶつかりながらも車は谷底に到達する。

 バウンドする衝撃に頭を打ちつけながら、気を失わなかったのは幸いだった。何とか車から脱出しようとしたが、足首を掴まれる。

「放せっ!」

 逆の足で彼女の綺麗な顔に蹴りを入れかけて……出来ずにその手に攻撃を切り替える。足首を引き千切らんばかりの力で握られて苦悶しながら、何度も蹴り続ける。ひっくり返った車の少ない隙間で揉みあう。その時、微かに視界の端に炎を見た。

「マズいな」

 ガソリンのにおいがする。引火したら機械の彼女はどうなるか知らないが、俺は間違いなく四散する。

「ごめん……」

 意を決してその顔を強く一蹴する。足の裏に感じる何かが壊れた感覚。はじけ飛んでいた扉から這うように出て、苔むした岩に身を伏せた途端、爆音が通り抜け、破片が飛び散る。

 あの人形は? 振り返って見れば、焦げた服に無表情の彼女がフラフラ彷徨っていた。片目が壊れているのはさっき蹴ったためだろう。

「イッツ ホット ……ばーんど」

 肌も破れて銀の色が剥き出しになっており、機械人形とは言え、自分の知り合いを模されている為かとても哀れだ。熱さを訴えている所を見ると、この機は痛覚があるのか? 前に相対した機は、首が無くなり腕が飛んでも、それを何と訴えるわけでもなかった。

 それでも戦闘力の高さは嫌と言うほど知っている。壊れるまで、動き続けた男性型のソレと同じく、アリサの形をしたそれも作動するのだろう。同情している場合ではなかった。急いで立ち上がって走り出す。

「あり、さ……」

 人形だとわかっていても。自分が生きていてくれと願って、叶わず亡くした本物の彼女の最後と重なって……吐き気がした。

「トキ……あい をんっ うぉ~た~」

 人形は俺の名を呟きながら、近くの小川に手を突っ込んだ。

 それほど熱いのか……もう、このままショートして壊れてくれればいい。そう思ったが、俺は目を疑った。

「ば、バカな……」

 手に救った水を浴びた途端、彼女からこぼれ出る白い液体と水が結びついて編む様に皮膚を構成していく。そして壊れた表面が修復される。普通、機械は水に弱いんじゃないのか? ともかく内部まで修復されたかはわからないが、ボロボロに焼き焦げた服を脱ぎ捨て、瞳以外は綺麗になった人形は遠目に見れば、ブーツと下着だけのほぼ全裸のアリサにしか見えなかった。

「とーきーィ ぷりーず ぷれィ タグ」

 燃える車の音以外にない静かな山の中。喋り方や、耳に届く微かな機械音はそれを彼女ではないと示していた。今、逃げるのは彼女に模されているから戦えない、それ故ではない。水を浴びれば全回復する機械。そんなモノに太刀打ち出来る気はしない。

 水を求めたのでそれがなければその機能は動かないのだろう。とにかく小川など水がある場所で戦うのは不利すぎる。

 Play tag……鬼ごっこ、俺はさっき案内されかけた建物に向けて走り出す。

 彼女は俺の後ろ姿を見ながら、車から吹き飛んでいた鞄を拾い上げ、それを開けた。中には短い棒切れ。それをくるりと振り回すと、途端に彼女の身長よりも長く伸び、その両端に鋭い刃物が飛び出した。それに巻き付けてあった布を、水では修復できなかった瞳に巻き付け結びあげると、俺に向かって跳躍した。

「長槍か……」

 俺を串刺しにする気らしい。

 取り立てて笑うわけでもなく、無表情のまま走りくる全裸の女。手にはリーチのある槍。山の地形などものともしない動き。息を切らす事もなく走ってくる。

 逃げる俺も必死だ。

 端から見ていたら滑稽だろうが。

 背中を切りつけられぬ様に木を縫いながらその軌道を避けた。だが疲れを知らぬ機械と人間の俺では、普通にやっては鬼ごっこの結果は見えている。

 機械の外装は堅い。素手で殴れば俺の方が拳を失いかねない。まずはそれを避ける為に俺はポケットの中から仕込んでいた手袋を装着した。

llllllllllllll


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


『アリス(元:天野 恵)』弥塚泉様より


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